検事の本懐


2016年10月14日 読了
 優秀だと噂の、まだ若い検事。
出所したばかりの男がその足でまた窃盗で捕まった。
検事の佐方貞人は、所持金があるにも関わらず腕時計を盗んだという男の行動に疑問を持つ。

 上の意志に逆らって自白している被疑者を送致するのを渋ったり、傍から見るとおかしな言動をする佐方だが、実はただ一人真実が見えている。
ありふれた設定。それなりに楽しく読んだが、最後の事件は納得いかない。
秘する気持ちを、知っている者が静かに思い浮かべるから真実味が出るのであって、記者がたいして取材もしないで「おそらく当たっている」という想像だけの過去が、出来事だけならまだしも、当事者の表情や心のうちまで語っても、全く説得力がない。

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月輪先生の犯罪捜査学教室


2016年10月11日 読了
 銀座で探偵事務所を営んでいる月輪龍太郎は、東京帝大で犯罪捜査学講座を受け持つことになる。
しかし学生は3人。
やる気の感じられない3人に向かい、月輪は講義を始める。
教科書を使わず、実際の犯罪を扱うという方法で。

 3人の学生にそれぞれ謎解きをさせ、答え合わせとして月輪が犯人を捕まえてゆく。
他のシリーズのスピンオフということらしいが、これだけ読んでも色んなパターンがあり、楽しめる。しかし本格的というほどではない。

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英雄先生


2016年10月01日 読了
 ボクサーの夢が破れ、地元に帰って教師をしながらくすぶっていた池田。
ある日、教え子の女子生徒が失踪し、さらに旧友がホームレスのような格好で死んでいるのが見つかる。
女子生徒は車で連れ去られたとの目撃証言もあり、池田は行方を探し始める。

 最初はあまりの下品さと、しばらくたっても中身が見えてこないために投げ出した。
タイトルと表紙からも何も伝わってこないのも理由。
でも読み進むうちにわかってくる池田の人柄が、この先どんな考えを持つのだろうと興味を持てた。
最後はオオゴトになる。でもやっぱりこのタイトルは失敗だと思う。

どうもこの人は、「探偵はバーにいる」のシリーズ以外はぱっとしない。

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ヒワマン日和


2016年09月26日 読了
 酒癖の悪い父から逃げ出そうとする聖人の前に突然現れた、黒ずくめの女性・日和満。
自らを「ヒワマン」と呼ばせるその女性は、見た目も話すことも変わっていた。

 今までの作品とはガラリと違う雰囲気。
どう受け取っていいのかわからないというのが感想。
色んな所に現れ、人々の背中を押し、誠実な態度を見せ、さらりといなくなる。
迷う人たちの元でその迷いを吸収し、より黒さを増していく人外のもののよう。

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真贋


2016年09月19日 読了
 盗犯を担当する警視庁捜査三課のベテラン刑事・萩尾と、その部下・秋穂。
二人が担当した空き巣は、金目のものがあるところだけを的確に見抜き、他には手も触れないという凄腕の窃盗犯・ダケ松の犯行と思われた。
しかし、すぐにつかまったダケ松の供述を聞いた二人は、違和感を持つ。

 空き巣の事件から、国宝の窃盗事件へと事が大きくなる。
それは、犯罪に関わる者たちが、それぞれのプロ意識と技をかけた行動だった。

 相変わらずすぐ忘れそうな話だけど、関わる者たちの思いは丁寧に書かれていて飽きずに一気に読める。

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真贋 [ 今野 敏 ]
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おおあたり


2016年09月08日 読了
 そろそろ大人として認められたい若だんなは、仕事を頑張ることにした。
と言っても寝付いてばかりの若だんな、猫又の秘薬という怪しい薬を飲んでみたいと思ったり、当たった富くじが実は何枚も出てきて偽物当てをすることにしたりと、今度も大賑わい。
 
 当たってうれしいものも、これはたまらんというようなものも、いろんな大当たりを引き寄せる。
もうすっかりおなじみだが、その分大きな印象を与える話が少なく、すぐに忘れてしまう。
仁吉と佐助が一太郎のもとへやってきた話などは、なぜ今頃唐突に出てきたのか謎。

 でも、若だんなの親友・栄吉の婚約者が急に心変わりをする話には是非後日談がほしい。

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おおあたり [ 畠中恵 ]
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精姫様一条 お狂言師歌吉うきよ暦


2016年09月07日 読了
 お狂言師とは、大名家の奥向きに参上する女ばかりの一座。
水木歌仙一座の歌吉は、ある事件をきっかけに公儀の隠密の手下である「手駒」となった。
 ある時、将軍家の姫の嫁ぎ先を巡り、二つのお家が金のかかる「厄介嫁」となる姫を押し付け合い始める。
そのさなか、密談をしていたと思われる二人が心中に見せかけて殺される。

 シリーズものなのに途中から読んだおかげで、所々出てくる昔話がよけいに気になってしまう。
でも長々揉めた割にあっさりと幕が下り、拍子抜けする結末となった。
さかのぼって読もうとは思わない程度。

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精姫様一条 お狂言師歌吉うきよ暦 (講談社文庫) [ 杉本 章子 ]
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小説家の姉と


2016年09月05日 読了
 5歳年上の姉が突然小説家デビューした。
一人暮らしを始めて3年、弟の僕に「一緒に住んでほしい」という。
 姉の小説家としての顔を見ることになり、僕は姉が持っている秘密に気づき始める。

 「姉」が描く小説はきっとこんな感じなんだろう。
と思うくらい、普通の、いつもの生活を描いた、何気ない毎日。

 大きな衝撃もなく淡々と進み、驚く出来事もなく、普通に終わる。
きっとすぐ忘れる。

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小説家の姉と [ 小路幸也 ]
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砲艦銀鼠号


2016年08月02日 読了
 大戦争であらゆるものが壊れた世界。
元戦闘員の三人が偶然手に入れたオンボロ戦艦「銀鼠号」で海賊稼業を始めた。

 はったりの砲台がついた船を動かし、あちこちの海で呑気に漁船や民間の輸送船を襲いながら漂う3人。
個性的なキャラクターが、奇妙な生き物と出会ったり裏切られたりする。
所々興味をそそる出来事が起こるが、「武装島田倉庫」や「水域」に比べるとインパクトが弱い。

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砲艦銀鼠号 (集英社文庫) [ 椎名誠 ]
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ノッキンオン・ロックドドア


2016年07月31日 読了
 「不可能」を解く御殿場倒理と、「不可解」を解く片無氷雨。
それ以外の謎はそろってダメな二人が組み、探偵事務所を構えている。
そこに持ち込まれる謎をめぐる、短編小説。

 ただ、きっちり最後まで見届けるということはなく、たいていその場にいる警察官の女刑事の穿地に後始末は任せ、謎を解くだけの二人。
さも周知の事実といった風に出てくる昔話に戸惑うが、二人と穿地、さらに犯罪の知恵を売る美影の4人には、まだ解き明かされていない「密室」があるらしいので、今後に期待。
二人の探偵がいまいち区別しにくいのも難。

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ノッキンオン・ロックドドア [ 青崎有吾 ]
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