神渡し


2012年10月26日 読了
 幼馴染の利吉がおかしな死をとげた。同じ読み売りの仕事をしていた才助は、そのことを面白おかしく書きあげた瓦版に怒り、その記事を書いた元武士である青山孫四郎のところに怒鳴りこんだ。
 利吉の死を不信に思って調べ始めた矢先、才助は何者かに襲われるが、利吉の死と共に沸きあがった疑問を探るべく、孫四郎と共に謎に迫る。

 読み売りが元武士と対等に口げんかをしつつ、時にハッタリをかましながら謎を解いていく。
身分の違いを軽く流す才助の切り返しは鮮やかで心地よい。
 最後は思いもよらない大事へと発展し、歴史上の大事件につなげてしまった。
 あっけにとられている間にさらりと終わり、才助に一杯食わされたような、気持ちのいい終わり方をする。

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琉璃玉の耳輪


2012年10月20日 読了
 昭和三年、名探偵・唐草七郎の弟子である女探偵・岡田明子の元に、奇妙な依頼が入る。
 「瑠璃玉の耳輪をした、3人の娘を見つけ出し、丁度1年後の今夜、とあるホテルの1室につれて来てください」

 古風な語り口と表現に、慣れるまではなかなか進まないが、次第に取り込まれる。
その不思議な作りには、あとがきを読んで納得。
原案と著者に、興味をそそられた。

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塔の下


2012年10月08日 読了
 厳しいシノギを稼ぐため、新たな仕事に手を出した揚句、ピンハネした男が殺される。
 そのからくりを調べるために、ヤクザの使いっ走りの元准教授・鏑木が、色々と頼まれごとをする。

 久しぶりの五条瑛。
ヤクザがどうなったって構いはしないのだが、仲間のために奔走するうち、ヤクザと堅気との狭間に生きる鏑木が掴む何重にも被さった真実。頭の中を整理するのに何度もページを戻りながら読んだため、とても満足した。

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黒猫の接吻あるいは最終講義


2012年09月22日 読了
 黒猫に誘われ、バレエを見に来た付き人。
その舞台で、ハプニングが起こる。
5年前にはその演目で死者も出ており、それは黒猫も関わっていたと知らされる。

 奇妙な謎と向き合うときは、常に黒猫がいた。今までは。
今回は付き人が一人で走り抜ける。

 もどかしい二人の様子がほほえましくて、黒猫の講義もなんだか愛しく思えてくる。
 これ程くっきりと思い描ける登場人物なのに、二人とも名前が出てきていないことが不思議。
楽しみにしていた2巻目なのに、もう最終講義なんて寂しい。

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月の輝く夜に/ざ・ちぇんじ!


2012年09月02日 読了
 親子ほどに年の違う恋人を持つ貴志子は、その恋人・有実から、娘を少しの間預かってほしいと頼まれる。娘は貴志子と二つしか年が違わなかった。

 なつかしい!
少女時代、氷室冴子の本は必ず読んでいた。
「ざ・ちぇんじ! 」も大好きで、買わずにはいられなかった。
話はすっかり覚えていても、何度でも読んでしまう。
 あの頃の本、まだ実家に置いてあるかなぁ。。。

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ひなこまち


2012年07月18日 読了
 ある日若だんなの元へやってきた木札。
そこには『助けてください』と書かれてあった。
その日から、様々な困りごとが若だんなんの所へ持ち込まれる。
 一つづつ向き合ううちに、どれも江戸でこのことろ騒がれている美人探しに繋がり、、、。

 今回若旦那はほとんど熱をだしていた。
だけどどの話も皆が少しづつ幸せになり、最後は優しい人たちの幸せを遠くから祈る若旦那。
 暖かな気持ちで読み終えることができた。

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クローバー・レイン


2012年07月07日 読了
 大手の出版社に勤める彰彦は、もうほとんど過去の作家となった人の新作を、偶然読んだ。
それから、NOとしか言わない編集長や会社を説き伏せにかかる。
 本を作ることの大変さと、本に対する愛情を描いた本。

 以前の、書店員の話はイマイチだったが、これは面白かった。
この人が書くものはやっぱり、本の話である。

 落ち目の作家が書いた小説は、乾いたシロツメクサの上に降る、雨。
誰かに届き、心を潤す雨となる。まさにそんな本となった。
 雨の季節に読むには最適だった。

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聴き屋の芸術学部祭


2012年05月28日 読了
 相談しやすい体質なのか、いつの間にか人の話を聞くことになりやすい柏木は、「聴き屋」として学内で少しだけ名が知れていた。

 人の話を聞くうちに、推理好きの友人と共にあちこちに巻き込まれ、頼られる。
 人が何人も殺されるほどの事件が起こるのに、ゆるくてさらりと笑わせる。
 コミカルな登場人物のおかげでちっとも怖くないうえに、あっという間に読めるので気持ちがいい。

神去なあなあ日常


2012年02月21日 読了
 高校を出たら、適当にフリーターで食っていこうと思っていた主人公・平野勇気。
 担任と親に勝手に放り込まれた山の中で、なぜか林業見習いをする羽目になる。

 理由なんてわからないけど不思議な風習がたくさんある村で、勇気は少しづつ山の仕事を始める。
 いまどきの若者らしく、「ありえねー」「おかしいだろ!」「殺す気かっ」なんていう突っ込みがあちこちにまぶされ、厳しい仕事の中の楽しさをちゃんと伝えている。
 登場人物の濃さもすごいけど、山の雄大さと言うよりはスピード感がものすごく、一気に読める。

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神去なあなあ日常 [ 三浦しをん ]
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上陸


2012年02月19日 読了
 ようこそ、密航天国へ。
社会の底辺で、あきれるほど金がない3人が暮らす。
元サラリーマン、すでに前科者の若者、不法滞在の外国人。
それぞれワケありの3人が、同じような立場の者達と出会い、少しの間同じ時を過ごす。

 タイトルの意味は最後にわかる。
息をひそめるように生きていても、いずれ別れることになっても、今は家族のようなこの暮らしを楽しんでいる。
 切ない回想録だけど、誰も絶望してはいない。

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