うさぎ幻化行


 飛行機事故で死んだ義理の兄。
リツ子のことを「うさぎ」と呼んでかわいがってくれていた兄が残したのは、音風景の音源だった。
しかしリツ子は、その音は自分あてではないような気がして、義兄の残した音を訪ね歩くことにした。

 事故から始まった物語は、静かでもの悲しい様子でずっと続く。
しかしリツ子は、音源を求めて旅に出た道中で出会う人たちとの妙な接点から不穏な矛盾を見つけてしまい、少しづつ正気を失っていくような感覚で読み進めていく。
判明する謎あり、曖昧にされた謎あり。
でもどちらかというと余韻に浸れる謎ではなく、ただ突然打ち切られたという感覚が強く残る。
すべては幻想で終わってしまいそう。