月花美人


 菜澄藩の郷士・望月鞘音は、剣鬼とも呼ばれたほどの使い手だった。
両親を亡くして姪の若葉を引き取り、彼女との生活のためにと傷の治療に使う〈サヤネ紙〉を作っていた。
幼馴染の紙問屋・我孫子屋壮介と町の女医者・佐倉虎峰から、改良を頼まれる。
理由を言い渋る壮介に問いただすと、「月役(月経)」の処置に使うという返答。
武士である自分が、女の穢れで糊口をしのぐことに抵抗がある鞘音だが、ちょうど初潮を迎えた若葉の辛そうな様子を見て、少しづつ考えが変わっていくのだった。

 女性の整理事情は、男には隠されてきた。
古紙や古布をつめて処置し、穢れ小屋に隔離されたりしてきた女性たちの清潔を守り、生活を楽にするために奮闘した武士の物語。
実際にあった話とは違うが、人々の意識を変えようと戦う様子に心を打たれる。
ずれを防ぐための羽根つきを思いついたのが鶏の羽というところは無理があったが、それ以外は続きが気になって止められないほどだった。