クローバー・リーフをもう一杯 今宵、謎解きバー「三号館」へ


2015年02月05日 読了
 京都の大学へ入学した主人公の遠近綸人は、同じサークルの青河さんに夢中。
彼女の気を引きたくて右往左往するうちに、いろんな謎へとたどり着く。

 そしてそんな時、大学のどこかでこっそり営業している、お代は謎という不思議なバー「三号館」へ迷い込む。

 謎があるときだけ見つかるバーで、美人マスターの作るカクテルを飲めばたちまち謎は解決するというが、どれも謎とはいいがたい。
ただそこにいなかったから知らなかっただけ、といった程度。
ちょっと理屈っぽく「錯覚」を利用したりしているが、全部思い込みと錯覚で作った謎だった。
ありふれているというより、飲み会で披露する雑談くらいの、ある日出くわしたちょっとした面白い話といった感じ。

マル合の下僕


2015年02月03日 読了
 高学歴なのに大学の非常勤講師で月給10万ちょっとのワーキングプア。
しかも育児放棄された姉の子供の面倒を見ることになってさらに貧乏な主人公・瓶子貴宣。
大学の正規社員に少しでも成り上がろうとあがいているが、なにぶんここはカネとコネが生きる世界。

 始めはタイトルの意味も分からず、さらに愚痴と悪口ばかりでうんざりしたが、しだいに貴宣の熱意が伝わり、引き込まれる。
淡々とただ流れをたどるだけの文章なのに、それがつながると不思議とスピードが上がる。
 貴宣のやる、自分を陥れた相手への仕返しさえも清々しく思える。

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青い翅


2015年01月31日 読了
 善如寺は、天才的な版画を作る友人・黒木から、美しい青い翅をもつ蝶の版画を託された。
そして黒木は、姿を消す。

 複製をつくらないと言っていた黒木の青い蝶が、18年たって4枚の複製と共に世に出たとき、善如寺は未だ見つからない黒木の行方も含めて、探偵に調査を依頼した。

 一枚の版画を巡り、18年前の思いを受け継ぐ者たちが誰かのために動く。
それにはどんな思いがあったのかと想像したが、あまりにも軽く書かれていて拍子抜けした。確かに今を生きる力になるほどの出来事なのかもしれないが、そこに重きはおかれていないため、受け取り方も軽くなり、動機として弱いイメージを残してしまう。
 今までの作品とは違った面が見れたが、かえってありふれてしまっていたので残念。

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かぜまち美術館の謎便り


2015年01月28日 読了
 少しづつ鼓動が弱まっているような、さびれゆく町。
その町の美術館館長として赴任してきた父子の身近で、18年前に死んだはずの少年から絵葉書が届いた人たちが困惑する。

 有名な画家の絵を模して書かれた、一目で書き手がわかる絵。
それらからは、18年前の町の人々の思いだけではなく、一人の郵便局員の不気味な行動も見えてくる。

 話の一つ一つが、その頃の出来事と気持ちを解きほぐし、新しい関係を紡いでゆく。
仄暗い過去の事件が見えてくる中、ほのぼのと暖かい父子のやり取りがふわりと空気を換えていて暗くなりすぎない。絵にも興味が持てる。

 これまでの作者の本の中では読みやすいが、それが物足りなく感じる。

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連写 TOKAGE3-特殊遊撃捜査隊


2015年01月26日 読了
 東京都内、コンビニ強盗が連続して起こった。
バイクを使い、目撃者や痕跡をほとんど残さず行われた犯罪に、警察はトカゲの採用を決める。
 
 次の犯行が起こるたび、だんだん規模が大きくなる捜査。
それでも犯人へつながる糸口が見つからない。
そんな時、新聞社の記者があることに気付く。

 本の厚さの割に読みやすい今野敏作品。
今回も淡々と何もわからぬまま進む序盤と、いきなりスピードアップする最後の急展開でだんだん止まらなくなる。
いくつか引っかかる謎は残るが、トカゲのスピード感が楽しい。

亜玖夢博士のマインドサイエンス入門


2015年01月19日 読了
 「相談無料。地獄を見たら亜玖夢へ。」

 こんなチラシを配り歩く、おかしな天才。
知恵ある亜玖夢博士の下に集まってくるのはどこかおかしな奴ばかり。
その中でまだまともだと思われる主人公の少女が、大昔の人が大真面目に研究していた怪しい洗脳や人格交換、遺伝子操作なんかを博士から教えてもらう。
もちろん周りのおかしな人たちはそれを使って金儲けをしようとするからもっとおかしなことに。。。

 ちょっと眉唾ものの科学がどんどんとんでもないことに使われていくから、これはもうマインドサイエンスというよりマッドサイエンス。後味悪いと感じる部分もあるけど、こうやって科学は進化していくのかな。

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旅者の歌 中途の王


2015年01月17日 読了
 獣の姿になってしまった許嫁や兄妹と共に、人の姿を取り戻す方法を探しに旅をする<旅者>となったニィマール。
旅と共に増える戦いと仲間によって、<リョシャ>は世界の果てに向かう。

 今まで自分のいた国では考えられないような文明を持った人たちと出会い、やがて<リョシャ>たちは何もかもが白で覆われた森に迷い込む。

 語り部の注釈が所々に入り、こちらの想像力を助ける。
しかしそれゆえに淡々と進み、大きな岐路も戦いもそれほど危機は感じない。
やっと向かうべき場所がはっきりしてきた一行。
次はとうとう謎が解ける?

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すえずえ


2015年01月17日 読了
 幼馴染の栄吉に縁談が舞い込み、ひと騒動の末、嫁となる娘を決める。
そして若旦那のところにも縁談が舞い込み、離れの者たちはそれぞれの未来を考え始める。

 いつまでも安全なままの離れではいられないかもしれないと思い始める妖たちと、どうも今一つ実感のわかない若旦那。
皆それぞれ変化を感じ始めた時、兄や達が買ってくれた土地に建てた長屋を妖たちの場所にすることにして、若旦那はひとまずの解決としたはずだったが。
 最後に登場した山童が、どうも後味悪い。次へつなげる布石だろうが、若旦那はどう解決するのか。

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壁と孔雀


2015年01月14日 読了
 警視庁SPの土壁英朗は、警護中に撃たれてしばらく休暇をとることになった。
そしてこの機会に、子供の頃別れて以来の母親の墓参りに行こうと思い立つ。
 彼の母の実家である北海道の田舎、町の名家であったその家には、英朗の異父弟がいた。

 その町へたどり着いた時から、彼の計画された運命は動き出す。
何年も秘められてきた秘密が、その家を守り、傷つけてきたことに気付いた時、英朗はどう思うか。
いつもよりもちょっと勇ましい主人公。

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つちくれさん


2015年01月12日 読了
 定年を迎えたその日、長野県警に勤める刑事の福沢は、遺跡の棺から殺されたばかりの死体が見つかったという連絡をうける。
定年したのだからもう関わることはないはずの事件だったが、趣味の考古学のために受講した口座から、事件の当事者と関わることになった。

 この人はファンタジーの印象が強かったため、現代版はなんだか違和感があった。
急にありふれた設定となり、想像を超えた驚きが出てこない。
やっぱりこの人はファンタジーが似合う。

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