黒猫の回帰あるいは千夜行路


2015年12月26日 読了
 パリで起こった事故に、このところ連絡のない黒猫の様子が急に気になってきた付き人。
一人もやもやしているそんな時、ペルシャ美学の教授が『空飛ぶ絨毯に乗って消えた』という連絡を受ける。

 パリで二人の距離が縮まった様な気がしていたのに、それから時間が空いてしまったゆえに余計に意識してよそよそしくなってしまう付き人。
そんな二人の毎日を、短編形式で綴る。
 過去に起こった黒猫とその姉の出来事、船旅に持ち込まれた黒い箱が印象に残る。
最後はまたほんの少し、近づいたか。

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潮流―東京湾臨海署安積班


2015年12月11日 読了
 救急車で運ばれた一般人が次々と死亡し、3人目の死亡が知らされた時、連続殺人を確信する。
 そこで安積は、全く関係がない過去のある事件を思い出す。
それは、安積班が検挙した殺人事件で、犯人が服役中の今も無実を訴えている事件。

 須田が大変な目に合うが、彼はやっぱりツキを呼び込む。
内容も覚えていないような短編より、これくらいの方がいい。
今回も速水の名言がすべてを好転させる。

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ヨイ豊


2015年12月05日 読了
 師匠で、義父でもある三代豊国の法事。「歌川の三羽烏」と言われた花形の絵師たちを次々に亡くしていた浮世絵界は、次代を継ぐ者は誰かに興味が集中していた。
娘婿の清太郎は、4代目を継げと詰め寄る弟弟子の八十八や、勝手なことを言う版元たちをかわし、苦悩していた。

 技能は師匠に及ばない、そして一党を統べる力はあるか。
苦しむ清太郎に才能あふれる八十八。時代は急激に変化し、浮世絵は売れないと言われるようになった頃を生きた者たちの悩みや戸惑いが、息苦しくなるような言葉で描かれていた。

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アルモニカ・ディアボリカ


2015年11月05日 読了
 愛弟子を二人も失い、気を落とすダニエル先生。暇になった残りの弟子たちは、盲目の判事の下で犯罪防止のための新聞を作ることになった。
その第一号が出た頃、身元不明の死体の情報提供を求める記事を出したいという依頼が舞い込む。
その死体の胸には『ベツレヘムの子よ、よみがえれ!アルモニカ・ディアボリカ』という謎の言葉。

 その言葉が、死人として生きると言い残して消えた二人の弟子たちの消息を知る手掛かりになると意気込む弟子たち。今度もたくさんの身元のわからない死体がどんどん増える。
また死体がすり替わったりしていくから、前回と同じようなオチになりはしないかとひやひやした。それでも興味は尽きず、皆何かしらの結論を出して進んでゆく。

開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―


2015年10月25日 読了
 18世紀のロンドン。外科医ダニエルの研究室に、いつの間にか現れた死体が二つ。
盲目の治安検事は事件としてダニエルに協力を要請する。

 医者と言えば内科医で、崇められる立場であるのに対し、外科医は悪魔の所業として偏見にさらされていた時代。解剖により人体の疑問を解き、死者が遭遇した出来事を探ろうとするダニエルは、研究者ゆえに政治力はなく、資金はすべて兄に頼っていたのだが、この事件で兄に疑惑が向き、狼狽えてしまう。

 時に時間が前後し、入り乱れるように進むが混乱はない。
無知と偏見によって様々な悲劇が起こり、証言だけで証拠がないため解らないままの事も出てくるが、それもまたそんなものだと思わせる。

ばけもの好む中将 四 踊る大菩薩寺院


2015年10月18日 読了

 怪異を好む中条・宣能につき合わされ、散々怖い目に合いながらも断れない宗孝。
今度は宗孝の五の姉が大きく関わる。

 学者に嫁いだ五の姉は、夫婦で発明品を作っては皆を助けていたが、その発明品を夜な夜な試す十一の姉・小宰相と、さらにその小宰相が仕える八の姉の懐妊に伴い加持祈祷をした僧とが入り乱れ、話がややこしくなる。
様々な出来事のすべてに五の姉とその夫の発明品が顔を出し、アクション要素までもが盛り込まれた。
でも恐ろしい場面がなぜか和んでしまうのは、宣能と宗孝の所々かみ合わない会話のせいか。新しい登場人物も加わり、あと何人の姉が待っているのかと思うととても楽しみ。

図書館の魔女 烏の伝言


2015年10月03日 読了
 マツリカ達が成し遂げた三国円卓会議から一両年後、ニザマとアルデシュの間にある湾岸地域では、今やどちらからも独立していわば自治州として孤立していた。
そこへ、ニザマからの逃亡をもくろむ地方官僚の姫君ユシャッバが、山の民である剛力を案内人にやってくる。

 今回はマツリカの活躍はあまりない。
湾岸で地下に暮らす子供たちと、剛力や近衛の活躍がメインとなる。なにより前作で腕を切られた双子座のヴァーシャが頼もしい。
隠されたニザマの跡継ぎとキリヒト達の活躍はまだ先のこととなるのか。

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いろあわせ―摺師安次郎人情暦


2015年09月26日 読了
 神田明神下の長屋に住む通いの摺師・安次郎は、その技の巧みさから、名指しで仕事がくるほどであった。
寡黙な安次郎の弟子・直助はお調子者で、彼が聞き集めてくる噂、兄弟の揉め事や色恋の悩みなどを放っておけずに話を聞く。

 自分の仕事に絡め、人を説得するわけではなく技を見せながら、語らず悟らせる。
さっくり読めて後味も良い。
色んな事がすべて解決するわけではないところが妙に納得する。

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空棺の烏


2015年09月12日 読了
 八咫烏が統べる世界。若宮の側近を辞した雪哉は宗家の近衛集団「山内衆」を養成するための訓練学校「勁草院」へと入る。そこは、身分の差に関係なくただ実力のみが意味を持つ学校。

 そこで起こる様々な出来事や人間関係を通して、雪哉はいずれ来るであろう若宮の統治に必要な人材を見定めていた。
学校でのことだけかと思っていたら、最後はしっかり大事で終わり、前作で起こった事件の解決に向けた新しいこともわかってくる。
雪哉の成長がすばらしすぎて胡散臭いような気もするが、若宮の力も他にまだまだありそうだ。

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テノヒラ幕府株式会社


2015年08月27日 読了
 絵を描くのが好きなフリーター・拓真は、もういっそ田舎へ帰ろうかと考えていた時、ふとあるメールに目が行く。
『才能ある絵師を探しています!』

 やけくそで飛び込んだテノヒラ幕府という会社は、スマホゲームの制作会社だった。
そこで採用された拓真は、同期入社の55歳のおじさんの部下となり、絵の技術だけではないものをたくさん学ぶ。

 ゆとり世代と、会社に尽くしてきた世代との違いは大きすぎて、それぞれの意見に納得しつつも、それぞれに反発心を感じてしまう。
自分はどちらに近いだろうと考える。
私は誰と働きたいかなど、考えてもしょうがないと思っていた。

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