文政11年暮れ。18で男と駆け落ちした鼻緒屋の娘・佳乃が三年ぶりに照降町に戻ってきた。
どうやって父に詫びようと逡巡していると、通りすがりの顔なじみから、父が病で倒れていると聞く。
慌てて戻った佳乃の前に立ったのは、見習いとして父の弟子になっていた九州の小藩の脱藩武士・周五郎だった。
出戻りと浪人の鼻緒屋は、佳乃の独特なセンスで徐々に評判になっていったが、ある日佳乃の駆け落ちの相手・三郎次が姿を見せたという噂を聞く。
駆け落ちして3年。
三郎次が作った借金のかたに女郎屋へ売られそうになって逃げかえった佳乃だが、鼻緒挿げの職人として生きていくことを決心し、また浪人の周五郎とも息が合ってきて、商いを広げていく様子は、一度地獄を見てもそこから逃げ出せた強さが続いているようで力が沸いてくる。
いかにも訳ありそうな浪人の周五郎だが、秘密があっても頼もしさの方が強く描かれていて、この一家の行く末が楽しみになる。
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