吃音がひどい又兵衛は、母のお葉と共に寺の下働きをしていたが、ある日寺の襖絵を描きに来た絵師・土佐光吉と出会い、絵を描く楽しさを知る。
それから又兵衛は良い出会いによって絵を習うことができるようになるが、母のお葉が毒を飲まされて殺されてしまう。
苦悩を抱えながらも絵をかいていく又兵衛は、自分の父は荒木村重であること、母だと思っていたお葉はもともと乳母であることを知らされ、また新たな苦悩を胸に住まわせることになる。
長の師であり友であった者たちが死んでいき、自らも老いを感じる頃までの、又兵衛の生きざまを描く。
吃音によって周りから疎まれ、責められ、同情される日々が続いても、又兵衛は絵によって道をつくっていく。
どうにもならない世の中の流れにも、年を取ってから罪人とされてしまっても、自分を表現するのはいつも絵だった又兵衛の心情がじっくりと描かれていた。
最初は退屈に感じたけれど、飽きたと感じる前に引き込まれ、笹屋や光吉、内膳らと共に又兵衛の人生を見守っていたような気になった。
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