悪霊じいちゃん風雲録


 商家の跡取りである伊勢次は、かなりの怖がり。なのに死んだはずのじいちゃん・左五平が幽霊となって孫の前にたびたび現れる。それも、幽霊退治を言いつけに。
一方、貧乏御家人の七男・文七郎にも、祖父の十右衛門の幽霊が稽古と称して扇子やキセルを打ち付ける日が続いていた。
二人は互いの困った先祖に振り回される。

生きている者よりも元気な幽霊が、孫をあの手この手で怖がらせながら、世間の幽霊騒ぎの真相をあばけと迫ってくるのは面白い光景。
しかも孫への頼みが幽霊退治である。
でも、両者の違いをもっとくっきりと出してほしかった。

歓喜の歌 博物館惑星Ⅲ


 地球の衛星軌道上に浮かぶ巨大博物館苑〈アフロディーテ〉では、創立50周年記念のフェスティバルが計画されていた。
企画に沿って集められる美術品。その中で、実は巧妙なトリックですり替えられた贋作が混じっていたことが発覚する。
さらに、遮断された地域で守られている遺伝子操作された生物たちや、以前のように輝く笑顔に向き合えなくなった写真家、後悔のぬぐい方を知らない者など、あらゆる人たちを引き付ける。

 様々に揺れ動く感情と、膨大なデータベースを持つ最新の技術たち。
正反対に位置するようなものを同時に並べているのに、違和感なくすべてを素晴らしいと思える環境。
 ふれあいを知る術がなくて打ちひしがれるAIやカルタヘナ法をすり抜けて作られた美しいタマムシ、小型ドローンの<虫>や<鳥>、面白い技術がたくさん出てくるので飽きないし、そのうえで大事にされているのは人の心だったりする。
そんな〈アフロディーテ〉は、突拍子もない魔法みたいなものではなく、もうすぐ実現しそうだと思えてきてわくわくする。

高校事変 VIII


 武器密輸グループの指揮者として暗躍していた田代グループをつぶしたことで、結衣は田代親子から多額の懸賞金を懸けられた。
午前0時、一斉に結衣殺害へと向かう複数のグループ。
さらに結衣の高校の新任教師としてやってきた伊賀原は、結衣を確実に仕留めるためのある作戦を始動させていた。
 周り中敵だらけの中、結衣はどうするのか。

 パターンはこれまでと同じなので飽きてきた。
しかしまるでハリウッド映画のような展開で続きが気になり止まらない。
次々と襲い来る敵に結衣が仕掛けるトラップは、その場にあるもので短時間に作る即席のものばかり。
そしていつの間にか手を貸してくれる人たちも増え、今回も法の網からするりと身をかわす。
悪態ばかりついていても、結局は息が合う兄弟たちとの交流も、これからは増えていくのだろうか。

彼女はたぶん魔法を使う


 元刑事でフリーライター、私立探偵でもある柚木草平は、キャリア組の元上司から、「調べてほしい事件」を紹介される。
「車種も年式も判明しているのに、犯人も車も発見されないまま」だというその事件は、やがてもう一つの殺人事件を生んでしまう。

 洗濯が趣味という柚木。女にはつるりと口説き文句がこぼれるほどの女好きだが、マメで面倒見がいい。
権力はないがそのぶん勘で真実に近づいていて、いつの間にかカギをつかんでいる。
登場人物は皆魅力的だが、最後はそんな女性たちにはぐらかされたような結果でなんだか落ち着かなかった。