大きな背丈のゆきは、小さいころから奉公していた遊女屋から突然、嫁に行くことになる。
相手は阿蘭陀料理を作る料理人。
進められるまま嫁ぎ、やがて子も生まれるが、夫の丈吉は無口で何も教えてくれない。
それでもだんだんと自分の店を出し、大きくなり、大阪に出て、やがて政府からの客ももてなす大店となっていく。
日本初の西洋料理店を出した、草野丈吉に、生涯にわたり添ったゆきの物語。
誰も客が来ない貧乏だった頃から、大成功を収めてもまだ足りないと働く丈吉に、どこまでも寄り添った妻のゆき。
外に女を作られて腹を立てる様子、子供にむける愛情、店でのやりがいなど、細かい心の動きまでじっくりと書かれていて読み飛ばせない。
時々入るつぶやきがとても端的でおもしろいし、少しも飽きなかった。
最後は老いて思い出を攫いながらの毎日が、目が覚める直前に見た夢のようでほっこりするが、この終わり方は他でもあった気がする。
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