せどりの女王


 47才、底辺からせどりで50億の資産を持つまでになりあがった女、夕映野遠火。
ブランド物の中古品を買い、キレイにしてから高く売るせどりで大金を稼いだ女として今日も配信しながらバーキンをプレゼントする。
遠火の会社「ブランゴール」という会社は、これから上場めざしているのだが、社長の遠火が突如、失踪する。
そしてインスタライブで突如、「わたし、ずっと殺したい奴がいる」と発言し、自分の人生を壊してきたかもしれない相手の復讐を誓う。
遠火はなにをしようとしているのか。
一緒に会社を興してきた仲間は冷や汗をかきながら遠火を探し回る。

 会社がとうとう上場するという段になって、誰にも分らないことをしでかす。
最初のテンションの高い配信用ノリに置いていかれたような気分になるが、遠火の思惑が分からず困惑する仲間と一緒の気持ちで遠火を見守ってしまう。
遠火が次に何をやらかすのか、興味はずっと続いた。

お稲荷さまの謎解き帖


 第46回小説推理新人賞受賞作。
稲荷神となって三百年。誉人」として選ばれた人間の願いを叶えるため、日々神社で人々の願いに耳を傾けている。
今回やってきた誉人の女は、病におかされ余命わずかにもかかわらず、「どうか私が殺されますように」と願った。
ただ願いをかなえるだけではなく、誉人なぜそれを願うのか、きちんと判断して叶えないといけない。
人は言わない事も多く、それを見極めるために稲荷神は人に化けて事情を探っていく。

 落ちこぼれの神が、天に帰れるように100人の誉人の願いを聞かなければならない。
しかし人の気持ちがイマイチわからない稲荷神は頓珍漢な事をしたりもする。
近くの弁財天と協力して願いをかなえようと奮闘するうちに大事だと思えるものを見つけていく。
ちょっとずれた稲荷神と、それぞれの眷属である狐と白蛇のやり取りがかわいい。

豆は煮えたか


 深川佐賀町の水茶屋「ささげや」の女将・お玉。
彼女には裏の生業がある。それは人の掌から「人生の束の間が観える」というもの。
看板も挙げておらず、宣伝もしてはいないのに、口コミで信用できる人が時々訪れては、将来を占っていく。
そんなお玉と出会う人の中には、同じように勘が鋭かったり人が気づかぬことをよく観察していたりする者がいつの間にか集まっていた。

 ちょっと変わった特技を持つお玉。
お玉の噂が易者たちを不安にさせたりもするが、総じて悪意を持つものは近寄ってこない。
いつしか店を譲れるほど信用を寄せる者もでき、先行きを案じていたのが嘘のような幸せもやってきて、穏やかな気分で終われる。

ぎんなみ商店街の事件簿 Brother編


 ぎんなみ店街で起きた不穏な事件に四兄弟が挑む。
シスター編で起こった事件を違う目線で追う兄弟。
元太・福太・学太・良太の兄弟で母は早くに亡くなり父は海外赴任中。
同じ事件が全く違う真実にたどり着いていた。

 姉妹編よりも兄弟の個性が出ていて面白い。
違った目線で見れば違う真実にたどり着くのが不思議。

探偵小石は恋しない


 小石探偵事務所の代表でミステリオタクの小石は、名探偵のように密室やトリックを解いて事件を解決することに憧れていた。
しかしやってくるのは浮気調査ばかり。
なぜなら小石は人の色恋に関しては病的に得意だからだ。
そこで持ち込まれる依頼をいくつかこなすうち、もう一人の探偵である蓮杖と遭遇する思いもよらない事件。
それは10年前、蓮杖が中学の頃の事件とつながっていた。

 女子高生から持ち込まれた彼氏の素行調査、事実婚の夫婦からそれぞれ依頼された浮気調査など、ちょっと変わった理由が込められた事件を解くうち、小石と蓮杖の10年前の出会いにさかのぼっていく。
突然変わる舞台に驚くが、すべて繋がっていた。
でもいろんな要素を詰め込みすぎて混乱もした。

