千年の黙 異本源氏物語 平安推理絵巻


 あてきが務めるお屋敷の御主は、物語を書くお方。
ある日、帝が大切にしている猫が盗まれたという噂が出る。
出産のため宮中を退出する中宮定子に同行した猫は、清少納言が牛車につないでおいたにもかかわらず、いつの間にか消え失せていたという。
 そして式部の書いた物語の一部が消えたという謎。
源氏物語の作者である式部が、日常の謎から自分の著書の謎まで、探偵役となる不思議な物語。

 千年まえの物語を題材に、その作者を探偵にしてしまうという大胆さ。
その時代では重要だったであろう歌もほとんど出てこず、解釈なども添えられているので読みにくさは全くなかった。
周りの人物も面白い人が多くて、飽きることなく一気に読んだ。
『源氏物語』が千年もの間抱え続ける謎のひとつ、幻の巻「かかやく日の宮」の事は初めて知ったけど、すごく納得できる終わり方だった。
他の説も探してみたい。