烙印(上)


 チャールズ川沿いに自転車に乗っている間に23歳のエリサ・ヴァンダースティールの死体が発見される。
頭上の街頭のガラスが散らばり、ヘルメットや自転車とも数メートル離れていた。
月に一度のベントンとの憩いの時間をマリーノの電話で中断されたケイは、すぐにその場に向かう。
そしてケイには、匿名のサイバー暴力団から奇妙なメールが立て続けに送られてきていることも不安要素となっており、ルーシーに助けを求めた。

 不審なメールのことでイライラさせられながらも、ベントンとの時間をすごしていたケイが呼び出されるまでに、半分のページが使われている。
やっと事件が起こったころには飽きてしまっていた。
キャリーが関わっていることは明らかだろうが、まだそれも示していない。
ケイの不満が長ったらしく書かれているため、読んでいて気分が暗くなる。

邪悪(下)


 キャリーの予想通りの行動をしているのではないかと、すべてのことに不安を感じるケイ。
ハリウッド女優の娘と、ルーシーやジャネットが知り合いだったかもしれないと思い、ルーシーの唯一安心できる場所までもFBIに暴かれ、そのFBIの行動はきっとベントンも知っていたはずと、疑心暗鬼が膨れ上がる。
そして、最初に出向いた現場で聞いた大きな音の正体を突き止めるため、結局は最初の場所に戻ることになる。

 今回もケイの気分は振り回されるばかり。
そしてベントンに裏切られた気分になり、誰も信じられないと感じ、口喧嘩をしかける。
ここのところ、事件そのものはあまり印象に残らなくて、ケイの精神的な浮き沈みがメインになっているよう。
最後は何事もなかったかのような団らんで終わるのも同じ。
ただ、今回は衝撃的な虐待に出くわした。しかし肝心のキャリーは姿を見せずじまいなので、直接対決は持ち越しか。

邪悪(上)


 海の中で太ももを撃たれて2か月。復帰したケイが現場で検死をしていた時、ケイの携帯に1通のメールが届く。
そのメールには、17年前、ルーシーがまだFBIの寮にいた頃の映像が添付されていた。
一時停止も巻き戻しもできず、ただ見続けることしかできない動画に、ケイは仕事の集中力を乱され、すぐさまルーシーに会いに行く。
するとそこでは、FBIがルーシーの家の家宅捜索をしていた。

 天敵との命がけの再会の後、やっと仕事に戻れたケイのところに送られてきたメールは、キャリーが何年も前から計画していたと言わんばかりの不気味なメール。
そして、ルーシーが丁寧に作り上げた安全な場所を踏み荒らされている場面に出くわして、ケイは動揺する。
仕事どころじゃないケイの様子は、恐れでいっぱい。
やっと仕事に頭が向いたころにはもう次巻で、恐怖と不安のやりとりばかりの上巻だった。
検死中の事件と関係があるのかが気になる。

バチカン奇跡調査官 王の中の王


 オランダ・ユトレヒトの小さな教会からバチカンに、「礼拝堂に主が降り立って黄金の足跡を残し、聖体祭の夜には輝く光の球が現れ、司祭に町の未来を告げた」という奇跡の連絡が入る。
ロベルトと平賀は、42人もの目撃者すべてに話を聞き、主の足跡の調査を始めた。
小さな教会にのこされた聖遺物。そしてそれが収められていたステンドグラスのケースまで。
そこで二人が見つけたものは、大昔の隠し部屋と隠し通路、そして聖遺物が持ち込まれた時代の宝だった。

 一つの奇跡のはずが、当時の先端技術や流行にまで広がり、教会の存在した年月の長さを感じさせる。
追及自体は興味深いし、盗賊は天の罰を受けたような形で見つかって、奇跡調査は終了する。
それでもなんだか消化不良な感覚が残るのは、解明された現象がどんな風なのか、想像ができないからだろうか。

