まるまるの毬


2018年02月09日 読了
 江戸麹町の菓子舗「南星屋」は、親子3人で全国の和菓子を日替わりで出す小さな店。
できるだけ庶民にも買いやすいよう価格を抑えたおかげで、近所では評判だった。

 そんな菓子屋の主・治兵衛は、武家の次男坊だったのだが、10才の時に自ら菓子屋に修行に出た。治兵衛には誰にも明かせない秘密があり、そのせいで拾ってくる厄介事が大きく家族の運命を揺さぶり、どうにもならないうえにぶつけることろもない気持ちを切なく描く。何より大事なのはなにか、それぞれが感じる幸せと不幸せを詰め込んだ作品。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

まるまるの毬 (講談社文庫) [ 西條 奈加 ]
価格:792円(税込、送料無料) (2019/11/17時点)

テーラー伊三郎


2018年02月05日 読了
 福島の保守的な田舎町で暮らす、高校生の海色(アクアマリン)。
ポルノ漫画家の母を持つという特殊な家庭環境が、紳士服仕立て屋「テーラー伊三郎」に飾られた美しいコルセットに興味を持たせ、田舎町の窮屈を吹き飛ばす。

 「法医昆虫学者」シリーズの赤堀くらいのハチャメチャぶりが、海色の母だけではなく、町のお年寄りにも広がっていて、ずっと大騒ぎな気持ちで読み進められる。窮屈で息苦しい出だしが、次第に大きく爆発するよう。
 あっという間に読めて満足感も大きいけど、出来上がったコルセットやおばあさんたちが着た着こなしを実際に見てみたい。想像だけではきっと追いつかない。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

テーラー伊三郎 [ 川瀬 七緒 ]
価格:1650円(税込、送料無料) (2019/11/17時点)

弥栄の烏 八咫烏シリーズ6


2017年11月28日 読了
 前作『玉依姫』と同じ頃、八咫烏の郷では何が起こっていたのか。
荒れた山神に振り回される若宮は、金烏としての記憶がない事に悩み、郷の未来に悩む。そしてついに、猿の襲撃が始まる。

 話が進むにつれ、だんだん細かいところも思い出してくる。
100年まえ、猿と烏の間になにがあったのか。
参謀にまで上り詰めた雪哉の変わりようが怖かったが、若宮と浜木綿の関係にほっとさせられた。
ファンタジーだと思っていたら歴史的な側面も見えてきて、どんどん混乱させられて引き込まれていく。結末がもう少し物足りないと思ったのは、まだこの物語を「読み足りない」と思ったからか。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

弥栄の烏 [ 阿部 智里 ]
価格:1650円(税込、送料無料) (2019/11/17時点)

風神雷神 雷の章


2017年11月22日 読了
 本阿弥光悦からの誘いを断り、俵屋の主人となった伊年。
名を宗達と変え、妻を娶り、店はますます繁盛する。
そんな折、ふらりと現れた公卿の烏丸光広によって、宗達はさらに美の奥地へと引き込まれていく。

 宗達の絵の力が益々冴える。手がける絵に衰えはなく、亡くなってからも嫉妬さえもかすれてしまうほどの力を見せる。時々入る時代考察も、教科書にもこんな風に書いてあったらさぞ興味をそそるだろうという書き方で、話の流れを少しも損なわない。俵屋宗達に興味を向かせるには充分な本だった。益々知りたくなった。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

風神雷神 雷の章 [ 柳 広司 ]
価格:1650円(税込、送料無料) (2019/11/17時点)

墨の香


2017年11月08日 読了
 突然、嫁ぎ先から離縁されて実家に戻った岡島雪江。
身を立てる方法として、筆法指南所(書道教室)を始めるが、個性の強い門人や、見た目は良いがどこか頼りない奥祐筆をしている弟、さらには大酒飲みの師匠・巻菱湖に囲まれ、存外忙しい日々を送っていた。
 そんな時、元夫が大きな企てに関係していることを知らされ。。

 書家として生きる決意をした雪江が、新しく出会う出来事に心を揺さぶられる様子が強く感じられて、息が付けなくなるような箇所がいくつもある。
ままならぬことに憤りつつ諦めていても、最後のサプライズでみんな吹き飛んだ。雪江が書に向かう時のように、気を静め心を静める時を持ちたいと思った。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

