誰に似たのか 筆墨問屋白井屋の人々


 白井屋の、三代にわたる人たちのそれぞれの立場から見た胸中を、一人ずつ描いた短編集。
商才はあったけど女にだらしなかった店の前主人が死に、隠してあった妾の存在が明らかになったり、跡取り息子の頼りなさに頭を悩ませる当代主人。
親の反対を押し切って惚れた相手と一緒になった者の、すぐに死なれて今は貧乏暮らしをしている妹と、その娘。
手習いで嫌みを言われてずる休みをしようとした跡取り。
周りの思惑はどうあれ、自分の気持ちをただ大事にしたいと奮闘する白井屋の者たちの、頭の痛い日々を綴る。

 それぞれの立場で見た白井屋のことが語られていくが、たいてい不満で埋まる。
一つの家族の内情がよくわかりはするが、誰もがなにかしらの屈託を抱えて生きているんだと気づかされる。
でも不満ばかりで読んでいる方はあんまりいい気分ではなかった。