リーフ模様の丸ヨークセーター


使用糸:ハマナカ ソノモノロービング (95)
編み図:天然素材で編む 大人のナチュラルニット より
    リーフ模様の丸ヨークセーター 466 g 12号針

〈銀の鰊亭〉の御挨拶


 高級料亭旅館〈銀の鰊亭〉は、1年前に火事で離れが全焼し、当主夫妻が亡くなり、助けに向かった娘の文は怪我を負った上に記憶を失う。
そこへ、大学入学を機会に一緒に住むことにした文の甥の光が加わった。
ある日刑事だという磯貝が光に声をかけ、あの火事は事故として処理されたが、実は当主夫妻と共に身元不明の男女の死体も発見されていたと教えてくれる。
光は礒貝と共に、真相を追い始めた。

 火事での身元不明の男女の件はなかったことにされており、すでに捜査は終了しているため大きく動けない礒貝を助けるために、光はいろいろと考えるが、突然の文の「記憶をなくしてから身についた不思議な力」が出てきたとたんに急に陳腐になった。
そしていくつかの事実を見つけたにもかかわらず、結末はなんとも肩透かし。
文のおかしな力もそこまで活躍はせず、いったい何のためだったのか。

オフマイク(スクープシリーズ)


 継続捜査を担当する捜査一課特命捜査係の黒田と矢口。
黒田の同期・多岐川から二十年前の大学生自殺について、不審な点があるが確証がないため、こっそり調べてほしいと依頼される。二人が聞き込みを進めていると、「ニュースイレブン」の報道記者・布施もこの事件に目を付けていると知る。
交友範囲の広い布施と情報交換を始めた黒田たちは、IT業界で注目の藤巻という男に注目した。

 ニュース番組のメンバーと継続捜査の刑事たちの、奇妙な協力捜査。
交互に語られるそれぞれの捜査が、やがて20年間隠されてきた事件の真相を突き止める。
でも、事件を追う人物が多すぎて一人一人の印象が薄い。
布施の飄々とした雰囲気にのまれる感じで、みんながいいなりになっていくよう。
もっと個性のある人たちが欲しい。

わが殿 下


 藩の負債をなくすため、幕府から大きな借金をして銅脈を掘り当てたり、食う分だけの金しか使わない政策で3年をすごしたり、大野藩は借金という敵と戦うために様々なことをしてきた。
やがて完済のめどが立ち、一安心できるかと思いきや、夢を語る若者はお構いなしに使いまくる。
しかし、そんな者たちへ頼もしいやり繰りを続けていた七郎右衛門に、見方する者だけではなかった。

 藩の金巡りを良くしようと店を出して商人とやりあってみたり、荷を運ぶ船を借金して買ってみたりと、相変わらず大きなことを大きな苦労をしながらやる七郎右衛門。
しかし、そんな話もずっと続くと飽きてくる。
そして急に藩の中からの不満を持った奴らから狙われ始めるのは、今までなかったことがおかしなくらい。
面白いキャラクターはたくさんいたけど、その割に単調だった。

わが殿 上


 幕末、ほとんどの藩がそうであるように、大野藩も財政難に喘いでいた。
若き藩主・土井利忠は、誰もが良い案を出せずにいる中で、一人の若者に白羽の矢を立てた。
若干八十石の内山家の長男である七郎右衛門良休であった。
七郎右衛門は、誰もが知恵を絞っても出せなかった案で金を作り出し、若殿のいくつもの指令をこなす。

 珍しく妖怪が出てこない話。
そして主人公の性格も、とぼけた様子は割に少ない。
しかし、事が起こって途方に暮れる場面からいきなり数年が過ぎていたりと、場面の切り替わりが急すぎることも多くて気持ちの切り替えがしにくい。
それでも、次々出てくる金勘定のやりくりをなんとかこなす七郎右衛門のやり方は思いのほか堅実で、奇をてらったり偶然に頼ったりしていない。
そのため胸のすくようなどんでん返しはないが、藩の力をじっくりと積み上げていく様子が頼もしく映る。

くさり模様の帽子


使用糸:毛糸ZAKKAストアーズ ごきげんWool (07),ALPS 純毛中細[ウォッシャブル](1)
編み図:トリッキー・ニッティング より
    くさり模様の帽子 100 g  6号針