師匠の歌川国芳が死んだ。
弟子の芳藤は、他の弟子たちと協力して葬式を済ませた後も画塾を続けていたが、芳藤は己の力量に華がないと自覚していた。
名をあげるほどの作品を出せず、駆け出しの若い絵師がするような玩具絵の仕事を受け続ける芳藤。
時代も移り、町は西洋の物にあふれる中、芳藤は様々な葛藤を抱え、塾や自分の仕事に悩み続ける。
偉大な師匠の元で学び、力はあるもののパッとしない芳藤。
だがそれでも絵を描き続け、切り刻まれたり折られたりしていずれは紙くずとなる玩具絵にも丁寧である芳藤の心の内が細かく描かれている。
力があってもどんな人間でも、それぞれに抱える物をじっくりと読ませるわりに読みやすい。
飽きることなくどんどん進む。
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