ネメシス〈上〉


2018年07月06日 読了
 2220年。植民衛星ローターの天文学者ユージニアは、雲に囲まれた一つの星を見つけた。するとローターの指導者ピットは、秘密裡に太陽系脱出を計画し、ローターは突然姿を消した。

 太陽系から逃げ出したローター人。しかしその星・ネメシスにはもっと大きな秘密があり、ユージニアの娘と元夫のクライルにも大きな秘密があった。
宇宙をまたにかけた、人類の賭け。登場人物がとにかく魅力的で個性的。
ネメシスのことがわかってくるどころかどんどん疑問が増えていき、止められなくなる。

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よっつ屋根の下


2018年06月16日 読了
 勤め先の病院の不正を告発し、地方に飛ばされた父。
東京を離れるのは嫌だと頑なに拒む母。
息子は父に、娘は母についていくことにして、それぞれの生活が始まる。

 家族がバラバラになる危機を、それぞれはどう思い、どう折り合いをつけていくのか。暗い話題が多い割に、しんみりしないでするする読み進められた。
相手の事が決して嫌いではないために悩む。
章ごとに家族それぞれの目線から見た家族が描かれているため、同じ話題でも飽きない。充実した気分で終われた。

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銀河鉄道の父


2018年05月31日 読了
第158回直木賞受賞
岩手県花巻に生まれた宮沢賢治。裕福な家に生まれたが、家業を嫌い、東京と実家を行き来しながら曖昧な夢を追った青年時代。
そして、やっと自分の道を見つけ、それに没頭する日々。
若くして逝った文豪の生き様を賢治の父の目線で見る。

 常に親の金を当てにする賢治が、幼く見える。
明治の時代の父が、まだ小さい賢治の病気につきっきりで看病したという話が妙に印書に残っていたせいか。
父を主人公にしたおかげで、賢治を英雄の様な扱いにはせず、迷いの多い一人の若者として見れた。
思いのほか楽しい時間だった。

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花ひいらぎの街角 紅雲町珈琲屋こよみ


2018年05月25日 読了
 ある日届いた小包に、半世紀前の記憶がよみがえる。
それは旧友が書いた短い小説だった。
それを活版印刷で自費出版しようと思い立った草は、印刷会社を訪ねる。

 行った先の印刷会社で漏れ聞いた情報漏洩の噂が身近なところまで飛び火してヤキモキさしたり、近所の印刷屋では、自殺したという女性の行動に疑問をもったりと、お草さんは忙しい。
でも、ふとした日々の行動や思いがじんわりと沁みて、その間に考えがまとまるような間がいつも心地よい。

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裸の華


2018年05月15日 読了
 舞台上での事故で左足を砕き、姿を消したストリッパーのノリカ。
故郷の北海道でダンスシアターを開くことにしたノリカは、二人の若いダンサーと、腕のいいバーテンダーに出逢う。

 もう怪我は治っているはずなのに、踊れない。
葛藤を隠しながらも若い才能に魅せられ、育てることに力を注ぐことにしたノリカだが、その語り口がどんな時も静かで、じっくりと読ませる。
暗い話ではないし、踊り子としての矜持や力強さがしっかりと伝わってきて、踊りに興味がなくても自然と想像してしまう。
ひと時の夢のような時間を、自分も過ごした気分になる。

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カーリー <3.孵化する恋と帝国の終焉>


2018年05月06日 読了
 オルガ女学院が閉鎖されてから四年。大学に進学したシャーロットは今でもインドへの思いを抱き続けていた。
どうにかしてインドに行く方法はないかと様々なことをしても、どうしても出国許可が下りなくてもがいていたカーリーの前に、インドの王子ル・パオンがある提案をする。

 大人になったカーリーは、小さな閉ざされた楽園の女学校で夢見るような生活を送っていた頃とは違い、少し世界が広くなった。
でもおてんばぶりは相変わらずで、そのおかげでインドへたどり着くこともでき、やっとカーリーとの再会もできる。情熱のなせるわざ。
でもやっぱり乙女な言動もそのままで、微笑ましくもハラハラさせられ、羨ましさと応援したい気持ちでいっぱいになる。

父子ゆえ 摺師安次郎人情暦


2018年04月14日 読了
 5年まえに妻のお初に先立たれ、神田明神下でひとり暮らす安次郎。
一人息子はお初の実家に預け、摺師として生計を立てていたが、ある日実家から急な知らせが届き。。

 もとは武家の出だったのに火事で家族を亡くして町人となり、そしてまた妻を亡くした安二郎。己が大事にしたいと思うものを見つめ、そのために力を尽くそうと気づく安二郎が、穏やかな語り口で切々と迫って来る。
力になってくれる周りの人たちもそれぞれ個性的で魅力的。
本当なら主役になるほどの人物も脇役として顔を出し、強い印象を残している。

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逃れの森の魔女


2018年04月10日 読了
 誰もが知る「ヘンゼルとグレーテル」
お菓子の家を作り、子供たちを閉じ込め、食べようとして逆にオーブンに閉じ込められてしまう魔女が主人公。
彼女は何故魔女になり、いとも簡単に殺されてしまうのか。

 なぜ魔女となってしまったのか、また目が良く見えないといった小さなことまで、子供たちを怖がらせるためだけにいた人物じゃないということが短い話の中でとても濃く描かれている。
物語を魔女の視点から見るということを、純粋に楽しめる。

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死と砂時計


2018年03月21日 読了
 国の政策として、死刑囚を集めて収監し、死刑まで行う終末監獄をビジネスにしたジャリーミスタン首長国。
そこに収容されたアラン青年は、老囚シュルツの助手となって、監獄内の事件の捜査に携わることになる。

 脱獄不可能なこの監獄からただ一人逃げ出した囚人を追うために街へ出かけたり、死刑前日に独房に入っていた囚人二人が惨殺されたりと、物騒な話ばかりだけど、鬱々とした雰囲気はなく、最後まで興味が薄れず楽しめた。
最後まで驚きが待っていたが、主義や考え方が違う人の気持ちを推し量るのはとても無理なのだとうすら寒い気持ちになる。
それでもイヤミスではなく、シリーズだったらぜひ読みたいと思えた。

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カラスの親指


2018年03月12日 読了
 詐欺を生業としている男が、自分をどん底に突き落とした者たちを壮大なペテンにかける。
中年男二人で組んで詐欺を働いていたら、ある時そこに少女が加わる。
いつの間にか5人と1匹になってしまった同居人は、自分たちの今後をかけて最後のペテンを仕掛けようとして。

 暗い話で始まったため、なんだか憂鬱な気分で読み始めたら、同居人が増えるに従い明るくなる。
主人公が悪者になり切れない言動で同情を誘うし、同居人はポンコツに見えてしょうがないし、どんな結末になるのかハラハラした。
そして思いもつかないラストとなるが、ちょっと都合が良くいきすぎじゃないかと思うようなことも、想像できていなかったせいでなるほどという思うの方が強く残ったために良い読後感となった。