室の梅―おろく医者覚え帖


2016年07月16日 読了
 医者の家系に生まれ、自身も医者だが死体専門の美馬正哲と、産婆をやっている妻のお杏。
おろく(死体)が見つかるたび呼ばれる正哲と、誰かが産気づくと呼ばれるお杏という、対照的な仕事の二人が生と死に向き合う。

 夫婦の形はそれぞれで、お互いと自分の仕事に向き合う二人はとても頼もしい。
淡々と進んでいくがとても暖かい気持ちになる。

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デッドマン


2016年07月13日 読了
 麻布十番で頭のない死体が見つかり、新宿で胴体のない死体、そして次は足と手が片方づつ。。。集めると、ちょうど一人分の体ができる。
奇妙な事件が続き、捜査本部が立ち上がるが、一ヶ月たっても一向に手がかりが見えない。
 そんな中、体をつなぎ合わされて生き返った死人であるという人物から警視庁にメールが届く。

 第32回横溝正史ミステリ大賞大賞受賞作。
まっすぐなミステリー。錯乱した性格破綻者の独白で始まるため、オチがなく惑わしたまま終わりそうな雰囲気があったが、それはちゃんと真相に迫る謎となっていて、最後の無茶もしっかりあった。
まっとうできっちりとしたミステリー。

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選ばれし壊れ屋たち


2016年07月08日 読了
 デビューはしたものの、2作目が書けない新人作家の三崎小夜は悩んでいた。
自称クリエイターの元カレや、強烈な個性の漫画家、美人なのに自信がない先輩など、ちょっと壊れた人たちに囲まれて日々悩み続ける。

 突き抜けておかしな人たちが登場する。
彼らを知るたび思わず納得してしまいそうになる小夜だが、洗脳されつつあることにちゃんと気づき、わが身を振り返る。

 でも結局どうなるわけでもなく、ただ目の前のことをやるしかないというだけで、全体としてはいい読後感でもなく、また内容も残らない。

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シュレーダーの階段


2016年07月07日 読了
 突然誘拐され、殺風景な部屋であと2時間で死ぬと言われた。
加奈美はパニックに襲われながらも、もう一つの部屋に閉じ込められた「遠藤」と協力しながらパズルを解く。
 そして一方では、ある女性宅に侵入した少年たち。
部屋を荒らすうち、隠しカメラの存在に気づいて怖気づき、暴力に出ようとする。

 二つの場所での出来事を交互に綴り、最後は繋がるというよくある手。
でもパズルにも人間関係にも魅力はなく、うんざりするほどつまらない。
読む必要なかった。

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スクープのたまご


2016年07月06日 読了
 出版社で働くことを夢見て必死で頑張った就職活動の結果、やっと引っかかった千石社。
入社2年目で配属された「週刊千石」では、毎日調べ物や張り込み、聞き込みにインタビューと、様々な事件の端っこを受け持つ日々。
そんな中、少しずつ関わった仕事が次第につながり、いつしか連続殺人事件のカギを握ることになる。

 緊張の毎日を何とかこなす新人記者の日向子の奮闘。
そこは意地悪な同僚や理不尽な上司がいるわけじゃなく、本当に仕事の大変さを描いている。
色んな人を見て、ひたすら考え、たくさん教えてもらう。
表紙のイメージのまま、駆け回るような展開であっという間に読める。

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牛姫の嫁入り


2016年07月02日 読了
 忍者の派遣をしている三日月村の忍者・コウ。
どんくさい相方の守市と共に任務に就く。
それは、十万石の大名である藤代家の娘・重姫を誘拐してくることだった。

 「誘拐見合い」という風習を使い、女好きのバカ息子に嫁をとろうと企む旗本・加納光政。
コウは予定通り藤代家に忍び込むが、絶世の美女と謳われていた姫が実は牛のように太っていたことを知り、途方にくれる。

 見た目は牛のようだが、世間を知らぬ心はピュアなまま固まり、食べる意味も知らずただ出されたものをひたすら食べる姫を変えていくコウ。
あちこちの面倒が最後はすべていいところに収まるので気持ちよく終われる。

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女學生奇譚


2016年06月29日 読了
 フリーライターの八坂は、オカルト雑誌の編集長からおかしな取材を頼まれる。
それは、「兄が『読むと発狂する本』を残して失踪した。本の真贋と兄の行方を知りたい」という娘からの依頼であった。
そして見せられた不吉なメモ。

 読むと発狂するという本を読み始める八坂。内容を追い、真相を追ううち、これは真実の記録ではないかと思い始め。。。

 1ページ目の警告が怖い。好きな作家だから期待も大きくてすぐ読みたいのに、なぜか本を閉じたくなってしまうくらい怖い。
でも面白くて捕り込まれるように進み、うすら寒い怖さを楽しんだ。
しかし、最後は解決と気づきと奮起でなにやらするりと交わされたような気分。
解決編があるのだろうか。

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女學生奇譚 [ 川瀬七緒 ]
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九十九藤


2016年06月25日 読了
 天涯孤独、継母に売られそうになって逃げてきたお藤は、様々な縁に助けられ、ある日、傾きかけた口入屋の再起を任されることになった。
 昔からの風習や、恵まれない生き方を続けてきた者たちは荒み、諦めの心根を叩き直すことから始めるお藤。
 ある日、江戸中の武家奉公人の上に立ち、畏れられている黒羽の百蔵という男と出会う。

 祖母から受け継いだ気の強さと情の強さ、肝の太さで生き抜いてきたお藤が、気の荒い男たちには思いもよらない方法で生きる術を身に着けさせる。
人との縁には恵まれても、家族には恵まれないお藤だったが、やがて細い糸の様なつながりが生まれ始めるところは、溢れだすような希望が見えた。

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九十九藤(つづらふじ) [ 西條奈加 ]
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土曜はカフェ・チボリで


2016年06月24日 読了
 オーナーが高校生だから、土曜日しか開いていない。
そんな変わったデンマーク料理を出すカフェ・チボリの常連となった客たち。
そこでは、それぞれが体験した不思議な出来事を話し合い、想像し、推理していく。

 アンデルセンの童話になぞらえ、様々な推理が飛び交うが、いくつかの仮説が出て満足するだけの想像で終わる。
あえて真実は明かさずにいるはずが、客たちが危ない目に合ってしまうとそうもいかず。。。
 子供らしい正義感で憤るオーナーに引きずられそうになるが、最後は大人の采配で終わらせる。でも、主人公の意見は寛容や慈悲というよりただの臆病で、それがスッキリしない終わり方となり後味の悪さとなる。

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土曜はカフェ・チボリで [ 内山純 ]
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羊と鋼の森


2016年06月21日 読了
 17歳の時に出会ったピアノの調律師に魅せられ、その道を選び取った主人公の外村。
見習いとなり、色んな調律師やピアノと出会い、成長していく物語。

 人生を決めることになった板鳥との関係は、高殿 円の「上流階級」と似ている。
穏やかで的確な指示、指針となるべき言葉は確実に外村に届き、悩み迷った末に答えを見つける。
 さらりと読めて気持ち良い。でも終わり方がやっつけのよう。
そして、羊はあちこち出てきて馴染み、納得できる出来事も多いが鋼はどこに?

 『田舎の紳士服店のモデルの妻』ではとてもがっかりしたけど、こちらは比較的いい読後感。

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羊と鋼の森 [ 宮下 奈都 ]
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