戦うハニー


2016年06月17日 読了
 大手保険会社を辞め、夢だった保育士として私立保育園「みつばち園」で働き始めた主人公の星野。
そこは、問題のある親や子供自身を受け入れている、「問題の多い保育園」だった。

 パチンコで稼ぐ母親、ネグレクト、親同士の不倫など、受け入れている子供の家族の問題も多いが、市役所との問題もあり、また保育士個人の問題もある。
園に嫌がらせをしてくるご近所さんの問題から、園の閉鎖に追い込まれそうになったりと最後まで厄介ばかりだが、最後はなんだかあっけなく、これまでの出来事に比べれば苦もなく解決。
山場というには寂しすぎた。

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怪物率


2016年06月15日 読了
 資産家の娘だったはずが、父が死んだために使用人に家から追い出された主人公のウサギ。
野良となったウサギがやっと見つけた住み込みの仕事は、おかしな噂のあるお屋敷だった。
そしてそこで仕えることになったのは、怪物に会うことが最大の目的だという息子のナイトさまで、彼と共に怪物の噂のあるところへと足を運ぶが。

 ホラーのようでコメディな、どこまで受け取っていいのか迷う一冊。
黒猫シリーズを描いている人とはまるで別人のよう。

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睦月童


2016年06月10日 読了
 祖母の故郷から、日本橋の酒問屋に連れてこられた一人の子供。
その子は、人の罪を映す「鏡」という力を持っていた。
 跡取り息子のあまりの放蕩に業を煮やした当主が連れてきたその子・イオによって、良心の呵責に耐え切れず罪を告白する放蕩息子の央介。

 そんな子供と過ごすことになった央介は、江戸で起こる様々な罪人と関わることになるが、やがてイオの力のわけを知ることになり。。

 女だけが持ち、その命は子へ受け継がれるために増えも減りもしない不思議な力を持つ女たち。
人が支配しているようなこの地において、その真理は裏返っていくかもしれないという奇妙な恐怖。
どんなに根絶やしにしようとしてもどこかで生きている生命の強さを感じて空恐ろしくなる。

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睦月童 (PHP文芸文庫) [ 西條 奈加 ]
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誰か


2016年06月08日 読了
 今多コンツェルン会長の個人運転手が、自転車に轢き殺される。
広報室の杉村三郎は、遺族の姉妹から、「亡き父の事を書いた本を作りたい。そしてそれが犯人を捕まえる助けになれば」と相談を受け、引き受けてしまう。

 調べを進めていくうちに、本を出すことに対する熱の込めようが姉妹でかなりの違いがあること、さらにそれは家族の過去につながる大きな秘密に繋がることがわかってくる。

 杉村は、何かがわかるたび、何かに気付くたび、自分が手に入れた幸せをかみしめる。
謙虚だけど、いい人すぎる。姉妹の関係性が見えてくるほどそれは引き立ち、人の暗くて黒い部分をより暗くしていた。

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誰か Somebody (文春文庫) [ 宮部 みゆき ]
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名もなき毒


2016年06月03日 読了
 大企業の広報で採用したアルバイトは、トラブルメーカーだった。
彼女は嘘の履歴を言い、部内をかき回しトラブルを撒き散らす。
そして違う場所では、コンビニで買った飲み物に毒物が混入されていて死人が出ていた。

 関連がなさそうな二つの出来事が、ジワリとしみこむようなスピードで周りの人々を侵す。
物質としての毒だけではなく、嘘という毒、いじめという毒など、人を苛む様々な毒が出てくる。
とても長いが気にならない。

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名もなき毒 (文春文庫) [ 宮部 みゆき ]
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ピース


2016年05月30日 読了
 バラバラ殺人事件が起こる。
元警察官と物静かな青年がやっているスナック「ラザロ」でピアノを弾いていた女も殺され、それは連続殺人事件となった。
しかし捜査は難航し、一向に解決への道が見えてこない。
そのうち3件目の死体が見つかり。。。

 表紙とタイトルの意味がわかる頃、すべてが解決する。
しかし、刑事の坂森が最後に披露する推理は、謎が解けるようでどこか曖昧。
意味深な青年を描いたのは目くらましであっても、スナック「ラザロ」のマスターである八田が怪しいとすぐにわかる。
しかしそれも、八田の巧みな誘導と優れた知恵があればできたはずというだけの説明。
鋭い追及で解き明かしているようで何もしない坂森は、被害者の共通点や八田の仕掛けに気付いた人物と同じとは思えない。ベテラン刑事の割に日和見な最後ががっかりさせる。

 犯行の動機となったピースには説得力があり、印象にも残るが、それ以外はいまいち。

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ピース (中公文庫) [ 樋口有介 ]
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キッズタクシー


2016年05月28日 読了
 シングルマザーでタクシー運転手の千春。
ある日予約していた小学生の男の子がいなくなる。事故か、それとも誘拐か。
捜査が進むうち、千春の15年前の事件を暴く噂が流れ始め。

 千春のほかに、視点を変えて数人の目線から語られているが、それがあまり生きてない。かえって混乱してしまった。
短編が多い作者だからそのあたりの癖かもしれない。
 自分の子供を含め、仕事上で出会う子供たちを理解しようとする千春が懸命すぎて、心が痛む。

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キッズタクシー (文春文庫) [ 吉永 南央 ]
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ガール


2016年05月25日 読了
 働く女性。そしてもう若くない。
そんな女たちの、日々思うこと出会うことを綴る短編集。

 時々、なんだかもやもやする気持ちになるけど、具体的に言葉にできないような事。
「あぁ、あの時こんな気持ちだったのか」と自分でも気づいていなかった違和感を見事に言語化してくれていて、その時の相手にこの本を見せてやりたい気持ちになる。

 ただ、曖昧な不機嫌や違和感だったせいか、読み終わってしまうと残らない。

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ガール [ 奥田英朗 ]
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札幌アンダーソング ラスト・ソング


2016年05月23日 読了
 キュウのドッペルゲンガーが現れた。しかも殺人容疑がかかっている。
窮地に立たされた警察官のキュウ。
調べていくうちに、どうやら山森が仕組んだらしいとわかり、キュウは先輩の根来たちと共に春のところに避難と援助を求めにやってきた。

 どうやら最後の事件。
山森とどんな対決があるのかと期待したが、そこはなんだか児童書の流れ。
殺人という言葉がたくさん出てきて物騒な割にあっけなく幕が下りる。
春や山森という天才を出したなら、もっと頭脳戦を期待してしまう。

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札幌アンダーソング ラスト・ソング (角川文庫) [ 小路 幸也 ]
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アンと青春


2016年05月19日 読了
 デパートの和菓子屋『みつ屋』でバイトをしている主人公の梅本杏子。
シリーズ2作目。仕事にも慣れてきた頃、デパートにやってくる様々なお客様を見る目も変わってくる。
不思議な言い回しをする人に、業界の専用言葉がわからず悩むアン。
周りの空気が一瞬固まるほど子供を叱る親など。
 しかし、そこだけ見れば嫌な客でも、事情を推理していくと見えてくる本質があり、アンは手を貸そうとしてしまう。

 お人好しで、お菓子と関わる謎をひたすら解き明かそうとするアンの姿は一途なようだけど、どこか白けた雰囲気が漂う部分もあり、応援や共感をしにくい。
 所々はおもしろいけど、全体の読後感としては流れに乗り損ねたような気分。

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アンと青春 [ 坂木司 ]
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