進々堂世界一周追憶のカシュガル


 予備校に通うサトルは、京大に入る事、京都に住むことを目標としていた。
そして、京大の近くの喫茶店「進々堂」で出会った京大生の御手洗さんと仲良くなる。
彼はちょうど、世界一周の放浪の旅から帰ってきたばかりで、旅先での体験をいろいろと話してくれた。
イギリスで出会ったちょっと人には築かれにくい障害を持った青年のこと。
戦時中に連れてこられ、強制労働させられていた朝鮮人の姉弟のこと。
カシュガルで、誰にも顧みられずに暮らす老人のこと。
それらを、ただ尊敬の眼差しで聞くサトルとの対話の話。

 何か事件が起こるわけでもなく、謎が解かれるわけでもなく、ただ静かに御手洗の話を聞く。
だけどその異国の話が深刻だったり悲しかったりと、印象的なものばかり。
最初は退屈に思えていたが、だんだん引き込まれて行った。