銀杏手ならい


2018年07月20日 読了
 大銀杏の木が目印の手習い所『銀杏堂』。
嶋村夫婦が二十五年に亘って営んでいたのだが、父が隠居をし、娘の萌が新しく師匠となった。

 手習いにやって来る子供たちとの、微笑ましいやり取り、父が信頼しているが萌にとっては薄汚い中年としか見えない椎葉、そして銀杏の下の捨て子。
萌の心の動きが丁寧に書かれているため感情移入しやすい。
下山(卒業)していく子供たちに寂しさを感じていたら、また次の新しい子供がやってくる。
日々の繰り返しも、成長の早い子供たちと接していると時間の流れがあっという間で楽しく慌ただしいという様子が伝わってくる。

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赤銅の魔女 (紐結びの魔道師1)


2018年07月17日 読了
 湖畔の館で穏やかに暮らしていた紐結びの魔道師リクエンシス。
そこへ、隣国イスリル襲来の知らせが入り、館を捨てて逃げ出すことに。
だがそこへ、悪意に満ちたイスリルの魔道師が、館の庭に眠る邪悪な魂を呼び覚ました。

 紐結びの魔導士がシリーズに。
魔道師でも魔女でも、いろんなバリエーションがあるけど、紐を結び、結び目や紐の撚り方で力を出す魔術は新鮮。
そんな魔道師リクエンシスの、封印していた自分の運命との戦いが始まる。
まだ導入部で、ようやく登場人物がそろったという感じ。
残酷な部分も多いけど、どんどん引き込まれていく。
リクエンシスが紡ぎだす魔術も、この先どんなものが出てくるのか楽しみ。

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紅のアンデッド 法医昆虫学捜査官


2018年07月15日 読了
 東京都内の古民家で、おびただしい血痕と3本の左手の小指が見つかった。
しかしそこに人影はなく、一月たっても被疑者はおろか、被害者すら見つからなかった。
 法医昆虫学者の赤堀は、残された指の一つの腐敗の様子がわずかに違っていたことが気になり、いくつかの実験をする。

 今回は想像するだに恐ろしい現場となり、しかしそこで見つかったウジからは新発見はなく、代わりに他の虫が活躍する。
まさかそんなという結末で驚き、赤堀の受ける傷も大きい。
新しい環境になって新しい登場人物も加わったりして、より混沌とする組織に、赤堀の無邪気さと破天荒さが強い印象を残している。
今回はなんだか後味が悪く、気味の悪い読後感になった。

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葬偽屋に涙はいらない: 高浜セレナと4つの煩悩


2018年07月12日 読了
 偽りの葬儀をして、周りの人間がどうなるのか、何をするのかを知る。
依頼人の理由はそれぞれで、その本心を知り、演出を施す。

 前作も読んだのだが、さっぱり内容を思い出せない。
それなりに濃いキャラクター達だし、面白い趣向で印象深いはずなのに。

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ネメシス〈下〉


2018年07月10日 読了
 太陽にまっすぐ近づいているネメシス。
それは5000年後だが、地球人はすぐにでも避難を始めなければならない。
そんな時、そのネメシスに厄介払いされたユージニアとマルレイネには、不思議なことが起こっていた。

 星に呼ばれたマルレイネ。
そこでやっと自分の居場所を見つけたと思ったのに、突然地球から父がやってくる。
地球にも父にも関心のないマルレイネは、それでも地球を救うために自分のできることをする。
その解決法はいまでは普通になっているけど、これが書かれた当時、世間はどんな感想を持ったのだろう。
今になっても実現されていない技術がたくさん盛り込まれていて、想像力を駆り立てる。

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烏百花 蛍の章 八咫烏外伝


2018年07月08日 読了
 あの時、一方ではこんな事が起こっていた。
衝撃を受けた妃選びの時、雪哉を託した姫、女を捨てて宮中に侍ると決めた女性。

 読んでいくうちに本編での出来事が思い出され、また読み返したくなる。
気になっていたますほの薄の話もあり、短編集ながらとても満足した。
切ない話が多くてしんみりするが、若宮と雪哉の微笑ましい(?)話があるために柔らかい印象で終われる。

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ネメシス〈上〉


2018年07月06日 読了
 2220年。植民衛星ローターの天文学者ユージニアは、雲に囲まれた一つの星を見つけた。するとローターの指導者ピットは、秘密裡に太陽系脱出を計画し、ローターは突然姿を消した。

 太陽系から逃げ出したローター人。しかしその星・ネメシスにはもっと大きな秘密があり、ユージニアの娘と元夫のクライルにも大きな秘密があった。
宇宙をまたにかけた、人類の賭け。登場人物がとにかく魅力的で個性的。
ネメシスのことがわかってくるどころかどんどん疑問が増えていき、止められなくなる。

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16品の殺人メニュー


2018年06月30日 読了
 前菜、スープ、メインからデザートまで、料理のフルコースを殺人メニューの献立で集めた一冊。

 アシモフだけじゃなく、いろんな作家たちの紹介と共に並んだ殺人メニューは、訳者が同じせいか、作者が違うという気がしない。
そして同じような手口もあったりする。
どれかが印象に残るというよりは、すべて通して一連のドラマのよう。
気になる作家を今後探してみよう。

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よっつ屋根の下


2018年06月16日 読了
 勤め先の病院の不正を告発し、地方に飛ばされた父。
東京を離れるのは嫌だと頑なに拒む母。
息子は父に、娘は母についていくことにして、それぞれの生活が始まる。

 家族がバラバラになる危機を、それぞれはどう思い、どう折り合いをつけていくのか。暗い話題が多い割に、しんみりしないでするする読み進められた。
相手の事が決して嫌いではないために悩む。
章ごとに家族それぞれの目線から見た家族が描かれているため、同じ話題でも飽きない。充実した気分で終われた。

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KZ’Deep File 青い真珠は知っている


2018年06月13日 読了
 伊勢志摩の海で30年まえ、青い真珠と1人の海女が消えた。
それ以来、海女の娘は口をきかず、ただ波間に漂う花弁のように暮らしていた。
 
 夏の間、海洋研究所へ行くことになった和彦と、なぜか集まってきた上杉と若武も合流し、消えた真珠と事件の謎を解く決意をする。

 少女の気持ちはわかったからもう少女小説は書かないと言った作者が、今度は少年の気持ちをわかろうとしているのか。
ちょっとこっぱずかしいような出来事もあるが、少年が対象だからだろう。
事件を推理するというより執念で解決した。

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