数学の女王


 博士号を取得後に警察官となった沢村依理子は、突然本部の警務部に異動となる。
そんな中、新札幌に新設されたばかりの北日本科学大学で爆破事件が発生。
そしてまた急に捜査一課へ行けと命じられ、沢村は困惑していた。
爆破事件の犯人は一向に絞られず、捜査の方向も曖昧になっていくなか、沢村は一人の男のことが気になっていた。

 爆破で狙われたのは学長で、沢村は真という名前と学長という立場から勝手に男だと思い込んでいた。
自分が女であることを理由にした人事異動に憤りを覚えていたくせに、自分もジェンダーバイアスがかかったものの見方をしていたことに気づいて愕然とする沢村の様子が生々しい。
能力はあるのに女であるために報われないと信じ込んだ者、それでも運をつかんで転機を迎える者など、なにがきっかけになるか紙一重で怖くなる。