雛鳥は夜に羽ばたく


 中野のスナックで働いていた陽菜子。
亡き親友の娘でなんびょうを抱えた美玖のために昼も夜も働いていたが、同棲している婚約者に浮気されてしまう。
相手の女の名は、銀座の頂点に君臨する絶対女王・佐奈といった。
怒りのあまり佐奈のいる高級クラブへと乗り込んだ陽菜子は、そのきらびやかな世界に飛び込んでいく。

 銀座のクラブでトップの佐奈に復讐するため、陽菜子は身も心も改造していく。
そして心を殺して佐奈に地獄を見せると誓う。
その変貌ぶりは鬼気迫るものがあった。

遠の眠りの


 大正末期、貧しい農家に生まれた絵子は、本を読むのが好きだった。
旅籠をしている裕福な家の子の本を借りては読んでいたが、ある日父と喧嘩をして家を追い出される。
絹糸を織る女工として働いていたが、市内に初めて開業した百貨店「えびす屋」を覗きに行っていた時に支配人と出会い「えびす屋」で「お話係」として雇ってもらえることになった。
そこで出会ったキヨという娘役の子と仲良くなるが、キヨには秘密があった。

 貧しい生活から抜け出し、自分の力で生きていこうとする絵子の、少女から娘へと成長する姿を描く。
いくつかの仕事をし、そこで出会う人たちとの交流も新鮮。
そしてキヨとの出会い。
絵子の、流されながらも自分で選びとる生き方が、静かな文体で大きな事件があるわけではないのに続きが気になって止まらなかった。

マカロンはマカロン ビストロ・パ・マル・シリーズ


 下町の小さなフレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マル。
フランスのあちこちで料理の腕を磨いた三舟シェフの料理はもちろん絶品だが、名探偵でもあった。
今日も、そこへやってくる客たちの小さな憂いや謎を解く。

 従業員が女性のみの新しい店にきたパティシエが急に姿を消した理由も、蝶ネクタイが似合う素敵な大学教師が経験した悲しい別れの訳も、豚足をめぐる少年と母親の再婚相手との物語も。
どれも静かに語り掛けながら客たちの心をほどいていく。
フランス料理の店だけあって、フランスの習慣や料理の謂れなどもあって楽しい知識がたくさん。
料理も美味しそうだった。

おりせ人形帖


 魂が宿った人形たちの声が聞こえる不思議な力があるおりせ。
おりせは小さいころから人形の声を聴くことができた。
女では人形師に慣れないと言われ、婿を取るしかないとわかってはいても、気持ちは結婚などしたくない。
そんなおりせが人形たちの声を聴き、人形にも人にも気持ちを繫げていく。

 このところ手に取る本はなぜか人ならぬものの声が聞こえる主人公の話が多い。
今度のおりせは人形に取り付いた何者かの魂との会話。
でもどの人形も生きている人を攻撃しようという気持ちはなく、忘れている名前を思い出したい、幼くして死んでしまったけど母の側にいたいという穏やかな望み。
そのせいかずっと優しい雰囲気で穏やかな気持ちで読み進められた。

やっぱり犬は知っている


 警察病院で働くファシリティドッグのピーボ。
今日も死が近い犯罪者の側で、秘密を聞き出す。
でもそれだけじゃない。猟奇的殺人者を察知したり、万引き犯をかぎ分けたりと今日も忙しい。

 人の気持ちを感じる能力に優れたピーポ。
病気の子供に寄り添ったりもするし、よからぬことを企む人には緊張して、その相棒である笠門巡査部長に知らせる。
その能力は警察内でも有名だが、表向きの仕事じゃない部分の暗さにいつもドキッとする。
でもその優しさと美しい毛並みで柔らかな印象だけが残る不思議な話。