墨の香 [ 梶よう子 ]
価格:1870円(税込、送料無料) (2019/11/17時点)

宝石鳥


2017年11月02日 読了
 第二回創元ファンタジイ新人賞受賞作。
妻を事故で失い、すべての気力を失ったミュージシャンは、見つかったわずかな遺骨と共に、妻の故郷へ向かう。
 そこは、神の遣いである宝石鳥の子孫が治めるシリーシャ島。100年まえの女王が島を訪れた植物学者と恋に落ち、苦悩の末その身を二つに分けたという言い伝えがある島だった。

 美しいファンタジー。長い話にも関わらず、少しも飽きずにあっという間に読んだ。神の使いである宝石鳥も、その民族衣装も、舞も、そこを統べる女王も、たっぷりの美しい表現が満載でうっとりする。ただ、最後がなんだか密度が薄い感じで物足りなかった。女王となった者の様子の描写が少ないため、様子が浮かびにくく、理解するのに何度か読み直した。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

宝石鳥 [ 鴇澤亜妃子 ]
価格:2090円(税込、送料無料) (2019/11/17時点)

風神雷神 風の章


2017年10月25日 読了
 扇屋「俵屋」の後継ぎとして養子になった伊年は、将来店を継ぐための修行などお構いなしにひたすら絵を描いていた。
ある日、幼馴染に頼まれ描いた平家納経の表紙絵の修繕を書の天才、本阿弥光悦が気に入り、料紙と下絵と文字の3つの美が一つとなった書物を作りたいと打診される。

 後に天才絵師と称されることになる俵屋伊年の若い頃の話。
我を忘れるほど惹きつけられるものに出逢い、のめり込み、モノにするには、天才といえども簡単ではなく、伊年が心を動かされたり焦ったりする様が目の前にいるかのように感じられて興味をそそる。
所々入る現代との比較や当時の文化の説明なども、テンポを途切れさせずにうまく配置され、するりと頭に入って来る。
次の章も途切れずに読みたかった。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

風神雷神 風の章 [ 柳 広司 ]
価格:1650円(税込、送料無料) (2019/11/17時点)

すかたん


2017年09月28日 読了
 饅頭屋の娘だった知里は、江戸詰め藩士の夫に早くに死に別れ、大坂でも有数の青物問屋「河内屋」に住み込み奉公することになった。
関東と関西の文化の違いに戸惑いながらもなんとか慣れ、商いより野菜作りに情熱を傾ける若旦那に振り回される日々。

 全く違う環境に置かれ、慣れるまでの辛さもしみじみと伝わるが、しだいに食べ物の美味しさにほころび、野菜にも興味を持っていく知里が頼もしくて微笑ましい。驚くことばかりする若旦那の行いよりも知里の行動力に力が湧き、お見通しのおかみさんに背中を押され、だんだんと力がこもる。
何かをつかみ取る力ってこんな風に持つものなのかと感じることができた。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

すかたん (講談社文庫) [ 朝井 まかて ]
価格:792円(税込、送料無料) (2019/11/17時点)

瓦版屋左吉綴込帳


2017年08月30日 読了
 わずか10か月で姿を消した写楽。
その彼が、瓦版屋をしていたという設定の本作。
左吉とその弟子・孫次がいち早く仕入れたネタを、ただ瓦版にするだけではなく、事の顛末まで自分たちで見つけてしまうという、探偵ばりの大活躍をする。

 巷で起こる、殺しや盗まれた富くじの行方など、あっという間に瓦版にして売りさばく左吉。挿絵は一つもないのに、鮮やかで生き生きとした絵が目に浮かぶ。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

瓦版屋左吉綴込帳 [ 古荘多聞 ]
価格:1780円(税込、送料無料) (2019/11/17時点)


2017年08月10日 読了
 北斎の娘であり女絵師の葛飾応為。
幼いころから絵筆を握り、父の講釈に耳を傾けていた風変わりな娘が、次第に絵師として成長し、老いるまでの物語。

 小言の多い母や、気持ちを素直に出せないまま終わった恋、そして姉の忘れ形見である甥の悪行に困らされ、絵師としての技術に悩む姿が迫るような圧迫感を持って身を寄せてくる。
残っている絵はわずかだという彼女の絵に興味が湧き、改めて表紙を見て息をのむ。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

眩 [ 朝井まかて ]
価格:1870円(税込、送料無料) (2019/11/17時点)