64(ロクヨン) 上


2017年04月03日 読了
 昭和最後の1週間に起きた、誘拐殺人事件。
未解決のまま14年がたった頃、広報官の三上は、刑事部と警務部の争いに巻き込まれていた。

 誘拐事件だけがメインかと思っていたら、三上の娘の家出のほうが大きく描かれていて、何に注目していいのか戸惑った。
刑事部と警務部という馴染みのない部の争いが間延びさせ、退屈な上巻となった。

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アルテーミスの采配


2017年03月29日 読了
 フリーのルポライターである名賀尻は、あるドキュメンタリー出版物のインタビューをしていた。
短い命のAV女優達を追い、素顔を引き出すのが腕の見せ所で。

 今の自分の立場、それが運命だと思っていても、本当は何者かによって仕組まれたものだったとしたら。

 最初から最後まで「胸糞悪い」話だった。
ちょっとした悪戯で心を殺され、人生を狂わされた女の、最大級の知恵を使った復讐。
 視点があちこちに飛び、登場人物が区別しにくいのでわかりにくく、関係性を把握するのに手間取る。
舞台が苦界のせいか辛い話が多くて救いがないし、悪だくみをした者が制裁も受けないので後味も悪い。まだ続くと思わせる恐怖はホラー映画のよう。

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師走の扶持: 京都鷹ヶ峰御薬園日録


2017年03月28日 読了
 江戸時代、あちこちに作られた御薬園の一つ、京都の鷹ヶ峰御薬園。
幼い頃そこへ預けられ、育った女薬師・元岡真葛は、薬草を通じて身体だけでなく心をも病む人々を解きほぐしていく。

 薬問屋の主が買い付けから戻ってからの様子がおかしい、まだ少女のような子が懐妊したと言ってやってきたり、自分を認めなかった実家への思いなど、ただ病を治すだけではなく、患者の心に寄り添うことで気持ちも治そうとする主人公。

 こちらは京都の御薬園だが、梶よう子の『柿のへた』は江戸の御薬園が舞台で、こちらにも小石川薬園の名前も出てきてどちらの話か混乱するが、ますます薬園に興味が出てきた。

明治・金色キタン


2017年03月25日 読了
 「明治・妖モダン」シリーズ第2弾。
銀座の派出所勤務の巡査たちは、今はもう知る人も少ない怪しの者たち。
彼らが今回出くわしたのは、明治の世へと移り変わる中で捨て去られた小さな集落の物語。

 妖がたくさん出てくる割にはなんだかぱっとしない。
大きなことに絡んでいるようで印象は薄いし、「しゃばけ」シリーズと「若様組」シリーズの曖昧なところを寄せ集めたような2番煎じ感。

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まひるまの星 紅雲町珈琲屋こよみ


2017年03月23日 読了
 草は、引退したら「小蔵屋」の敷地に町の山車を入れる山車蔵を移転するという覚書を交わしていた。
しかし、今の場所の土地主の事情で早めたいといわれる。
でもそれでは、まだ店を続けている草には困ることになり、他の候補地を探し始める。

 小蔵屋に不都合が出てくるかもしれないという状況から、草の母の問題にまで膨れ、年をとってもまだ苦労がこれだけ残っているのかとため息をつきたくなる。
草のパワーが1作目より少しづつ弱まっている気もしてきて、ちゃんとゆっくり時は流れているんだと思わせる。

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祈りの幕が下りる時


2017年03月20日 読了
 明治座に幼馴染みの演出家を訪ねた女性が遺体で発見された。さらに数日後、ホームレスが殺され小屋ごと焼かれた事件があった。
一見、二つの事件に関連はないと思われたが、、。

 このシリーズは呼んだことがないけどドラマで少し見ていたから、どうしても加賀が阿部寛で浮かんでしまう。
 生きるために苦渋の選択をした親子が、苦しみながらも静かに精一杯生きてきたという話で、真実が見えてくると同時に苦しくなる。
その道を選ばざるを得なくなり、後に軌道修正しようとしても道がわからず苦しむ昭和初期が舞台の話は多いが、これもその一つか。

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over the edge


2017年03月17日 読了
 ニューヨーク市警のブラウンが日本にきたのは、視察のほかにもう一つ目的があった。
古い友人が日本で行方不明になったと聞き、探すためだ。
 ところが勝手のわからない日本で、黒人は目立ちすぎる。ひょんなことから知り合った元刑事の濱崎と手を組み、友人の足跡をたどり始めるが。

 ブラウンのキャラクターが薄く、ぶれていて一貫しないためにあちこちで違和感が起こる。やっていることもちぐはぐ。濱崎とバディとなるとも書かれているが、二人のやり取りも、とりあえず凸凹コンビとしてやりたいことを突っ込んでみたという感じで脈絡がない。
ハードボイルドのようなものを書いてみたかっただけ?

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進々堂世界一周追憶のカシュガル


2017年03月14日 読了
 京都を愛する浪人生・サトルは、『進々堂』という喫茶店で出会った御手洗という人物と仲良くなった。
御手洗は、世界中を旅してきて戻ってきたばかりだという。
彼を尊敬しているサトルは、彼から世界の話を聞く。

 サトルの存在意義がわからない。
御手洗が語る話も、知り合いから聞くなら興味もわくが、ただ面白くもないいくつかの出来事を語るだけ。
少しも引き込まれず、興味もわかず、飽き、やめておけばよかったと思っただけ。

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与楽の飯 東大寺造仏所炊屋私記


2017年03月11日 読了
 奈良時代。東大寺大仏造営事業に各地から徴発されてきた若者・真楯は、辛く厳しい3年という任期に就く。
しかし彼の運がよかった所は、造仏所の炊屋の炊男・宮麻呂が作る飯が格段にうまかったことだ。

 大仏作りの話なぞ少しも面白くないと思いながら読んでいたら、舞台はそこの炊屋だった。炊男の宮麻呂に興味を惹かれてからはあっという間に読み終えた。
人の業というほど大げさでもないが、生きる上での幸せや信念が様々あってじんわりくる。立場が違って敵であっても、悪人はいないし、お腹が満たされることが心にとってどれほど大事かが伝わってくる。

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与楽の飯 東大寺造仏所炊屋私記 (光文社文庫) [ 澤田瞳子 ]
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死神の浮力


2017年03月08日 読了
 小説家の山野辺は、娘を殺されたうえに、犯人から決定的な証拠を送られたのにそれを使えず、さらには犯人の無罪まで確定してしまって絶望していた。
その山野辺のところにやってきた死神の千葉は、1週間の調査の間、山野辺について様々な行動をする。

 長い。
小説家の山野辺が誰かとの会話のなかで、「普通に幸せをつかんで終わるような結末では、小説ではとてもつまらないものとなるが、現実では最大の幸福な結末である」といったような内容があったが、まさにその『普通のつまらない小説』であった。
 前作のように短編だったほうが良い後味を残せそうな内容を、わざわざあの長さまでしたのは最大につまらないやり方だったと思う。

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