明日の色


2015年08月03日 読了
 仕事の失敗のせいで借金を追い、妻と子供に逃げられ、仕事もなくした松橋吾郎は、ホームレスを集めた低額宿泊所の施設長をしていた。
そこで出会った一人の若者の絵を見てから、吾郎はギャラリーを開くことを決意。

 そこそこなんでもこなし、割と前向きだけど結構適当な主人公。
悪いこともするけどお人好しなところがうまく出ていて、吾郎への嫌悪感はどんどん消える。
ご近所トラブルや権力からの妨害などに悩みつつも、思い付きと行動力であちこち丸く収まっていく様子は見ていて楽しかった。元気が出る。

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バチカン奇跡調査官 独房の探偵


2015年07月14日 読了
 天才的な頭脳が悪魔の所業をなしとげる。その少年・ローレン・ディルーカは、13歳で独房に入れられていた。警察に協力し、本人の知らぬ間に自分に協力させながら、すべては計算されていく。

 ローレンが平賀の友人になる前の話や、魔女と畏れられた人の手記に興味を持ち、作家希望の女性と共に『魔女のスープ』を再現させようとしたロベルトと平賀の話など、いくつかの短編集。
 一つ一つ細かく検証していく平賀の科学的な説明が興味深い。

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八万遠


2015年06月26日 読了
上王が統べる島国「八万遠」は、いくつかの州に分かれていた。
それぞれの州で小さな争いはあれど、おおむね平和な世が流れていた頃、一つの州で豪胆な長男が謀反を起こし、弟を切り殺し、父を幽閉した。
まるで平和に飽いたかのような所業から始まる、八万遠全土を巻き込む嵐。

 州ごとの風土や信仰が解り易く区別されていて、知っている地名はあっても全く違う土地の事なのに馴染みやすい。
これで終わりというよりこれから物語が始まるかのような終わり方で、まだ序章ではないかと思えるほど。続きが気になる。

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さざなみの国


2015年06月11日 読了
 商人とすら顔をあわせずに売り買いをし、地図にも載ってない。
そんな村で生まれた「さざなみ」は、村の滅亡を悟った村人たちに救いの知恵を探してくるようにと村を出された。
 旅に出たさざなみは町に出、父親の家族や許嫁、男勝りな王女と出会い、自分の生きる意味を知る。
 
 隠れた村には秘密があるのだが、さざなみが主人公だと思っていた物語は途中で意味を変える。ほんの数行で。
淡々と語られるために特別な感情移入がなく、そのせいか遠い異国の昔話のようで不思議な魅力があった。

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稽古長屋 音わざ吹き寄せ


2015年05月18日 読了
 三味線の師匠をしているお久は、足を悪くするまで芝居小屋で女形をやっていた兄と二人で稽古屋をやっている。
そこへおさんどんのお光と猫の小太郎を加え、穏やかな日々を過ごしていた。

 稽古のお客やお世話になった芝居の師匠らが、お久たちの毎日を忙しくする。
やがて兄の足や出生のことにまで飛び火し、生きていると必ずとこかで起こる災いと向き合わなければならなくなる。

 それぞれの気持ちが丁寧に書かれていて、どんなことも他人事じゃない気になってくる。

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ふくろう


2015年05月01日 読了
 伴鍋次郎は、妻が懐妊し、さらには西丸書院番士となることも決まり、幸せをかみしめていた。
しかし、妻と共に水天宮へ詣でた帰り、立ち寄った茶店でおかしな老人と出会ったために鍋次郎の未来は不安に塗り込められる。

 やがて明かされる自分の出自。
父が受けた陰湿ないじめを知り、負の感情だけが大きくなるのが苦しい。
その気持ちをどうしようかと迷いながらも、鍋次郎が向かう先にはちゃんと安心できる結末があった。
後味の悪いいじめが後を引かなくてほっとする。

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ふくろう [ 梶よう子 ]
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闇から届く命


2015年04月28日 読了
 助産師になって6年目の有田美歩は、いろいろ問題もあるけどいい仲間に恵まれた職場で、忙しく働いていた。
 そんなある日、運ばれてきた飛び込みの妊婦の名前を見た医師がおかしな態度を見せる。

 羊水検査の結果に動揺する夫婦や、新生児室から子供を運び出す看護師長など、関わる人たちの事情は様々で。
そんな中で起こる、病院としての大きな不祥事。

 現場の慌ただしさや問題点、最後にきっちりサスペンスまで含んで、読みやすいわりに読み応えもあった。

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闇から届く命 [ 藤岡陽子 ]
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旅屋おかえり


2015年04月28日 読了
 元アイドルの丘えりか・通称『おかえり』は、今は旅番組を1本持っているだけの売れないタレント。
しかしその番組が、ちょっとした滑舌の悪さによる誤解で打ち切りに!
 
 起死回生に向けて走り回る社長とおかえり。
そこへ、娘からの切実な願いを受けた母がやってきたことをきっかけに、おかえりは旅代行屋を始めることに。

 タイトルも表紙も地味で、内容も想像できず、全く期待せずに手に取った本。
でもするすると読めて泣かされてしまった。
旅に出たことがある人なら、きっとどこかを思い浮かべるだろう。

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旅屋おかえり (集英社文庫) [ 原田マハ ]
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無花果の実のなるころに


2015年04月26日 読了
 父の転勤についていかずに神楽坂の祖母と暮らすことを決めた中学二年生の望。
芸者をしていた祖母のお蔦さんは、面倒くさがりで気が強いのに人望がある。
そんなお蔦さんと、神楽坂に暮らす人たちと一緒に、町で起こる出来事を綴った短編集。

 お蔦さんの人柄が良く、すごく頼りになる。
町の困った出来事や、若者の行き過ぎた悪戯などを見守り、叱る。
吉永 南央の『紅雲町』シリーズと似た雰囲気。
2作目を先に読んでしまったが、そちらよりもスカッとする読み応え。

金魚鉢の夏


2015年04月22日 読了
 戦後、今とは違う発展をした日本といった設定の、とある田舎の福祉施設で、老婆が転落して死んだ。
元刑事の幸祐が捜査を委託され、ちょうど夏休みで帰省している孫娘と共に施設へ向かう。
 ただの老人の転落死と思っていたことが、なんとなく長居しているうちに色んなことがわかってくる。

 大胆な政策で不思議な発展をした日本というのがとても面白く、生きる人々は変わらないのにここまで異世界になるのかと驚かされた。税金を上げるだけではなく、こんな思い切ったことをやってみれば、今の日本はどうなるだろうと考えながら読んでいた。

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金魚鉢の夏 [ 樋口有介 ]
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