シャドウ


2009年07月30日 読了
 母が癌でこの世を去った。父と二人の生活が始まって数日後、幼馴染の母親が自殺する。そして幼馴染も事故に遭い、父までもが精神を病んでしまった。

 どこまでも続くかのような不幸のなかに見え隠れする狂気。登場人物それぞれの目線で語られる出来事は、リアルだが時間が錯綜してわかりにくい場面もあった。
 それでもとめどなく流れ出てくる抑えきれない感情に巻き込まれ、読む手を止められない。途中で休憩でも入れたら時間と事実の流れがわからなくなりそうだった。
 最後はいろんな事実が繋がってきて、いくつもの想像が裏切られたが、とても読み応えがあった。

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被取締役新入社員


2009年07月26日 読了
 TBS・講談社 第1回ドラマ原作大賞受賞作
月給20万円で年俸が3千万。筋金入りのダメ社員で入社1年目の超特別待遇の会社役員。
 
 設定が面白い。仕事内容は”ひとりいじめられっこ政策”の推進。
総じて会社員の軽蔑と嘲笑を得ること、小さな失敗を積み重ねること、誉められないこと、必ず週に3回は遅刻すること。。。

 オエライサンたちの描く社内変革のために雇われたダメ人間が、1年の間にする仕事を綴ったこの作品には、情けなくて悲しいのになぜか力が湧く。
 ドラマ原作大賞というからにはドラマになったはず。
見てみたい。

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クロス・ゲーム


2009年07月26日 読了
 名古屋と東京で遠距離恋愛中の航太と優衣。
通り魔に襲われ、仕事での不正が発覚し、アパートが火事になるという不幸な出来事が相次ぎ、仕事を辞めた航太は、愛する優衣のいる東京へと向かっていた。
 ネットゲームのなかで広がる人間関係。
のめりこむほどに溝ができていた二人の間にあった愛憎とは。

 オンラインゲームについて現状と違っていたりと多少違和感はあったけど、小説だからそれはそれで設定といえるのか。
 全体としては非常に面白かった。
この人の本は以前にも読んだけれど、同じように引き込まれた。
これからもきっと手に取るだろう。

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沈底魚


2009年07月25日 読了
 江戸川乱歩賞受賞作
はっきり言ってよくわからなかった。
政治経済のことにあまり興味がないためにわからなかったのかもしれないけれど、話が二転三転するたびに混乱し、結局どれが本当でどれがウソなのかをつかむのに時間がかかった。

 事件で、スパイで、大事で。。。
おもしろそうな話題なんだけど、思いのほか淡々と話しが進み、
何もつかめないまま終局に入ったという感じ。

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マリリン・モンローという女


2009年07月20日 読了
 世界中知らない人はいないであろうこの人。
だけど、どんな生き方をしたのかは知らなかったので、この本を読んでから少し調べてみた。

 親や周囲の愛に飢え、一生をそれを取り戻すために費やしたと言ってもいいほどの情熱をもって生きたた女性。
 それにしても、出てくる男性はなぜにここまでと思うほど自分勝手で、世界に失望するほどモンローをカモにする。魅力的な男性を書かせたら天下一品だった作者だけど、最低な男性を書かせても天下一品かもしれない。
 途中でやめられず、空腹も睡魔も我慢してまで読んでしまった一冊。

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異本とりかへばや物語


2009年07月19日 読了
 内大臣を父にもつ異母兄妹。兄は男としての生き方に悩み、妹は男として行きたいと願う。
そんな兄妹が選んだ道とは。。。

 誰もが知る「とりかえばや物語」。
結末が破損し、知ることの出来なくなった古典を読み解き、綴る。
いろんな解釈がなされているため、どれを読んでも想像が膨らむ物語として、私は気に入っている。

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プリズムの瞳


2009年07月18日 読了
 かつてロボット研究の最先端として世に出された「ピィ・シリーズ」。様々な業種の技術に特化され、期待をこめて作られた彼らも、いつしか疎んじられ、今ではひたすら絵を描くのみとなった。

 この人の作品は、テーマも設定もおもしろいのだけど、どうしてか読んでいるうちに飽きてしまう。
そのせいで、一つ一つは短いお話なのにもかかわらず、読むのになぜか非常に時間がかかる。
 短編集だけどすべてがキチンと繋がっているので飛ばして読むこともできず、最後にはきれいに簡潔している。

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Fake


2009年07月12日 読了
 絵が抜群にうまいが頭が致命的に悪い。
そんな愚鈍な男を芸大に入れてほしいと頼まれ、大がかりなカンニング作戦を実行する。
完ぺきだと思われていたその作戦が露呈し、いろんなものを奪われた主人公。しかしその作戦自体が起こるべくして起こるよう嵌められたことだった。そして黒幕相手に起こす逆転勝負。
 10億をかけたその勝負に仕掛けられた罠。

 登場人物や舞台にはそれなりに魅力があるのだが、どうも次へと興味がわかない。
量を増やすためだけに入れたのではないかと思うような部分が多く、最後まで読むために苦労するほど飽きてしまった。

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怪物が街にやってくる


2009年07月09日 読了
 今野敏のデビュー作。
世界最強を謳われたジャズの「上杉京輔トリオ」を突然引退した武田巌男は、新グループを結成し復活を果たす。

 この人の本は好きなんだけど、デビュー作だけはなぜか手にしたことがなかった。
ジャズに格闘技を絡ませ、さらにグローバルな視点と宗教的な印象までも含んだ作品。
演奏シーンの表現にはちょっとくどいような気もするが、主人公の心情がわかりやすくていい。
 短編集で、叙情小説。

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八月のマルクス


2009年07月05日 読了
 第45回江戸川乱歩賞受賞作。
スキャンダルによって芸能界を引退した元お笑い芸人。
事件後、5年ぶりに訪ねてきた相方がもたらしたすべての過去をひも解く鍵。
 デビュー作にしてこれはいい出来。

 話のテンポもよく、人物も魅力的で個性がある。
脇役だと思っていた人が重い役割を背負っていたり、じっくりと作りこまれた感じがある。
 次も読んでみたい。

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