日月潭の朱い花


 25歳のサチコは、不条理な派遣労働から逃れるように亜熱帯の台湾に渡り、偶然再会した在日コリアンのジュリと、台北の迪化街で暮らしていた。
誕生日の晩、サチコが古物商の革のトランクのなかに日本統治時代の台湾を生きた女学生の日記をみつける。
その日は買わずに帰ったサチコだが、ジュリがプレゼントに買ってくれ、中に入っていた古い日記を見つけた事から二人の生活は一変する。
それは、70年以上前に行方不明になった少女のものだった。

 古い日記を見つけ、その書き手の事が気になり、少女の事を調べ始めた頃は、歴史を調べるくらいの気持ちでいたのに、いつの間にか少女失踪事件につながっていく。
日本と台湾の歴史的な事実による確執も加わり、どこか暗い時代。
日本と台湾をルーツとする二人が辿るのは謎解きの感覚もあって興味が続くが、次第に物騒になっていくあたりで失速。
でも、二人が前向きになっていくので辛いまま終わらなかったので気分よく読み終えられた。

探偵ガリレオ


 自販機の側で夜中に騒いでいた若者の髪が燃え上がり、焼死した。
風呂場で心臓だけ腐った死体、海水浴の最中に突如火柱が立ち上ったり、幽体離脱して殺人事件の容疑者の車を見たという少年、池に浮かんでいたデスマスク。
警視庁捜査一課の草薙俊平が、不可解な事件の謎解きを、旧友の帝都大学理工学部物理学科助教授・湯川学に頼る。

 ドラマで見た話もいくつかあり、どうしても映像が浮かんでしまう。
一つ一つは意外とあっさりした短編で、解明してしまえばすっかり興味を失う湯川が面白かった。
そして不思議な現象のカラクリを素直に楽しめたのは、ドラマと違って相棒は男性だったこともあった。

探偵倶楽部


 セレブたちが出資して自分たちのために作った「探偵倶楽部」。
会員のみが利用でき、秘密厳守な機関に入る依頼は、相続問題から婚約者の素行調査、そして殺人などいろいろ。
「家に帰ると母が殺されていた」アリバイのある父の言動を不審に思った美幸はVIP専用の調査機関に調査を依頼する。
呼ばれて出かける先の富豪の屋敷では、どんな以来が待っているのか。
 
 金持ちたちが自分たちのために作った組織を利用する人たちの物語。
それぞれの事件、調査内容はミステリとして楽しめ、最後ははっきりと結果まで示すが、それを受け取った人がどう使うのかまでは書かれず、どれも曖昧に残してある短編。
しかし余韻を残すというよりは物足りない方が大きい。