使用糸:大創産業 アクリルヤーン (10)
編み図:トラディショナルニット より
Vネックのアランセーター
使用針:8号棒針 454 g
シェルター
小さな安らぎを与えてくれるシェルターのようなカフェで、10代と思われるとても奇麗な女の子に声をかけられる。
行く先もなく、帰るところもないと心細げな彼女を、恵は拾ってしまう。
恵自身も、都会から逃げてきたのに。
その出会いから始まる、守りたい事と逃げたい事の葛藤が、恵と彼女を行方不明にさせる。
豪快な整体師の先生のシリーズだったようだが、これだけ読んでも充分不自然じゃない。
過去に後悔を抱える姉妹と、同じく過去に因縁を抱える兄弟弟子。
そこにふわふわした一人の男が混ざった時点で、とても柔らかい雰囲気の物語となっている。
過去の重さに似合わない軽さであっさりと読めるところは良いが、すぐに忘れてしまいそうなくらいキャラクターたちの個性も軽かった。
探偵は友人ではない
海砂真史には変わった友人がいる。
敢えて学校には行かず、興味の向くままに暮らす、とても頭のいい友人・鳥飼歩。
バスケ部で2年先輩の鹿取さんと街で偶然出くわし、彼が突然疎遠になった友人とのことがずっと気になっていると聞き、真史はその相手が歩だと気づく。
二人を仲直りさせたい真史は、仲たがいの理由の謎を歩に聞くことにした。
なぜかとても真史を慕ってくる後輩の家が営んでいる洋菓子店が作った、お菓子の家が当たるクイズ、美術室での教師の不思議な行動など、日常の疑問が気になってつい歩に相談してしまう真史。おかしな謎と不思議なふたりの関係。
「探偵は教室にいない」の続き。
中学生のくせにやたら頭が良くて、素直じゃない歩の素顔がちょっと覗く瞬間がいくつかあり、それを見るととてもうれしくなる。
興味のある事だけに反応する歩だが、決して冷たいわけじゃないし、ちゃんと真史のことや周りの人たちを気遣ってくれるから、近づきたくなる真史の気持ちがよくわかる。
彼が大人になったらさぞ憎たらしい探偵になるだろう。
ミステリなふたり あなたにお茶と音楽を
愛知県警捜査一課、通称“氷の女王”こと京堂景子警部補は、頭脳明晰の優秀な刑事。
彼女の一言で現場は緊張し、くだらないおしゃべりは一瞥で止める。
だが、そんな彼女は家に帰るとイラストレーターの夫に甘えるツンデレな女だった。
そして、料理の上手な夫・新太郎は事件の話を聞いてさらりと真実を察してしまう名探偵で、二人は食事の合間に謎解きをする。
おいしそうな料理と紅茶の香りが漂ってきそうな短編集。
事件は、京堂警部補に憧れる新人刑事・築山瞳が足となり、頭脳の新太郎と指揮の京堂警部補の3人で進む。
ことさら意外な結末というわけではないが、3人で集まったことはないのに見事なチームワークでするする進むので楽しい。
こいごころ【しゃばけシリーズ第21弾】
贈り物に悩んでいると父から託された若旦那。
いったい何を送ればいいのか、本人に欲しいものを聞きに行こうとしたところ、新しい悩みが続々と持ち上がる。
珍しく寝込んでいない若旦那が動く。
妖狐・老々丸とその弟子からは、最後の頼みが若旦那だと必死の願いを聞き、母が若旦那の誕生した日を祝おうと言い出し、さらには若旦那を長く診ていた医者が引退するというニュース。
今回は若旦那のための出来事が多かった。
誕生日の宴を開こうとして大ごとになってしまうところなど、まさに長崎屋といった感じ。
幼馴染の和菓子職人はもう名前しか出てこなくなり、新しい妖はどんどん増えていって、人間はもう数少ない。
人の営みは別のシリーズで、という区別がくっきりしてきた。
ベーシックスタイルのアランセーター
使用糸:ダイソー リサイクルポリエステル毛糸 (スモーキーピンク)
