烏は主を選ばない


2015年08月24日 読了
 日嗣の御子の后選びが行われている最中、当の若宮は何をしていたのか。
北家の領内、垂氷郷の郷長の次男・雪哉は、新年のあいさつに北家本家へ行った際、もめ事を起こす。そのせいでなぜか若宮の側近として1年務めることを命じられた。

 掟破りな若宮の側近になりたい貴族の息子はたくさんいたのに、長続きしないからと言って放り込まれた雪哉。
若宮に付き従ううち、彼を慕う気持ちと嫌悪する気持ちが同時に湧き、混乱する。
ひたすら美しいものにあふれる前作と違い、今度は厳しさがメイン。
雪哉は、政治に身を置く者の考えを理解できるのか。

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烏に単は似合わない


2015年08月22日 読了
 八咫烏が支配する世界で、跡継ぎである若宮様の后選びが始まった。
各貴族の家から候補の娘が集まり、若宮の気を引くために様々な趣向を凝らすが、若宮は一向に姿を現さなかった。

 美しい娘や、景色、着物など、うっとりするようなファンタジーの世界。
それぞれの立場からめぐらす策略のせいで混乱し、一つの方向から見ていると絶対に気付かない事が若宮の言葉で裏返り、思いもよらぬ結末へ向かう。
続きも気になってきた。

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スカラムーシュ・ムーン


2015年08月20日 読了
 中央はインフルエンザ騒動の反撃に、浪速を陥れようとしている。
その陰謀を察知した彦根新吾は、あらゆる対策を講じるため有精卵を大量に卸してくれるところを探していた。

 医療の分野だけでなく、日本を治療しようとした彦根先生の大勝負。
バチスタシリーズでは伏線のような扱いの彦根の活躍が見れた。
そして知らずに若者たちの行く末までも決定させ、道化師で手品師のようなつかみどころのなさが楽しい。

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六花落々


2015年08月08日 読了
 たった一度、偶然見た雪の結晶に魅せられた下総古河藩の下士・小松尚七。
彼は様々な事象への探究心のせいで、「何故なに尚七」という二つ名がついていた。
そんな彼がある日、藩の跡継ぎである土井利位の御学問相手に抜擢される。

 この時代、身分や建前がなにより大事だった頃に、外国の新しい考えに触れ、衝撃と共に改めて世の中を見渡す者たち。
解り易く、スピード感もあり、各々の持つ正義に従う生き方をさっぱりと描いていて読みやすい。
雪の描写もきれいで、土井の発行した『雪花図説』が是非見たい。

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祟り婿 古道具屋 皆塵堂


2015年08月06日 読了
 人死が出た家からでも、幽霊が出る物でも、いわゆる曰く品という物を買い取ってくれる小道具屋の皆塵堂。そこへ、給金はいらないから働かせてくれと言う若者が一人やってきた。
 その若者・連助は、婿は早死にするという家に、生まれた時から婿入りが決まっているためか、ことさら幽霊や物の怪といったものを毛嫌いしていた。

 また一時的に奉公人を迎え入れた皆塵堂。
代々の奉公人たちも加わって、賑やかな幽霊騒ぎが続く。余り出番のない者ですら個性的で、怖いようで微笑ましい、楽しげな幽霊退治。猫嫌いの太一郎がうらやましい。

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明日の色


2015年08月03日 読了
 仕事の失敗のせいで借金を追い、妻と子供に逃げられ、仕事もなくした松橋吾郎は、ホームレスを集めた低額宿泊所の施設長をしていた。
そこで出会った一人の若者の絵を見てから、吾郎はギャラリーを開くことを決意。

 そこそこなんでもこなし、割と前向きだけど結構適当な主人公。
悪いこともするけどお人好しなところがうまく出ていて、吾郎への嫌悪感はどんどん消える。
ご近所トラブルや権力からの妨害などに悩みつつも、思い付きと行動力であちこち丸く収まっていく様子は見ていて楽しかった。元気が出る。

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バチカン奇跡調査官 独房の探偵


2015年07月14日 読了
 天才的な頭脳が悪魔の所業をなしとげる。その少年・ローレン・ディルーカは、13歳で独房に入れられていた。警察に協力し、本人の知らぬ間に自分に協力させながら、すべては計算されていく。

 ローレンが平賀の友人になる前の話や、魔女と畏れられた人の手記に興味を持ち、作家希望の女性と共に『魔女のスープ』を再現させようとしたロベルトと平賀の話など、いくつかの短編集。
 一つ一つ細かく検証していく平賀の科学的な説明が興味深い。

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八万遠


2015年06月26日 読了
上王が統べる島国「八万遠」は、いくつかの州に分かれていた。
それぞれの州で小さな争いはあれど、おおむね平和な世が流れていた頃、一つの州で豪胆な長男が謀反を起こし、弟を切り殺し、父を幽閉した。
まるで平和に飽いたかのような所業から始まる、八万遠全土を巻き込む嵐。

 州ごとの風土や信仰が解り易く区別されていて、知っている地名はあっても全く違う土地の事なのに馴染みやすい。
これで終わりというよりこれから物語が始まるかのような終わり方で、まだ序章ではないかと思えるほど。続きが気になる。

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さざなみの国


2015年06月11日 読了
 商人とすら顔をあわせずに売り買いをし、地図にも載ってない。
そんな村で生まれた「さざなみ」は、村の滅亡を悟った村人たちに救いの知恵を探してくるようにと村を出された。
 旅に出たさざなみは町に出、父親の家族や許嫁、男勝りな王女と出会い、自分の生きる意味を知る。
 
 隠れた村には秘密があるのだが、さざなみが主人公だと思っていた物語は途中で意味を変える。ほんの数行で。
淡々と語られるために特別な感情移入がなく、そのせいか遠い異国の昔話のようで不思議な魅力があった。

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稽古長屋 音わざ吹き寄せ


2015年05月18日 読了
 三味線の師匠をしているお久は、足を悪くするまで芝居小屋で女形をやっていた兄と二人で稽古屋をやっている。
そこへおさんどんのお光と猫の小太郎を加え、穏やかな日々を過ごしていた。

 稽古のお客やお世話になった芝居の師匠らが、お久たちの毎日を忙しくする。
やがて兄の足や出生のことにまで飛び火し、生きていると必ずとこかで起こる災いと向き合わなければならなくなる。

 それぞれの気持ちが丁寧に書かれていて、どんなことも他人事じゃない気になってくる。

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稽古長屋 音わざ吹き寄せ [ 奥山 景布子 ]
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