甘いもんでもおひとつ


2015年04月07日 読了
 天才肌の父が作った菓子屋を伯父に取られ、身一つで追い出された兄妹で営む菓子屋『藍千堂』。
小さい店ながらも繁盛し、事あるごとに言いがかりをつけてくる伯父と対峙しつつ、とびきりのお菓子を作る。

 身内の人間関係に困らされながらも、人々に喜んでもらえる菓子を作り続ける兄弟。
最後には伯父との確執が語られ、どちらも意地を張りつつそこは身内で、なんとなく好敵手になる。
色とりどりの菓子さながら、いろんな感情が湧き出てきて、さらに美しい菓子も食べたくなり、そして和菓子のほっこりとした後味が残るような読後感。
表紙は地味だがサブタイトルは美しいのも仕掛けか。

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悪足掻きの跡始末 厄介弥三郎


2015年03月26日 読了
 旗本都築孝蔵厄介・弥三郎。
兄の家族に一生厄介になって生きるか、立身して己の力で生きるか。

 自由を求めた弥三郎は、運がなく、仕事を見つけてどうにか嫁取りができたというのに、すぐにすべてを失ってしまう。
報われない結末だが悲壮感はなく、自分を見つめ続けて生きた弥三郎は、充実した人生だったのではないかと思える。

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小旋風の夢絃


2015年03月22日 読了
 盗掘で生計を立てている男に拾われて墓荒らしをしていた十五歳の少年・小旋風(しょうせんぷう)は、ある日美しい少女の墓で一つの琴を見つける。
ところがその琴を掴んで脱出しようとしたとき、落盤事故で養父は死んでしまい、自由になった小旋風は琴を売って貧困から抜け出そうと、様々な策を練る。

 いつしか国のトップを決める争いに、その琴と共に巻き込まれる小旋風。
小柄で身軽という設定の小旋風にぴったりの軽やかな語り口で、なじみのない名前や表現などに流れを止められることなく読めた。
 最後の大勝負にはもう少し情景描写があっても良かったなと思うけど、名前の通りつむじ風のように終わる。
 ただ、結局その琴の事、生きた死体である少女の事、それにそっくりの猛縶の外見については謎のままで、読み終えた後も不思議な余韻が残る。

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田舎の刑事の好敵手


2015年03月17日 読了
 主人公である黒川鈴木巡査部長のいる警察署では、今日も間の抜けたトラブルで問題だらけ。
そんな田舎の警察署を視察しに、県警本部より首席監察官が視察に来るという知らせが入り、所内はパニックになる。
 でも実はこの首席監察官、黒川刑事の高校時代のライバルだったという人物であり。。。

 久しぶりにこのキャラクターたちに会い、とても癒された。
突如現れる独特の表現に思わず2度見し、登場人物の表情を想像して笑えたりいたたまれなくなったり、、、。
 もちろん推理もあるけど、笑いがメインの不思議なミステリ。
総じて読後感は良い。

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ラスト・ワルツ


2015年02月25日 読了
 スパイ養成組織”D機関”のモットーは、「何が何でも生きて帰れ」。
そんな彼らの活躍短編集。

 3つの話の中では、「舞踏会の夜」が一番スマートで記憶に残る。
作中一度も名前が出てこない”誰でもない”男。
それが誰なのかは明らかだが、まるで表紙のように、いつも後ろ姿しか見られないようなもどかしさが恋しさになる気持ちがよくわかる。

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サナキの森


2015年02月18日 読了
 売れない小説家だった祖父が亡くなり、遺品を整理していた27歳の紅。
その時見つけた祖父の本には、祖父の最後のお願いが薄い手紙として挟まれていた。本棚の一番上の、いちばん端にさしてあった一冊の本。

『冥婚』を題材にして祖父が描いた小説が、本当はかつて起こった事件を描いたものだと気づいてから、紅はその真相が気になって仕方がない。
舞台となった遠野市に行き、祖父のお願いとともに80年前の出来事を探る。

 冥婚はあちこちで行われていた儀式だが、その禍々しさゆえに色んな想像が掻き立てられる。
結末はありふれているし、物語の流れを止める途中の砕けすぎた表現には違和感もあるし、陣野せんせーと言われる人物が中途半端すぎて最後まで納得いかないけど、祖父の時代の出来事にはとても引き込まれた。

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マル合の下僕


2015年02月03日 読了
 高学歴なのに大学の非常勤講師で月給10万ちょっとのワーキングプア。
しかも育児放棄された姉の子供の面倒を見ることになってさらに貧乏な主人公・瓶子貴宣。
大学の正規社員に少しでも成り上がろうとあがいているが、なにぶんここはカネとコネが生きる世界。

 始めはタイトルの意味も分からず、さらに愚痴と悪口ばかりでうんざりしたが、しだいに貴宣の熱意が伝わり、引き込まれる。
淡々とただ流れをたどるだけの文章なのに、それがつながると不思議とスピードが上がる。
 貴宣のやる、自分を陥れた相手への仕返しさえも清々しく思える。

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マル合の下僕 [ 高殿円 ]
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壁と孔雀


2015年01月14日 読了
 警視庁SPの土壁英朗は、警護中に撃たれてしばらく休暇をとることになった。
そしてこの機会に、子供の頃別れて以来の母親の墓参りに行こうと思い立つ。
 彼の母の実家である北海道の田舎、町の名家であったその家には、英朗の異父弟がいた。

 その町へたどり着いた時から、彼の計画された運命は動き出す。
何年も秘められてきた秘密が、その家を守り、傷つけてきたことに気付いた時、英朗はどう思うか。
いつもよりもちょっと勇ましい主人公。

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壁と孔雀 (ハヤカワ文庫JA) [ 小路 幸也 ]
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忘れ物が届きます


2014年12月23日 読了
 もう何年も前の、あの事件の時、実は。。。
古い思い出の中、とっくに解決した事件や問題が、ふとしたことで揺り起こされる短編集。

 もう何年も前の出来事だからか、語る者たちの口調は総じて優しい。
どうしても守りたいものだったり、約束だったりが、次第に解き明かされ、結末の一歩手前で終わる。
その後の想像と余韻にしばらく浸れる一冊。

 この作者の今までの本とは印象が違い、静かで落ち着いた雰囲気。

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忘れ物が届きます [ 大崎梢 ]
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ばけもの好む中将 参 天狗の神隠し


2014年12月21日 読了
 変わり者の中将に気に入られ、怪しげな噂のあるところへは必ず連れていかれる小心者の主人公・宗孝。
今度は、12人いる姉のうちの一人が山中で「踊る茸の精」を見たと聞き、紅葉見物も兼ねて現地を訪れることにした二人。

 今回は短編ながら少しづつ繋がっており、不思議さというより謎が大きくなっている。
12人もいる姉たちの個性も、だんだんと描かれてきており、面白さが増してきた。
そして毎回、鮮やかな表紙がとても綺麗で目を奪われる。
想像するだけでかわいい「キノコの物の怪」が見てみたくなる。

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ばけもの好む中将(3) 天狗の神隠し (集英社文庫) [ 瀬川貴次 ]
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