恭一郎と七人の叔母


2016年12月08日 読了
 恭一郎には7人の叔母がいる。それはとてもとても個性的で、強かで優しい叔母たちだ。
その7人の叔母について、恭一郎は同年代だと思われる女性に話して聞かせる。

 登場人物が多くて混乱しそうだと思ったのは最初だけ。順番に語られる叔母たちの様子はとても興味がわき、そしてかなり個性的だった。
 今までの小路幸也の作品では、ただひたすら優しく穏やかで、そしてどれもよく似ていて、区別がつかないせいかすぐに忘れてしまうようなものばかり続いていた。
でも今回は、叔母たちと同様個性的だった。
叔母たち本人は一度も出てこず、恭一郎の話の中だけなのに、恭一郎が一番存在感が薄いという不思議な状況となる。

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継続捜査ゼミ


2016年12月06日 読了
 警察を定年退職した小早川は、友人が学長をしている大学に再就職した。
そこで教えるのは、刑事政策。
5人のゼミ生と共に、15年前の強盗殺人事件を追う。

 今までは現役の警察官の話ばかりだったが、今度は退官した警察官のノウハウを使った講義。
学生たちの質問が素人代表として新鮮だが、皆それぞれ得意分野があり、間にちょっとした学内の事件まで解き、割と盛沢山だった。
軽く読める割に満足感が大きい。

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お台場アイランドベイビー


2016年10月28日 読了
 第30回(2010年) 横溝正史ミステリ大賞受賞
刑事を辞めて、ヤクザのシノギに協力することで報酬を得ながら暮らしていた主人公の巽。
ある時見つけた不思議な少年が気になり、つい世話を焼くようになってから、少年を巡る諍いに巻き込まれる。

 近未来、地震により崩壊したお台場を舞台に、無国籍児をめぐって権力への戦いを挑んだ巽が、品のない言葉使いや荒っぽい振る舞いにも関わらず、なぜか憎めないキャラとなっている。荒廃した地に紛れ込んだ子供たちというありふれた設定で退屈するかと思ったら、だんだん目が離せなくなり一気に読み終えた。
 そして、すべて丸く収まるハッピーエンドとはいかないあたりが、うすら寒いリアルさを出していて白けずにすんだ。

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女子的生活


2016年10月20日 読了
 なかなかブラックなアパレルの会社で働きながら、おしゃれで女子感満載の生活を満喫するみき。
でも周りには、ほっといてくれれば迷惑かけずにいるのに、いちいちわざわざ絡んでくる奴がいっぱい。
そんなムカつく奴らと闘いながら、ガシガシと進むみきの東京生活。

 悪態をどっさりついて、寄ってくるバカたちと闘うみき。
最初は悪口ばかりの本ならうんざりと思っていたけど、ぽんぽん出てくる悪態がいちいち同感できて、「怒りを燃料にできるタイプ」のみきがうらやましくなる。
 日常のコミュニケーションでちょっとカチンときたり、引っかかりを覚えたり、言い返したいけど言葉が見つからなかったり、後で思いかえすと「あれは嫌味だったのかなぁ」と思うようなことが、なんか全部一気にすっきりした感じ。

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St.ルーピーズ


2016年09月30日 読了
 家の事情で格安物件を探していた主人公の聖央大学理工学部応用物理学科のビンボー1年生・二神雫。
食堂で見つけたチラシを頼りに、超常現象研究サークル「SL&S」に入会しようと面接を受ける。
しかしそこは、“St.ルーピーズ・サナトリウム(聖なる愚か者の療養所)”と噂されるサークルで、その結果雫は不思議現象に立ち向かうはめになる。

 ミステリーのようだけど理論的で、推理のようだけどヒントはなく、ただ謎解き編を読み進むしかない。
でも個性的な登場人物と先端技術が合わさり、なんとなく納得させられる。
そんな技があったのかと次の時代への期待が沸き起こる。

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ペテロの葬列 上


2016年09月22日 読了
 ある日、園田編集長と一緒に向かった取材の帰りに乗ったバスで、バスジャックに遭遇する杉村。
犯人の自殺という結果で終わったその事件が、一緒に人質になった者たちの団結を強め、さらにそのまま終われない違和感を残した。

 杉村シリーズ。
あっけない事件かと思っていたら、園田編集長の過去が語られ始めたころから急にスピード感が増す。
全く見えてこない慰謝料の出どころと犯人の出した3人の名前が興味をそそる。

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西一番街ブラックバイト 池袋ウエストゲートパークXII


2016年09月10日 読了
 今度の依頼はユーチューバ―と、いい加減な整形をされて顔が崩れた女たち、さらには心も体も壊すブラック企業。

 G-ボーイズのキングであるタカシが、久しぶりに自分で戦う。
そして唯一心を許せるマコトの家で、わずかな時間安らぐ様子がほっとさせる。
久しぶりに出たシリーズだけど、変わってなくて安心した。

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俗・偽恋愛小説家


2016年08月27日 読了
 自称「偽恋愛小説家」の夢宮宇多と、新米編集者の月子。
夢宮の物語の解釈にいつも驚かされ、感心し、惹かれてきた月子が、幼馴染のお兄ちゃんと再会して求愛されたために揺れ動く。

 わがままな夢宮に振り回されながらも、いつも頭から離れない月子がかわいい。
誰もが知るおとぎ話を、書かれた時代の背景を元に解釈しなおす夢宮の語り口は、黒猫シリーズに重なって、新鮮な驚きがある。
風刺だったり戒めだったりする昔ばなしは、色んな意味を含んでいて、それはきっととても分かりにくい。

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焦茶色のパステル


2016年08月21日 読了
 江戸川乱歩賞受賞作。デビュー作。
東北の牧場で、競馬評論家・大友隆一とその牧場長が銃殺される。
大友の妻である香苗は、馬の事は全く分からないが、夫の行動に不信を持ち、友人の芙美子と共に事件を調べ始める。

 競馬の事はさっぱりわからないが、関心がなくても十分楽しめた。
有名な「クラインの壺」よりもこちらのほうがおもしろい。
王道のミステリーといった感じで、遺伝子の仕組みを思い出し、ちょっとした知識欲も刺激される。

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スパイは楽園に戯れる


2016年08月10日 読了
 情報分析員の葉山隆は、ある男の情報を調査を始める。
その男は、ある国の指導者の息子だという噂。そしてその彼が亡命を希望しているという噂。

 調査を進め、真実に近づいていくほどに、有望な政治家の人生が削られ、崩されていくことになった。。
情報が何よりの宝となる人たちが、伝説となった人物の残した遺産を探り出す。スパイたちの仕事。
 最後は悲しく、暖かく、でもうすら寒い何かにまとわりつかれる。

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スパイは楽園に戯れる (双葉文庫) [ 五條 瑛 ]
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