第36回横溝正史ミステリ大賞大賞受賞作。
IT企業の研究者である工藤は、人工知能を使って故人をバーチャルで蘇らせるプロジェクトに参加していた。
そこでプロトタイプのモデルとして選ばれたのが、自らの作ったゾンビゲームの中で自殺した、あるゲームクリエイター・晴だった。
しかし彼女に関するデータが乏しく、調べていくうちに工藤は彼女に魅了されていく。
ゲーム、人工知能など、バーチャルな世界なら何でもありだろうと思っていたが、それでもリアルさを追求する研究者らしく、執拗な探索が興味を引いた。
そして生きた形跡の少ない晴に近づこうとするほど惹かれていき、脅迫を受けるまでになる工藤の様子がだんだん狂気じみてくる。
ミステリアスな晴をどこまでも理解したいという思いだけでたどり着く結末はとても人間らしい感情で、工藤の感情が一気にあふれ出てこちらも胸がいっぱいになった。
晴の作ったゲームに隠された謎と、晴の感情がとてもきれいに描かれていて、後味はとても清々しい。
リンク