漂砂のうたう


2019年02月11日 読了
 第144回(平成22年度下半期) 直木賞受賞
明治に入り、武士の地位は消えてなくなる。そんな武士の出を隠し、根津遊郭で働いている定九郎は、馬の合わない上司の下でいつまでも昇格しないまま、鬱々としていた。
そんな時、うっかり登楼させ酔うと声をかけた人物は渡世人で、職を張っている花魁を引き抜こうとしている奴だった。

 常に身を低くして生きる者が、突然我に返ったように動き出す時は、得てして失敗に終わる。その結果、一人の花魁を死に追いやったとして定九郎はますます内にこもるようになる。
そんな主人公が起こす大事は、貯めていたエネルギーをすべて吐き出すかのように周囲に大きな波紋を広げるが、終始どこか水の底から眺めるような閉塞感が付きまとっていて暗い。
エネルギーを発しているのはたった一人の花魁だけで、重苦しい雰囲気のシーンばかり。
それでも充分読みごたえがある本だった。

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