黒鳥の湖


 伯父から受け継いだ貴金属店を大きくし、今や取締役社長に収まった彰太は、美しい妻と最愛の娘と共に、幸せだと実感できる毎日を送っていた。
ある日、娘の美華が学校へも行かず、夜遅く帰宅し、着るものも派手になり、荒れ始めた。
巷では誘拐した少女の持ち物を少しづつ送り付けて恐怖を倍増させる「肌身フェチの殺人者」が話題になっており、彰太は過去の因果が巡ってきたのかもしれないと疑心暗鬼になる。

 ほとんどが暗いトーンで、恐ろしい事件や思い出したくない過去の所業を描いているので、気分も暗くなる。
でも不思議と読む手は止まらず、どこへつながるのだろうという興味の方が大きい。
やがていろんなつながりが見えてきた頃には、空恐ろしい結末が見えてくる。
でも暗いまま終わらず、明るい決断で終わったため、思いがけずすっきりした気分となった。