怖い患者


 区役所に勤務する愛子は、同僚女子の陰口を聞いたことがきっかけで、たびたび「発作」を起こすようになり、クリニックを受信すると「パニック障害」と言われた。
この恐怖がただのパニックのはずがないと、愛子はドクターショッピングを始めてしまう。
 介護施設を併設する高齢者向けのクリニックでは、利用者の人間関係が次第に悪くなり、雰囲気がピリピリし始めるが、施設長は平等に接しようとするあまり、解決させないまま放っておくことになっていた。
 など、クリニックの周りで起こる人々の思いを濃縮して毒に変えたような不気味さが漂う短編集。

 怖いのは患者だが、医者だって他の科にかかば患者に変わる。
うっすらと張った毒の膜を一つ一つめくって奥へ進んでいくようなうすら寒い怖さがあった。