サーチライトと誘蛾灯


2018年11月11日 読了
 公園の治安維持のため見回りをしていたボランティアの吉森は、そこでテントを張ろうとしている怪しい人物と出会う。
その人物は魞沢と名乗り、どうにも会話がかみ合わない。
 そして見つけた他殺体と周りの状況から、魞沢は一つの答えを導き出した。

 虫を探してあちこち旅をしている魞沢が、そこで起こる事件に巻き込まれ、とぼけたやり取りから真実を見つけ出す。
魞沢の軽さがトントンと物語を進め、重苦しい雰囲気を作らない。
どんなに苦しい状況に置かれた人達の中にいても変わらないため、読んでいても苦しい思いをせずに済む。

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死神刑事


2018年11月07日 読了
 「警視庁の方から来ました」
詐欺が良く使う口癖でやって来る『死神』。怪しすぎるのに、優秀。

無罪が確定した事件の再捜査をするためやってきたその男は、『死神』と噂されていた。そして『死神』と一緒に捜査した警察官はもう行き場がないと。

 警察が捜査して捕まえた犯人が無罪となるということは、警察の失敗ということ。それを再捜査するのは警察にとっては負けで、『死神』は疎まれていた。
しかしその男は、事件にかかわった刑事一人を相棒に選び、再捜査したあげく置き土産までおいていく。
『笑うセールスマン』的なブラックユーモアが面白い。
悪い噂の割に、誰も不幸にはなってないし、事件の真犯人も見つかる。
サクサク読める軽い文体で痛快な短編集。

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解決まではあと6人―5W1H殺人事件


2018年10月23日 読了
 平林貴子と名乗る女が、興信所をはしごしては変わった依頼をしていく。
それぞれの興信所で解った事実が何を意味するのか。
それがわかるのは平林貴子だけだと思っていた。

 すべての依頼内容がわかっているから繋がって来る出来事。
でも一つしか知らない者たちにはわけがわからない出来事。
どんどん疑問が増え、興味も増えるが、作者らしい読みやすさでサクサク進む。
でも最後は、どんな探偵でもわからないだろう。
だって伏線がなかったから。予想できるわけがない。
意外性があってずるいと言うのとは違う。
こじつけにすら思える狡さで興醒めした。

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破蕾


2018年10月05日 読了
 旗本のところへ使いに出たお咲は、そこで恐ろしい話を聞く。
「市中引廻し」の刑となった女の身代わりを受けることになったという。
あまりの羞恥に気も失わんばかりだったお咲だが、塗られた薬のせいもあり、しだいに箍が外れていく。

 図書館で借りた本には表紙がついていなかった。
不思議に思いつつも読み始め、もしかしたらあまりの刺激の強さに外されたのではないかと思っていたら、少しもおかしなところはない様子。
 女の受ける刑が、女であれば少し違和感を抱くだろうと思う。
でもその様子や気持ちの移り変わりが丁寧に書かれていたためにそれほど嫌悪感は生まれない。
その事件に絡んだ女たちがそれぞれ貫いた人生が、熱に浮かされたように描かれていた。

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後ろ傷


2018年10月03日 読了
 北海道で一番レベルの低い大学に通う省吾は、ある日学友がヤクザから追われているのを見てしまう。
慌てて警察に駆け込んだが、なんと警官は皆見て見ぬふりで、省吾たちは派出所内でヤクザに暴力を振るわれる。

 ススキノで探偵をするあの二人も登場するのだが、しつこく蘊蓄を語る疎ましい存在として書かれていた。
探偵より主人公の省吾より、一番存在感があり印象に残ったのは、大学から身を投げて死んだホームレスの老人だった。

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暗黒星雲のかなたに


2018年09月29日 読了
 地球の大学に留学していたネフェロス星の貴族の息子・バイロンは、突然父を反逆者として殺され、バイロン自身も狙われる。
惑星ローディアに逃げたバイロンは、政略結婚されようとしていたローディア総督の娘アーテミシアと共に追われる身となる。

 今でこそありふれた設定と言ってもいいが、私が生まれる前に発行された本ということを思えば少しも古臭くない分、かえって新鮮に感じる。
宇宙をまたにかけた逃亡の末、知恵によって身を守り、裏切り者を突き止める。
宇宙船の設定や政治に関しては興味をそそるものだったし、充分楽しめた。

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ロスト・シンボル 下


2018年09月17日 読了
 今夜中に謎を解かないと旧友の命がない。
ラングドンはピーターの妹キャサリンと、フリーメイソン最後の謎を解こうと知恵を絞る。

 謎や隠し文字、隠喩や暗号といった、興味をそそることがたくさん出てきて面白いが、やはり宗教的な蘊蓄にはついていけない。
ちょっとした疑問が湧いても、そのせいで知らなくてもいいやと投げやりになってしまう。
そのため大げさに走り回ったのにこんなものだったのかと思わずにはいられない。

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ロスト・シンボル (下) (角川文庫) [ ダン・ブラウン ]
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任侠浴場


2018年09月01日 読了
 東京のとある組、オヤジが妙に人たらしなため、人望も人脈も大きく広い。
そんなオヤジのところに、またある悩みが持ち込まれた。

 刑事モノで登場する甘糟もまたちょっと顔を出したり、ほわっと笑わせるところもある。
ヤクザのくせにつぶれかけた銭湯を立て直すために働くという変わった話だけど、あまり現実離れしていないせいか、さらさらと気持ちよく読める。
ちょっと都合がよすぎるくらいに進むところはいつもの通り。

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茜の茶碗: 裏用心棒譚


2018年07月26日 読了
 将軍家より下賜された茜の茶碗が盗まれた。それを取り戻すため、藩命により浪人となった小宮山は、盗賊の用心棒となった。
しかし藩からの理不尽な要求と扱いに、小宮山は次第に心を削り取られていくような気持になっていた。

 自らの身を落としてでも藩命を遂げようとする小宮山と、仲間とは言え悪事を生業とする盗人たちは、どんな縁を結んでいくのか。
エライ人たちと庶民との差、そして人となりの差をくっきりと分けていて解り易く、そしてスッキリ解決もする。
すらすら読めるし終わりも良いけど、強い印象は残らない。

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茜の茶碗 裏用心棒譚 (文芸書) [ 上田秀人 ]
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赤銅の魔女 (紐結びの魔道師1)


2018年07月17日 読了
 湖畔の館で穏やかに暮らしていた紐結びの魔道師リクエンシス。
そこへ、隣国イスリル襲来の知らせが入り、館を捨てて逃げ出すことに。
だがそこへ、悪意に満ちたイスリルの魔道師が、館の庭に眠る邪悪な魂を呼び覚ました。

 紐結びの魔導士がシリーズに。
魔道師でも魔女でも、いろんなバリエーションがあるけど、紐を結び、結び目や紐の撚り方で力を出す魔術は新鮮。
そんな魔道師リクエンシスの、封印していた自分の運命との戦いが始まる。
まだ導入部で、ようやく登場人物がそろったという感じ。
残酷な部分も多いけど、どんどん引き込まれていく。
リクエンシスが紡ぎだす魔術も、この先どんなものが出てくるのか楽しみ。

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赤銅の魔女 紐結びの魔道師1 [ 乾石智子 ]
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