おまかせハウスの人々


2010年08月25日 読了
 人工知能の研究を目的とした子供型ロボットに心理を学ばせ、ヒトの表情や声のトーンを察知して相手の心を推し量ったり、ナノマシーンを体に入れて治療やダイエットをしたり、ほとんどすべての家事を代行してくれる家だったり。

 近未来の日本、色々な技術で今よりもずっと暮らしやすかったりするはずなのに、困惑も悩みも解決法まで、今とすっかり同じ。
そんな皮肉めいた哀しみが淡々と語られる。

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ハナシにならん!―笑酔亭梅寿謎解噺2


2010年08月24日 読了
 不良が咄家に弟子入りした。
1年がたっても下っ端で、理不尽な師匠も相変わらず。

 サクサクと進み、読みやすい。
馴染んだ関西弁がメインだから、ニュアンスやスピード感が心地よい。
 もちろん落語を知らなくても充分楽しめた。

 ありふれた感はあるものの、若者らしい怖いもの知らずの主人公が楽しくて、「伝統芸能の世界でも、いずれこんな奴が出てくるかもなぁ」と思わせる。

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仔羊の巣


2010年08月21日 読了
 ホームズとワトソンの鳥井と坂木。
彼らの世界は少しずつ広がる。

 もうすっかり認知された二人の関係だが、今回は鳥井の弱い部分はほとんどなかった。でもそれは、鳥井の鳥井らしさが少しなくなってしまったようで寂しい。

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青空の卵


2010年08月20日 読了
 引きこもりの友人・鳥井を、出来るだけ外に連れ出そうとして、いろんな問題を持ち込む主人公・坂木。

 いつもは口も態度も悪くて愛想もない鳥井だが、その洞察力は引きこもっている人とは思えないほど「ヒト」を読み解いていく。

 そんな鳥井が、坂木の感情の揺れに呼応して自分も揺さぶられてしまう危うさが、なんだかとても愛しくなる。
一瞬のうちに子供の口調になり、さっきまでの冷たいほどの理知的な顔がぐちゃぐちゃに崩れる様は、滑稽だけど人ごとじゃない気がする。怖いけれど目が離せない。

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植物図鑑


2010年08月16日 読了
 ある日、男の子を拾った。
マンガでもあったような設定。出てくるのは雑草。

 道草の話ばかりで飽きが来た頃、やっと恋の話がやってくる。
そして作者お得意の甘々な描写。
 男では絶対思いつかないやり方、少女マンガかと思える内容で少し胸やけしそうだが、この人は絶対最後はハッピーエンドだとわかっているから読み続けられる。
 まぁ実際こんなことされたらもうダメだろうなって感じ。女の子の妄想が走りまくってる。
 その分主人公の魅力は他の作品にくらべてかなり低い気がして残念。

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聖域


2010年08月12日 読了
 大学の山岳部の頃からのパートナー・安西が、難易度の低い塩尻岳で滑落した。
 どうしてもその事実が認められず、一人事実を掴もうと動き始める主人公。山岳ミステリ。

 これまで読んできたこの人の作品とは全く違った作風で、本当に同じ人なのかと疑ってしまうくらいだった。
 山のことは全く知らないので、道具類の名前などわからないものだらけだったが、そんなことは気にさせない。
 最後は観念的なところもあったがうまくプラスへ導いた。

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アブダラと空飛ぶ絨毯―ハウルの動く城〈2〉


2010年08月12日 読了
 絨毯商人のアブダラは、ある日空飛ぶ絨毯を買う。それを使い毎夜出会う美しい姫と恋に落ちたアブダラは、駆け落ちする直前で魔神に姫をさらわれてしまう。。。

 あれ、ハウルが出てこない。まだ出ない。出ない出ない。。。
と、思いつつ読み進め、いつの間にはアブダラの恋物語として楽しんでいる頃、ハウルと結婚したソフィーが登場する。
 そして実はハウルもカルシファーも側にいた。

 ゆっくり流れる砂漠の時間のような前半と、喜びをさえずる鳥たちがさわがしいオアシスにいるような後半。
 
 普段、私はほかの人の書評は読まないけれど、洋書だった場合は訳者のだけは読む。作者の国の風習や言い回しなど、独特の流れを教えてくれる場合が多いから。やっぱり原書で読めればもっとおもしろいんだろうなぁ。。。

極北クレイマー


2010年08月08日 読了
 財政破綻目前の極北市。そこにやってきた医師・今中はあまりの実情にがく然とする。

 極北の病院が舞台というので、てっきりジェネラル・速水の話かと思っていたら違った。小さなコミュニティでいつの間にか出来上がった不文律がまかり通る場所で、外からの参入はさぞ居心地が悪いだろう。前半はまさにその居心地の悪さがこれでもかと描きだされ、今中と同様にこちらもげんなりする。

 海堂の作品はいつも後半で走り出す。やっと個々の役割が見えてき、読む速度も増す。

 今回は白鳥ではなく姫宮が一陣の風となった。

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ヨコハマB-side


2010年08月07日 読了
 横浜駅西口繁華街・ビブレ前広場に集う人々の、「ちょっとニュース」な出来事。

 短編でそれぞれメンバーは違うが、どれも同じ町にいる彼ら。繋がりはほとんどなく、すべてが伏線といえる。
それでも、本筋といえるかどうかわからないくらいの愉快犯がすべてに登場し、あっけないほどの解決でさらりと終わる。

 「インディゴの夜」のような存在感はなく、物足りない。

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魔法使いハウルと火の悪魔―ハウルの動く城〈1〉


2010年08月06日 読了
 映画を見てから、原作を読んでみたいと探した本。
児童書で童話のため、登場人物の性格が誇張されている。
 ソフィーは「長女は成功するはずがない」と思い込んでいるし、ハウルのひねくれも徹底している。
 執拗なほどのその主張は、「思い込みに惑わされていることに気づいて!」というメッセージであるらしい。童話ならではなんだろうか。
 作者はJ.R.R.トールキンに師事したという。

 映画とはかなりイメージが変わるが、これは読むたびに何か気付けそう。