風神雷神 雷の章


2017年11月22日 読了
 本阿弥光悦からの誘いを断り、俵屋の主人となった伊年。
名を宗達と変え、妻を娶り、店はますます繁盛する。
そんな折、ふらりと現れた公卿の烏丸光広によって、宗達はさらに美の奥地へと引き込まれていく。

 宗達の絵の力が益々冴える。手がける絵に衰えはなく、亡くなってからも嫉妬さえもかすれてしまうほどの力を見せる。時々入る時代考察も、教科書にもこんな風に書いてあったらさぞ興味をそそるだろうという書き方で、話の流れを少しも損なわない。俵屋宗達に興味を向かせるには充分な本だった。益々知りたくなった。

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墨の香


2017年11月08日 読了
 突然、嫁ぎ先から離縁されて実家に戻った岡島雪江。
身を立てる方法として、筆法指南所(書道教室)を始めるが、個性の強い門人や、見た目は良いがどこか頼りない奥祐筆をしている弟、さらには大酒飲みの師匠・巻菱湖に囲まれ、存外忙しい日々を送っていた。
 そんな時、元夫が大きな企てに関係していることを知らされ。。

 書家として生きる決意をした雪江が、新しく出会う出来事に心を揺さぶられる様子が強く感じられて、息が付けなくなるような箇所がいくつもある。
ままならぬことに憤りつつ諦めていても、最後のサプライズでみんな吹き飛んだ。雪江が書に向かう時のように、気を静め心を静める時を持ちたいと思った。

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宝石鳥


2017年11月02日 読了
 第二回創元ファンタジイ新人賞受賞作。
妻を事故で失い、すべての気力を失ったミュージシャンは、見つかったわずかな遺骨と共に、妻の故郷へ向かう。
 そこは、神の遣いである宝石鳥の子孫が治めるシリーシャ島。100年まえの女王が島を訪れた植物学者と恋に落ち、苦悩の末その身を二つに分けたという言い伝えがある島だった。

 美しいファンタジー。長い話にも関わらず、少しも飽きずにあっという間に読んだ。神の使いである宝石鳥も、その民族衣装も、舞も、そこを統べる女王も、たっぷりの美しい表現が満載でうっとりする。ただ、最後がなんだか密度が薄い感じで物足りなかった。女王となった者の様子の描写が少ないため、様子が浮かびにくく、理解するのに何度か読み直した。

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風神雷神 風の章


2017年10月25日 読了
 扇屋「俵屋」の後継ぎとして養子になった伊年は、将来店を継ぐための修行などお構いなしにひたすら絵を描いていた。
ある日、幼馴染に頼まれ描いた平家納経の表紙絵の修繕を書の天才、本阿弥光悦が気に入り、料紙と下絵と文字の3つの美が一つとなった書物を作りたいと打診される。

 後に天才絵師と称されることになる俵屋伊年の若い頃の話。
我を忘れるほど惹きつけられるものに出逢い、のめり込み、モノにするには、天才といえども簡単ではなく、伊年が心を動かされたり焦ったりする様が目の前にいるかのように感じられて興味をそそる。
所々入る現代との比較や当時の文化の説明なども、テンポを途切れさせずにうまく配置され、するりと頭に入って来る。
次の章も途切れずに読みたかった。

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すかたん


2017年09月28日 読了
 饅頭屋の娘だった知里は、江戸詰め藩士の夫に早くに死に別れ、大坂でも有数の青物問屋「河内屋」に住み込み奉公することになった。
関東と関西の文化の違いに戸惑いながらもなんとか慣れ、商いより野菜作りに情熱を傾ける若旦那に振り回される日々。

 全く違う環境に置かれ、慣れるまでの辛さもしみじみと伝わるが、しだいに食べ物の美味しさにほころび、野菜にも興味を持っていく知里が頼もしくて微笑ましい。驚くことばかりする若旦那の行いよりも知里の行動力に力が湧き、お見通しのおかみさんに背中を押され、だんだんと力がこもる。
何かをつかみ取る力ってこんな風に持つものなのかと感じることができた。

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瓦版屋左吉綴込帳


2017年08月30日 読了
 わずか10か月で姿を消した写楽。
その彼が、瓦版屋をしていたという設定の本作。
左吉とその弟子・孫次がいち早く仕入れたネタを、ただ瓦版にするだけではなく、事の顛末まで自分たちで見つけてしまうという、探偵ばりの大活躍をする。

 巷で起こる、殺しや盗まれた富くじの行方など、あっという間に瓦版にして売りさばく左吉。挿絵は一つもないのに、鮮やかで生き生きとした絵が目に浮かぶ。

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2017年08月10日 読了
 北斎の娘であり女絵師の葛飾応為。
幼いころから絵筆を握り、父の講釈に耳を傾けていた風変わりな娘が、次第に絵師として成長し、老いるまでの物語。

 小言の多い母や、気持ちを素直に出せないまま終わった恋、そして姉の忘れ形見である甥の悪行に困らされ、絵師としての技術に悩む姿が迫るような圧迫感を持って身を寄せてくる。
残っている絵はわずかだという彼女の絵に興味が湧き、改めて表紙を見て息をのむ。

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眩 [ 朝井まかて ]
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優しき悪霊 溝猫長屋 祠之怪


2017年08月03日 読了
 祠にお参りするようになって、幽霊と出会うようになってからも、忠治たち4人はちっともおとなしくならず、ますます幽霊を探して勝手に動き回るようになる。
 今度は空き家でかくれんぼをしていた時に出会った幽霊。

 次に殺される者の名前を告げていく幽霊に、怖がりながらも興味が勝つ4人。
長屋の大家さんにどんなに小言を食らっても、何度も幽霊に会いに出かけ、そのたびに死体を見つけて帰って来る。
怖い話のはずなのに、間を置かずくすりと笑えるところがあるのでちっとも怖くない。
この4人の言動が、楽しくて仕方ない。

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政略結婚


2017年08月02日 読了
 江戸から明治、大正、昭和までの、女たちの結婚。
生まれて半年で結婚相手が決まった加賀藩主前田斉広の三女・勇は、慣れない婚家で妊娠の兆候もなく、夫に側室を進めることに寂しさを感じていたが。。
 時代が変わり、常識も良識も変わっていく中、女たちの結婚が変わっていく様子を描く。

 苦しい日々も回想すれば満足のいく人生だったと静かに物思う彼女たちの物語は、悲壮感がなくて頼もしさすら感じる。
1つ目の物語で出てきた、「それでも死なぬものは死なぬ」というが一番心に残った。

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恋する狐


2017年07月10日 読了
 俳人の与謝蕪村が出会う、不思議な話。
人から聞いた話、蕪村自身が出会った人外など、いくつかの短編が表紙の狐たちのように舞い踊っているような本。

 短い話ばかりだけど、どれも優しい終わり方で、一つの物語に1,2行づつ、心がほわっとする分があり、思いのほか癒される。

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