不村家奇譚―ある憑きもの一族の年代記


 山奥の村に代々伝わる大きなお屋敷を持つ一族。
そこは、憑き物の一族だった。
一族以外と健常者は食われるからと、使用人は奇形の人間ばかりが集められ、一族の者も、首から下はほぼないにもかかわらず生きている双子の片割れや、足がない代わりに天才的な頭脳を持つ跡継ぎなど、奇妙な子が生まれる。
その一族にはいったい何が憑いているのか。

 何代にもわたる不村家の物語。
不気味で、想像もできないような姿をしている者たちが住む家。
だけど淡々と時代が進み、奉公をしていた者が残した小説や、逃げ出した家人の行く末を見つける子孫など、様々な出来事がつながる瞬間があるためどんなことも見逃せない。
この一族に残る因縁は呪いか。
現代にはどんな影響が出るか、まだまだ続きそうな憑き物一族のこれからが気になる。

ふわっとした軽いカーディガン


使用糸:パピー プリンセスアニー(532)
編み図:大人のナチュラルニット から
     ふわっとした軽いカーディガン
使用針:6号棒針、4号棒針 360g

前作との比較
裾のガータ編みをゴム編みに変更


沈黙のアイドル


 声優を目指している林亜紀は、トップアイドル・小沼エリンの声真似が上手かった。
そのおかげで声優の仕事よりも先に、エリンの「声の代役」を頼まれ、なんとスイスまで行くことになってしまう。
しかしそこで、亜紀はエリンの死体を見つける。
パニックで何もできない亜紀に、犯人はエリン殺しを亜紀に擦り付け、切り立った崖から突き落とされてしまった。
亜紀の運命は。濡れ衣を晴らすことはできるのか。

 久しぶりの赤川次郎。
軽い語り口でするする進む物語は、あっという間に読めてしまう。
物騒な出来事が次々に起こり、剣呑な思惑を持った人がたくさんいるわりには明るく、主人公は強い。
何度も死にかけ、助けられる亜紀。
危険がてんこ盛りの割にあっさりと助けられるので妙に構えなくて済む。
そして必ず解決して終わることが分かっているので安心して読める。

ふわっとした軽いカーディガン


使用糸:ハマナカソノモノヘアリー(123)
編み図:大人のナチュラルニット より
    ふわっとした軽いカーディガン
使用針:6号針、4号針 180g 

余った糸でポケット追加


紅蓮の雪


 伊吹の双子の姉・朱里は20歳の誕生日を向かえた日、なんの前触れもなく自殺した。
朱里が死ぬ1週間前にこれまで縁のない大衆演劇を見に行っていたのを知った伊吹は、何かの真実が知れればと大衆演劇「鉢木座」へ行き、若座長の慈丹からスカウトを受ける。
鉢木座で女方として活躍を始めた伊吹に、やがて自分の出生の秘密と鉢木座との関係を知る。

 双子の片割れを失ったことによる悲痛な気持ちと、親からの非道な扱いで苦しみ続ける伊吹の気持ちが、ひたすら綴られているためにずっと暗い。
親から無視され続けたくせに日舞だけは習わされていたり、なのに女の朱里にはやらせないで勉強だけさせていたりと不可思議なことは多かったのは、過去を捨てきれない親の我儘で、振り回された朱里と伊吹の辛さは想像もできないが、その一環した重苦しい空気は長く続けて読むのはしんどかった。

青く滲んだ月の行方


 隼人は、別れた咲良の荷物を箱に詰め、送り返す手続きをする。後輩の大地は、「女の子との遊びはクレーンゲームみたいなもの」と言ってみせる。
自殺をテーマにした劇の台本を作っている最中に、クラスメイトが自殺してしまい、作り直すことにしたB。
悩める少年たちの世界。

 毎日なんとなく過ごして、面白い事も忙しい事もあるけどなんとなく退屈な頃。
そんな世代の若者たちの出来事が、ただ淡々と描かれる。
盛り上がることもなく、暗すぎることもないので、夢中になることもなく、楽しくもなく、続きはどうでもよくなって、読むのを辞めてしまっても何も問題はない。
もちろん何も残らないし、次の章に入ればすぐに忘れてしまう。

