うらんぼんの夜


 閉鎖的で、排他的、そこら中に地蔵があり、人々はただ祈る。
そんな田舎を嫌い、早く都会に出たいと願う高校生の奈緒は、東京から越して来た亜矢子と仲良くなる。
嫁いできて20年にもなる奈緒の母でさえよそ者扱いする村の年寄にうんざりしながらも、亜矢子に村でのしきたりを教える奈緒に、周りは警戒を深めていた。
そして盂蘭盆会が来る。

 戦争がはじまった頃、村を出たいと願う少女が地蔵にかけた願いの後で年寄りがたくさん死んでいった。
そんな出来事から、地蔵へよそ者が参ると呪われるというしきたりができ、亜矢子の一家が越してきてからは、不審に思う奈緒を追い詰めるように、年寄りたちは団結していく。
それまでは奈緒への共感しかなかったのに、突然奈緒の感情がひっくり返る。
その変化に追いつかないまま終わるため、何度か読み返した。
狐に化かされたかのようだった。
デビュー作の『よろずのことに気をつけよ』を思い出させる不気味さだった。

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