御松茸騒動


2017年05月23日 読了
 尾張藩では、松茸を献上するのが習わし。
そのための役職まであり、松茸のとれる山には庶民は出入り禁止となっていた。
 江戸で育ち、算術が得意な小四郎は、上司の無能さに呆れ、侮り、蔑みながらも、出世のためにせっせと仕事をこなす日々。
 ところがある日、小四郎は藩元の松茸同心に任命される。

 有能なはずの自分がなぜ、と腐りつつも松茸や山に触れるうち、藩の借財の元である松茸の不作をなんとかしようと心が変わる。
ちょっとコメディチックで箸休め的な話かと思いきや、いつの間にか引き込まれてしまった。苦労が報われた時のうれしさはさらりとしか書かれていないのに後を引く。

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花咲小路三丁目のナイト


2017年05月22日 読了
 昔からの顔なじみがほとんどで、皆がそれぞれに皆を思う町。
そこに子供の頃住んでいた望が戻ってきて、伯父の営む深夜営業店<喫茶ナイト>でバイトすることになった。
商店街で起こる人間模様をやさしく描いたシリーズ。

 どんな設定でどんなシチュエーションでもやっぱり小路幸也の話は同じ雰囲気。
どれほど辛い出来事やヒドイことに出くわそうとも、優しく静かで、必ずハッピーエンドとなる。
安心して読めるけど、読後感も同じ。

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マル暴甘糟


2017年05月20日 読了
 北綾瀬署刑事組織犯罪対策課の甘糟。
乱暴なことが大嫌いで、毎日いやいやながらマル暴の者たちと接している。
そんなある日、多嘉原連合の下っ端構成員・ゲンが殴り殺された。
甘糟たちは、防犯カメラに写っていた不審な車を追う。

 暴力団と乱暴な先輩たちの間で毎日冷や汗をかきながらも、実は肝が据わっている甘糟。会話がメインの文体でスラスラ読める。
そして人物が混乱することもないので状況が想像しやすい。
立場は違うが気が合う男たちのやりとりが楽しい。

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横濱つんてんらいら


2017年05月17日 読了
 第八回角川春樹小説賞受賞作。
明治初期。異人さんがたくさん行き交う横浜で、海産物問屋の四女・すずは車引きの幼馴染・才蔵や、カメラマンのモーリスさん達と賑やかな毎日を過ごしていた。
ある日、一番の親友である喜代から手紙を預かったすずは、ひったくりに荷物を盗られて困っていたところを清国人の劉に助けられる。

 明治の華やかな街並みや異人の麗しさの中に、昔から続く悪癖と新しい毒が入り乱れる。
すずの軽い足取りのような語り口もあるのに、所々くどく重い言い回しが混じり、印象が一貫しないので読みにくいが、序章を改めて読み直しては想像を膨らます。

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あずかりやさん 桐島くんの青春


2017年05月12日 読了
 とある商店街にひっそり営業しているあずかりやさん「さとう」。
1日100円でなんでも預かってくれる。
今回は店主の桐島のこれまでの話がメイン。

 メインといいながら、桐島の話より店にある物たちの話がメインのよう。
オルゴールの話はただ一つ心に残るが、他はいまいちで、読み終えてもすっきりせず、後味もなく、すぐに忘れてしまう。

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先生のお庭番


2017年05月11日 読了
 長崎の出島。
そこで医者として任務に就いていたシーボルトの薬草園をまかされることになった熊吉。
そこで知恵と努力でなんとか園丁としての力をつけていき、混乱の時代を出島で経験することになる。

 偶然シーボルトの話が続いたが、こちらの方が断然おもしろい。
シーボルトと妻の滝の性格の違いも興味深い。
そして地図の事件。
同じ部分をきりとった話を比較していくのも面白かった。

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先生のお庭番 (徳間文庫) [ 朝井まかて ]
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オランダ宿の娘


2017年05月09日 読了
 オランダから幕府への使節団が泊まる宿「長崎屋」。
そこの娘である”るん”と美鶴は、自分たちの家を誇りに思い、オランダからの使節達との交流を楽しんでいた。
 ある時、シーボルトの求めた品をめぐり、何人もを巻き込む大事件となっていった。

 淡々と出来事を並べ、感情を押し込めるような文体で大きな出来事をなぞる。
だが、辛さゆえに感情を押し殺しているというよりはうわべをなぞっているように感じ、教科書のような、どこに重点を置いているのかわかりにくいものになっていた。結局あまり印象に残らないものになり、すぐに忘れてしまう。

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オランダ宿の娘 (ハヤカワ・ミステリワールド) [ 葉室麟 ]
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夢幻花


2017年05月05日 読了
 花を愛でて暮らしていた老人が殺された。
第一発見者の孫娘・梨乃は、祖父の庭から消えていた鉢植えに気付く。
それは祖父が生前、「特別な花」だと言っていた鉢だった。

 どこへたどり着くのか予想できず、朝顔の不思議さにも興味がわく。
知り合いとなった蒼太の兄・要介の胡散臭さには違和感があったけど、面白く読めた。負の遺産を引き受ける者たちの、世代を超えた生き様。

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実さえ花さえ


2017年04月25日 読了
 種苗屋「なずな屋」を営む、新次とおりん夫婦。
植物を愛でるのがなによりの生きがいである新次と、お針や手習いの師匠をしていたおりんが、互いを思いやり優しく懸命に生きる姿を描く。

 すらすらと読める割にじっくりと考えさせる内容で、読み終えると今に続く「花」の登場にほっこりとし、また人の死にしんみりする。

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奇縁七景


2017年04月22日 読了
 ジワリとしみてくる恐怖を描く七つの話。
子供たちが出会った気味の悪い老婆、占いを一切信じないと公言したおかげで占いに苦しめられた男、一つの事だけに執着して視野が狭くなったおかげで様々なものを失った主婦、そして個別の話を少しづつ繋げた最終話。

 ホラーとしての色が強い話から、だんだん柔らかになるために読後感は緩和されていく。
それぞれは強い嫌悪や恐怖を感じさせるが、不思議と読み終えたら消えている。
すっかり忘れるくらいの軽さ。

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