空中ブランコ


2017年01月16日 読了
 変人伊良部医師再び。
ベテランの空中ブランコ乗りが、突然飛べなくなった。
「きっと新しくやってきた奴が嫌がらせしてタイミングをずらしているんだ。」
そんなことを訴えたら病院へ行けと言われてしまう。

 今度もぶっ飛んだ伊良部に苦笑いが漏れる。
個人的には夜な夜な「点」をうちに街をうろつく話が楽しかった。
完全に犯罪だけど、どこか子供の悪戯感があるのは伊良部だから。
前作より注射への変質的な執着の描写は少なかったからか、伊良部がもっと子供に見えた。

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五弁の秋花: みとや・お瑛仕入帖


2017年01月12日 読了
 なんでもかんでも三十八文の「みとや」を営む兄・長太郎と妹・お瑛。
ある日、店じまいする絵双紙屋から引き取ってきた本に挟んであった錦絵に、お瑛は既視感を覚えた。
忘れていた幼い頃の記憶がよみがえるような感覚に、お瑛は心細くなる。

 極楽とんぼの兄だが、仕入れてくる物は良い物で、周りで起こる困ったことにもするりと入り込んでいつしか解決している。
そんな兄に振り回されているようで励まされているお瑛も、ちゃんと自分の足で立とうとする力強さが頼もしい。
錦絵の疑問もちゃんと解けるが、そんな絵がお瑛のところにやって来たのはただの偶然なのか縁なのか、できすぎのような気もして気になる。

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復讐屋成海慶介の事件簿


2016年12月23日 読了
 男に騙されたあげく、会社も辞める羽目になった神戸美菜代は、復讐を請け負う人がいるという噂を聞いて訪ねていく。
ところが、お金がないとわかると冷たく追い出されてしまった。
当てもない神戸は、元秘書をしていたスキルで成海の事務所に居座ることにした。

 イケメンだけどぐうたらで、ろくに仕事らしいことはしてないように見える。
そのうえ金がないと話も聞いてくれない成海。
さらには依頼を受けてもなにもしないというのに、印象は良く、依頼人はとても感謝する。
どの話も嫌な感じはなく、あっという間に読めてしまった。

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イン・ザ・プール


2016年12月12日 読了
 伊良部総合病院の地下にある神経科で待っているのは、色白で太った精神科医・伊良部一郎。
彼は、一見病気だとは思えないおかしな困りごとを持つ患者たちを診る。

 やって来る患者もおかしな奴らなら、伊良部も相当おかしい。
患者の方が伊良部に振り回されるうえに、治療らしいことは少しもやっていないのになぜか症状は改善していく。
煙に巻かれたような気分でするすると進み、もう少し読みたいと思うちょうどいいところで終わる。
続きがあるようなので是非読みたい。

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恭一郎と七人の叔母


2016年12月08日 読了
 恭一郎には7人の叔母がいる。それはとてもとても個性的で、強かで優しい叔母たちだ。
その7人の叔母について、恭一郎は同年代だと思われる女性に話して聞かせる。

 登場人物が多くて混乱しそうだと思ったのは最初だけ。順番に語られる叔母たちの様子はとても興味がわき、そしてかなり個性的だった。
 今までの小路幸也の作品では、ただひたすら優しく穏やかで、そしてどれもよく似ていて、区別がつかないせいかすぐに忘れてしまうようなものばかり続いていた。
でも今回は、叔母たちと同様個性的だった。
叔母たち本人は一度も出てこず、恭一郎の話の中だけなのに、恭一郎が一番存在感が薄いという不思議な状況となる。

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継続捜査ゼミ


2016年12月06日 読了
 警察を定年退職した小早川は、友人が学長をしている大学に再就職した。
そこで教えるのは、刑事政策。
5人のゼミ生と共に、15年前の強盗殺人事件を追う。

 今までは現役の警察官の話ばかりだったが、今度は退官した警察官のノウハウを使った講義。
学生たちの質問が素人代表として新鮮だが、皆それぞれ得意分野があり、間にちょっとした学内の事件まで解き、割と盛沢山だった。
軽く読める割に満足感が大きい。

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お台場アイランドベイビー


2016年10月28日 読了
 第30回(2010年) 横溝正史ミステリ大賞受賞
刑事を辞めて、ヤクザのシノギに協力することで報酬を得ながら暮らしていた主人公の巽。
ある時見つけた不思議な少年が気になり、つい世話を焼くようになってから、少年を巡る諍いに巻き込まれる。

 近未来、地震により崩壊したお台場を舞台に、無国籍児をめぐって権力への戦いを挑んだ巽が、品のない言葉使いや荒っぽい振る舞いにも関わらず、なぜか憎めないキャラとなっている。荒廃した地に紛れ込んだ子供たちというありふれた設定で退屈するかと思ったら、だんだん目が離せなくなり一気に読み終えた。
 そして、すべて丸く収まるハッピーエンドとはいかないあたりが、うすら寒いリアルさを出していて白けずにすんだ。

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女子的生活


2016年10月20日 読了
 なかなかブラックなアパレルの会社で働きながら、おしゃれで女子感満載の生活を満喫するみき。
でも周りには、ほっといてくれれば迷惑かけずにいるのに、いちいちわざわざ絡んでくる奴がいっぱい。
そんなムカつく奴らと闘いながら、ガシガシと進むみきの東京生活。

 悪態をどっさりついて、寄ってくるバカたちと闘うみき。
最初は悪口ばかりの本ならうんざりと思っていたけど、ぽんぽん出てくる悪態がいちいち同感できて、「怒りを燃料にできるタイプ」のみきがうらやましくなる。
 日常のコミュニケーションでちょっとカチンときたり、引っかかりを覚えたり、言い返したいけど言葉が見つからなかったり、後で思いかえすと「あれは嫌味だったのかなぁ」と思うようなことが、なんか全部一気にすっきりした感じ。

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St.ルーピーズ


2016年09月30日 読了
 家の事情で格安物件を探していた主人公の聖央大学理工学部応用物理学科のビンボー1年生・二神雫。
食堂で見つけたチラシを頼りに、超常現象研究サークル「SL&S」に入会しようと面接を受ける。
しかしそこは、“St.ルーピーズ・サナトリウム(聖なる愚か者の療養所)”と噂されるサークルで、その結果雫は不思議現象に立ち向かうはめになる。

 ミステリーのようだけど理論的で、推理のようだけどヒントはなく、ただ謎解き編を読み進むしかない。
でも個性的な登場人物と先端技術が合わさり、なんとなく納得させられる。
そんな技があったのかと次の時代への期待が沸き起こる。

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ペテロの葬列 上


2016年09月22日 読了
 ある日、園田編集長と一緒に向かった取材の帰りに乗ったバスで、バスジャックに遭遇する杉村。
犯人の自殺という結果で終わったその事件が、一緒に人質になった者たちの団結を強め、さらにそのまま終われない違和感を残した。

 杉村シリーズ。
あっけない事件かと思っていたら、園田編集長の過去が語られ始めたころから急にスピード感が増す。
全く見えてこない慰謝料の出どころと犯人の出した3人の名前が興味をそそる。

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