山小屋「琴乃木山荘」のアルバイト、棚木絵里。
オーナーの琴乃木正美やベテランアルバイトの石飛匠に助けられながら、日々充実していた。
そんな時、同じアルバイトの先輩が「幽霊を見た」と言い出す。
絵里は、石飛と共に幽霊の正体を確かめに行くことになった。
日常の謎を、わずかな手がかりの中から解き明かす短編集。
でも、大崎 梢の書店員シリーズと同じ。舞台が書店から山小屋になっただけ。
謎も特に興味をそそるような謎でもなく、やがて殺人事件にまで出くわすのは、物足りなかったからか。
読書と手芸の記録
山小屋「琴乃木山荘」のアルバイト、棚木絵里。
オーナーの琴乃木正美やベテランアルバイトの石飛匠に助けられながら、日々充実していた。
そんな時、同じアルバイトの先輩が「幽霊を見た」と言い出す。
絵里は、石飛と共に幽霊の正体を確かめに行くことになった。
日常の謎を、わずかな手がかりの中から解き明かす短編集。
でも、大崎 梢の書店員シリーズと同じ。舞台が書店から山小屋になっただけ。
謎も特に興味をそそるような謎でもなく、やがて殺人事件にまで出くわすのは、物足りなかったからか。
御一新に伴い、全国の寺院や城が壊され、美術品も海外に流出していく。
そんな日本をさみしく思う一人の男が、留学中に観た大英博物館のようなミュージアムを作りたいと願い、叶えた町田久成の物語。
小説というよりエッセイのような雰囲気の一人語り。
強い願いをただ持ち続け、様々なことをあきらめ、譲歩しながらも夢をかなえた久成の心情が、長年持ち続けた情熱を感じさせない静かさで描かれている。そのため、時々退屈に感じる。
まだ日本にはなかった博物館という概念を形にした久成をの人となりには興味がわいた。
そのあたりはもう少し描いてほしかったと思う。
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始発の電車で出会ったクラスメイト。特に親しいわけではない。
女子高生3人が、ファミレスでかわすいつもの意味のないおしゃべり中、意見が対立する。
遊園地の観覧車でなぜか男二人になってしまった。
そんな、ちょっと気まずい密室での出来事。
『体育館の殺人』、『水族館の殺人』、『図書館の殺人』などの作者。
普通の日々の中で、ちょっと観察するとわかるけど、なんとなくどうでもよくて見過ごしている謎を拾い上げる。
短編集として、結末は「まだもう少し気になる」程度で終わらせてあるため、どれももうちょっと読みたいと思わせる。
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江戸で、わずか10か月ほどで姿を消した謎の絵師・写楽。
彼には表だって名乗れないわけがあった。
能役者が本業の十郎兵衛は、非番の時にだけ書くと決め、自身のうちに潜む黒々とした後悔と自責の念を紙にぶつけるように描いていた。
それはこれまで見たこともないような描写で、見るものに衝撃を与える絵だった。
謎の絵師はどう生まれたのか。なぜ1年もたたずに姿を消したのか。
その強い印象を残す絵はどんな心持で描かれたのか。
その心の内は、強烈に描かれているが、その一端となるお喜瀬が妙に気持ちの悪い書かれ方をしている。
性別ではなく、人となりが。
写楽となった十郎兵衛を描くなら、許嫁となった香都のほうを絡ませたほうが読みたかった。
その違和感が、お喜瀬の気持ち悪さとしてずっと残る。
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母の故郷である愛知県の澄川にやってきた潤は、そこで都会とは違う風習に戸惑う。
中でも一番は、花祭りという伝統神楽。
授業でも習うほど、地域の文化として当たり前にあるその祭りが、潤には苦しかった。
『マカン・マラン』の作者だが、郷土史や文化に興味がわかず、いまいち入り込めない。
田舎ならではの風習や人間関係も、特別なことはなにもなく、普通の毎日が描かれている。
それぞれの心の中を丁寧に描いていたマカン・マランとは違い、潤から見た視点でのみの人物像なので、親近感がわかず、祭りの高揚感さえどこか遠く感じてしまう。
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奉公先を自ら「追い出されてきた」虎太。
偶然見かけた看板娘・お悌に惹かれて入った飯屋「古狸」で、虎太は不思議な取引をする。
それは、怪談話をすれば一食タダ。
お悌と飯に釣られ、虎太は幽霊が出るという家に潜り込む羽目になる。
これまでのシリーズと同じようなテイスト。
ボケ方もそっくりなので、新しくする意味があるのかわからない。
今までの、動物や子供といったかわいらしく雰囲気を和らげるものが減った分、面白みも減った感じ。
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高校3年生の千紗は、幼馴染で初恋の相手、善正のいる横浜のタウン情報誌の編集部でバイトを始めた。
そこでの雑用の仕事とともに、小さなイラストの仕事も請け負う。
横浜の街を知るいい機会にもなり、また出会う人達も印象的な人ばかりだった。
書店員のシリーズとほぼ同じ印象。
日常で出会うちょっとした不思議を追い、ほんわかとした真実に巡り合う。
横浜の地の歴史は興味深いが、ストーリとしては少しも印象に残らない。
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2011年04月20日 読了
スパイ養成機関では、本名も素性も明かされることのない同期たちと、ひたすら過酷な訓練に明け暮れる。
本当にありそうな気がしてくる。
自分は何者を相手にし、何を成していかねばならないのか、悪い夢を見そうなミッションが、地下室に幽閉されているような気にさせる。
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2019年10月10日 読了
平安の頃、本朝始まって以来の凶事と安倍晴明が占った日に生まれた子がいた。
髪は赤く、彫りの深い顔立ちの桜暁丸は、自分たち以外をさげすむ京人達を憎んでいた。
第10回 角川春樹小説賞受賞作
様々な渾名で蔑まれていた京以外に住む者たちと共に、どんな生まれであれ皆同じ人だと言える世を作ろうとあがいた、桜暁丸の戦いの半生。
桜暁丸が誰であるかは後半で解るし、信念を持った戦いの描写は緊迫感がある。
ただ、つぶやきや心中を語る描写がややうざい。
この先を想像させる終わりも、これまでの力強さに比べると肩透かしを食らったように弱い。
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2019年09月24日 読了
とある私立の女子高には、もう誰も管理する人のいない一角がある。
そこは様々な植物が植えられていたが、かつてはたった一人の生徒によって管理されていた。
女子高という、ある意味幻想的な世界の、少女たちと植物の語らい。
悲しい出来事が多く起こるのに、少女と植物にのみ重点をおいているせいで、どこまでも現実味がない世界。
そして過去の出来事という思い出にまで入り込み、ますます夢の中のよう。
男と大人は遺物だというはっきりとした意志が見える。
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