2016年05月03日 読了
骨董通りの一角、あまり人に見つかってほしくないと言わんばかりの佇まいをしたバーがある。そこの常連である老紳士の内山に、ある女性と仕事を含めた付き合いをしてほしいと頼まれる主人公の高柳。
時が止まったかのような雰囲気のバーと、よく似た気配の老人。
内山に懸想する若い女性に惹かれていく高柳が、自分の嫉妬心に気付いた時、内山を巡る女二人の戦いに巻き込まれていることを知る。
しかしその戦いすら、内山の練ったゲームの中のひとつにすぎないと気づきながらも抜けられない高柳が、静かに怒りを感じるのが最後の最後までない。
いい年をした男が上手く操られた感があるにもかかわらず。
人に、「きっとこの作者の本は気にいると思う」と紹介された作家。
煙に巻かれたような読後感だが、不快感はない。
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