山道を走っていたら迷い込んだ、「山亭ミアキス」。
超美形のオーナーと美味しい紅茶、微かにリンゴの香りが漂う暖炉や絶品のアイルランド料理と驚くことばかり。そして外に出て霧が晴れると、青く光る湖がある。
だけどその不思議な宿では、携帯もつながらずテレビもなかったり、ほかの客の姿も見ない。
運よくたどり着いた人たちは、そこでひと時の癒しと、未来への力をもらう。
「マカン・マラン」シリーズと同じように、料理の描写がとても美味しそうで気になる。
マタハラで仕事をクビになった女性や、ブラック部活に苦しむ少年、仕事での理不尽に悩む人など、いろんな人が迷い込む。
だけど共通しているのは皆悩んでいる者たち。
そして従業員たちは、目的を果たす力を手に入れたら、次の者に託して宿を去る。
その宿のことは、いい思い出となる者だけじゃないところがいかにも従業員たちの習性を表しているし、カラクリもわかってはいるけど神秘的で、短編だから読みやすくもあり、悲しいきっかけだったわりには後に残る余韻は軽い。