誰か


2016年06月08日 読了
 今多コンツェルン会長の個人運転手が、自転車に轢き殺される。
広報室の杉村三郎は、遺族の姉妹から、「亡き父の事を書いた本を作りたい。そしてそれが犯人を捕まえる助けになれば」と相談を受け、引き受けてしまう。

 調べを進めていくうちに、本を出すことに対する熱の込めようが姉妹でかなりの違いがあること、さらにそれは家族の過去につながる大きな秘密に繋がることがわかってくる。

 杉村は、何かがわかるたび、何かに気付くたび、自分が手に入れた幸せをかみしめる。
謙虚だけど、いい人すぎる。姉妹の関係性が見えてくるほどそれは引き立ち、人の暗くて黒い部分をより暗くしていた。

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ガール


2016年05月25日 読了
 働く女性。そしてもう若くない。
そんな女たちの、日々思うこと出会うことを綴る短編集。

 時々、なんだかもやもやする気持ちになるけど、具体的に言葉にできないような事。
「あぁ、あの時こんな気持ちだったのか」と自分でも気づいていなかった違和感を見事に言語化してくれていて、その時の相手にこの本を見せてやりたい気持ちになる。

 ただ、曖昧な不機嫌や違和感だったせいか、読み終わってしまうと残らない。

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水域


2016年05月14日 読了
 いつの頃からか水に覆われた世界。
船に乗って流れていくハル。
時折出会う魚や浮島、そして様々な人たちとの交流。

 流れていく中で、水の質が変わったり住む生物が違ったりして、それだけで冒険なのだけど、それが日常となっているハル。
出会う人たちと時には飲み明かしたり騙されたり、恋する相手と出会ったりとまるで時の流れの様な物語。

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武装島田倉庫


2016年05月02日 読了
 とある「戦後」。
破壊され、腐敗した街々と、海の水も雨の水も油を含み、奇妙で恐ろしい生物がはびこる世界。
そんなある街の倉庫で働く者たちの、生きてきた時間の一コマを短編で綴る。

 島田倉庫の面々が、どんな経緯でそこにたどり着いたのか。
一人ひとりの出来事が少しづつ。そして島田倉庫での出来事も少しづつ。
「アド・バード」と同じような世界観。
だけどこちらの方が数倍面白かった。

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バチカン奇跡調査官 ソロモンの末裔


2016年04月27日 読了
 平賀とロベルトに、次の依頼がやってきた。
はるか昔、ソロモン王とシェバの女王の子が持ち帰ったという『契約の箱』。その上空に、巨大な炎の剣と天使の姿が浮かび上がったので奇跡認定をしてほしいという依頼だった。
 しかし調査に向かった二人は、これまでにない危機に陥る。

 サバイバル要素がたくさんある回だった。
殺人の容疑をかけられ、砂漠に捨てられ、地下遺跡に閉じ込められ、罠に命を落としかける。
 科学の力で解き明かすというよりトレジャーハンターの要素が多かった。その分スリルはあったが、奇跡調査というには物足りない。

恋細工


2016年04月25日 読了
 百年続く「椋屋」の娘・お凜は、幼いころから父の仕事が好きで、工房に出入りしていた。ところが、急な父の死により跡目争いが起ころうとした時、工房に流れ者の時蔵がやってきた。彼は、父が呼び寄せた天才肌の職人だった。

 愛想がなく誰のいうことにも耳を貸さず、自分のやりたいことだけをやる時蔵に、周りはのきなみ反発するが、作る細工物には目が吸い寄せられる。
そんな時蔵と時代がやがて椋屋を団結させ、変えていく。

 職人を描くのが上手い。いつの間にか引き込まれ、美しく表現される意匠を想像する時間がとても楽しくなる。

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恋細工 (新潮文庫) [ 西條奈加 ]
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2016年04月01日 読了
 身勝手な夫、その夫に殺されたも同然な両親。そして、正月を一緒に過ごした娘は数日後に自殺してしまった。
一人になった私・晶子は、娘の死の真相が知りたいと探偵を雇う。

 身元を隠し、娘と交際していたというRのバイト先へ晶子もバイトとしてもぐりこむ。
そしてRの身辺を探り、また人柄を知るにつれ、法ではさばいてくれないRの素行に憤りを募らせる。
 正攻法ではどうすることもできない悪を前に、晶子は追い詰められていく。
こうなるしかなかったという結末で、何とも言えない後味。でも不愉快ではない。

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虹 (集英社文庫(日本)) [ 周防 柳 ]
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黒猫の回帰あるいは千夜行路


2015年12月26日 読了
 パリで起こった事故に、このところ連絡のない黒猫の様子が急に気になってきた付き人。
一人もやもやしているそんな時、ペルシャ美学の教授が『空飛ぶ絨毯に乗って消えた』という連絡を受ける。

 パリで二人の距離が縮まった様な気がしていたのに、それから時間が空いてしまったゆえに余計に意識してよそよそしくなってしまう付き人。
そんな二人の毎日を、短編形式で綴る。
 過去に起こった黒猫とその姉の出来事、船旅に持ち込まれた黒い箱が印象に残る。
最後はまたほんの少し、近づいたか。

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黒猫の回帰あるいは千夜航路 [ 森晶麿 ]
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潮流―東京湾臨海署安積班


2015年12月11日 読了
 救急車で運ばれた一般人が次々と死亡し、3人目の死亡が知らされた時、連続殺人を確信する。
 そこで安積は、全く関係がない過去のある事件を思い出す。
それは、安積班が検挙した殺人事件で、犯人が服役中の今も無実を訴えている事件。

 須田が大変な目に合うが、彼はやっぱりツキを呼び込む。
内容も覚えていないような短編より、これくらいの方がいい。
今回も速水の名言がすべてを好転させる。

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潮流 東京湾臨海署安積班 [ 今野敏 ]
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ヨイ豊


2015年12月05日 読了
 師匠で、義父でもある三代豊国の法事。「歌川の三羽烏」と言われた花形の絵師たちを次々に亡くしていた浮世絵界は、次代を継ぐ者は誰かに興味が集中していた。
娘婿の清太郎は、4代目を継げと詰め寄る弟弟子の八十八や、勝手なことを言う版元たちをかわし、苦悩していた。

 技能は師匠に及ばない、そして一党を統べる力はあるか。
苦しむ清太郎に才能あふれる八十八。時代は急激に変化し、浮世絵は売れないと言われるようになった頃を生きた者たちの悩みや戸惑いが、息苦しくなるような言葉で描かれていた。

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