編み図:大人のナチュラルニット から
ベーシックスタイルのアランセーター
使用針:6号棒針、7号棒針 385g
やわ肌くらべ
「明星」の創設者、与謝野鉄幹。
若いころ教師をしていた頃から、人好きする性質を生かして女生徒と噂になったり、心地よい嘘で説得して妻としたり、いろんな女たちと関係を持ちながらも、歌人としての才能で後人も多く育てた。
一人の男と、彼を慕った女たちの人生。
鉄幹に関わった女たちが、それぞれの思いをかわるがわる告げる。
鉄幹はとても魅力的な男として描かれているが、自分勝手な言い分に嫌な気分になることも多い。
それに振り回される女たちがつい許してしまったり諦めたりする気持ちの揺れ幅が大きいので、読み終わったときはすっかり疲れてしまっていた。
妻の晶子は有名だが、鉄幹は存在すら知らなかった。
幽霊絵師火狂 筆のみが知る
料理屋「しの田」のひとり娘である真阿は、胸を病んでいると言われ、外に出ずに部屋で寝ているか本を読んでいることが多かった。
ある時、江戸からやってきた有名な絵師だという火狂が居候をすることになる。
火狂は怖い絵を描くというが、真阿は彼の絵が気に入り、時折部屋へ訪ねて行っては絵を見せてもらっていた。
そして真阿は、夢を見るようになる。
その夢は、火狂の絵と呼応するように人や景色を見せる。
体が大きく、みすぼらしい姿をしている火狂なのに、よく笑い、真阿には優しい。
二人の不思議なやりとりが短いのに核心をついているし、若い真阿が気づいたことと、父ほどの年の火狂が考える事の違いが比較されてなるほどと思わせる。
そして他人事なのにわざわざ出かけて行って事情を探ってくる火狂。
悲しい出来事と優しい人の話で、予想外に心に残る本となった。
ヘブン
ヤクザともめてタイに逃げた真嶋。
しかしそこで真嶋は、麻薬組織に自分を売り込み、日本での麻薬販売ルートを乗っ取ろうと計画していた。
政界、芸能界、ヤクザとの後ろ暗いつながり、隠れ蓑となった宗教など、いろんなところが入り乱れて覇権を取ろうとするそこは、天国なのか。
「あぽやん」シリーズとの差が大きくて、同じ作者だとは思えない。
全体的に裏社会の話なため暗いが、そこに入り込む月子のような女たちのおかげで華があるように見えている。
関わる人と立場が多すぎてややこしいが、それなりにいろんな面からの見方も入っていて何とか把握できた。
ケンカや銃、暴力や覚せい剤と、裏社会のものは何でも出てきた。
何かを成し遂げる話ではないが、一人の男の意地が強く残される。
探偵の田伏は重要な位置にいたような気がしたのに、さして活躍もなかったのが残念。
絵ことば又兵衛
吃音がひどい又兵衛は、母のお葉と共に寺の下働きをしていたが、ある日寺の襖絵を描きに来た絵師・土佐光吉と出会い、絵を描く楽しさを知る。
それから又兵衛は良い出会いによって絵を習うことができるようになるが、母のお葉が毒を飲まされて殺されてしまう。
苦悩を抱えながらも絵をかいていく又兵衛は、自分の父は荒木村重であること、母だと思っていたお葉はもともと乳母であることを知らされ、また新たな苦悩を胸に住まわせることになる。
長の師であり友であった者たちが死んでいき、自らも老いを感じる頃までの、又兵衛の生きざまを描く。
吃音によって周りから疎まれ、責められ、同情される日々が続いても、又兵衛は絵によって道をつくっていく。
どうにもならない世の中の流れにも、年を取ってから罪人とされてしまっても、自分を表現するのはいつも絵だった又兵衛の心情がじっくりと描かれていた。
最初は退屈に感じたけれど、飽きたと感じる前に引き込まれ、笹屋や光吉、内膳らと共に又兵衛の人生を見守っていたような気になった。