二十一時の渋谷で キネマトグラフィカ


 新しい元号が発表される日、日本中が沸き立つように浮かれていた。
宣伝部の砂原江見は、20年務めた老舗映画会社・銀都活劇が身売りされるとが決まり社内には弛緩した雰囲気が漂う中、この時期だからこそやってみたいと、一つの企画を提案する。
わざわざ今面倒なことをしなくても、新しい経営体制になったらどうなるかわからないのに。
そんな陰口も漂ってくるが、江見は自分の人生を変えた一つの映画をどうしても光の中に立たせたかった。

 かつて優秀さで周りを黙らせた先輩たちと仕事がしたいと、いろんなアイデアを出す江見。
独立して社長をしている独身女性、家族のために辞めることを決めた女性、働くのは会社のためだと信じている女性、権力にすり寄ることで自分の立場を守る女性。
いろんな人が出てきては、しっかり持っているそれぞれの思いが描かれている。
男もかなり個性的だが、やはり女に焦点を当てているため細切れで登場している印象。
働くことは自分にとってどんな位置にあるのかを問いかけるような物語だが、最後は急に宇宙規模まで話が大きくなり、なんだか曖昧にかわされたような気分になった。