灰かぶりの夕海


 千真の前に現れた少女は、関東に起こった大災害で亡くした恋人に、名前や姿形、癖までもそっくりだった。
生きる気をなくしていた千真の前に現れた少女を拾い、千真のしていた配達の仕事を手伝い始めた時、訪ねた家で二人は死体を発見する。
しかも死んでいる女性は、配達先の恩師の妻だった女性とそっくりだった。
死んだはずの女性と似た人物が、二人も。
千真の周りで、何が起こっているのか。

 現在の日本に近いけど、ちょっと違う過去を持っている設定。
最初は短い間に視点や人物がころころと変わり、何が言いたいのかわからず、少しも興味をそそらないプロローグを集めたような感じ。
そのうち焦点を当てられた千真と夕海だが、夕海が非常に気味が悪い。
純粋な少女を表現するには無知すぎて、同情もできなかった。
ドッペルゲンガーみたいに似ている人ともそんなにあちこちで出会うはずはないし、なんだか無理やりでうさん臭さばかり目立った。

五つの季節に探偵は


 第75回日本推理作家協会賞〈短編部門〉受賞
高校二年生の榊原みどりの父は、探偵をやっている。
そのせいで周りからいろいろと面倒なことを頼まれたりしてきたが、今回は特にやっかいだった。
同級生からの頼みは、「担任の弱みを握ってほしい」。
断るつもりが承諾させられ、しょうがなく担任の尾行をしてみたところ、みどりは人間の本性を見つけることに楽しみを見出してしまう。

 お人好しなのかと思ったらそうではなく、ただ人の本当の顔を見たいという欲求と、探偵の仕事が楽しくなってしまったみどり。
一章ごとに成長していて、時には真実を暴きすぎて傷つけてしまうこともあったり。
探偵としての洞察力や閃きよりも、関係者に迫る場面が印象的だった。
解決するだけじゃなくて、冷酷なまでに真実をごまかさないやり方は、なんとなく察してあやふやにする周りに毅然と対抗していて気持ちが良かった。

もしかして ひょっとして


 もうすぐ1歳になる那々美を連れて、電車に乗って実家に戻る電車の中、行き会わせた老婦人とのひと時の話題は、もう一人の七夕生まれの女性の恋バナだった。
男子バスケ部の異変をどうにかしてほしいとあちこちから頼まれた生徒会委員の研介。
ブラックな人材派遣会社に勤める永島に猫を預けていった友人の秘密、叔母に頼まれてこっそり荷物を取りに行ったら死体が待っていたなど、ちょっと変わった雰囲気の短編集。

 スッキリ解決するものばかりではないため、その後のことが気になってしまう。
良い話だったと穏やかな気分でいても、次は全く違った話でがらりと様子が変わっていくため、気持ちが切り替わらない。
それぞれの話は楽しめたけど、続けて読むのはちょっと辛かった。

コスメの王様


 明治、家の借金返済のために牛より安い値段で売られてきた少女・ハナと、家族の生活のために進学をあきらめて神戸に出てきた少年・利一。
大銀杏の木の下で出会った二人はやがて、売れっ子の芸妓と化粧品会社の社長となった。

 銀杏の木の下、ドブにはまって死にかけていた利一を助けたハナ。二人はよく似た顔立ちをしていて、お互いが大好きだった。
そんな幼馴染の二人が成長していく様子がじっくりと書かれていて、互いに助け合い、それでも相手より頑張っていないからとより力を貯めるために踏ん張る姿が何度も出てくる。
そしてこれまでの高殿円の文体とは少し違っているようにも感じた。
これまでは、登場人物の感情を強く表現して感情移入させるものが多かったが、これはどこか客観的で、ざくざくと次々に投げ込まれる雪玉のように油断できないスピードで進むため止められなかった。
後半、二人が遠く離れていた期間はお互いの近況もあまり語られず情報がないのは、それだけ心理的にも離れていたのだろうかと思うし、最後はやっぱりここへ戻るのだという場所があったことが、まだ大丈夫という気にもなる。