太陽の石


2014年11月10日 読了
 捨て子だったデイスは、優しい姉と両親に愛されて育った。
ある日山で、たくさんの星々が詰まった肩留めを拾い、そして少しづつ思い出す。

 かつて、大地の力を持つ魔道師イザーカト九きょうだいといえば、コンスル帝国の近衛魔導師として強大な力と信頼を持っていた。しかし度重なる戦争による精神の疲労で兄弟の絆は崩れ、愛ゆえの憎しみにより一人の魔導師が闇に落ちる。その闇を、再び生まれなおした兄弟たちが決着をつけに蘇る。

 3百年をかけた壮大な兄弟げんか。
しかし、禍々しい霧、足元も見えない闇、身体が引きちぎられるような絶望の描写が並んだと思えば、次は息苦しいほどの緑や小鳥の小言、空や星々の歌までを清浄な空気の中で表現する。
その描き方は、読んでいるこちらが呼吸する空気までもがその世界の色をしている気がするほど。引き込まれた。

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夜の写本師


2014年11月06日 読了
 3つの石を持って生まれてきたカリュドウは、女魔道士エイリャに預けられて育つ。
そのエイリャが力を奪われ、目の前で殺された。
仇である大魔道師アンジストへの復讐を誓うカリュドウは、魔道士とは違う力を求めて写本師となる。
アンジストに殺された三人の魔女の運命を背負い、数千年の時を経て二人は再びまみえる。

 デビュー作とは思えないほど厚みのある内容。本を使った魔法で、しかも発動させるためにはちょっとした遊び心も必要で、そのカギは隠されているなど、本好きにはたまらない設定だけど、壮大な復讐の話。
痛く苦しく、気も狂わんばかりの思いを受けついだカリュドウが、息をつく間もないほど濃い人生を見せてくれる。

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糸切り 紅雲町珈琲屋こよみ


2014年10月15日 読了
「紅雲町珈琲屋こよみ」シリーズ第四弾。
ヤナギのショッピング街で、落ちていた手紙を拾おうとしたお草さんは、危うくロールスロイスに轢かれそうになる。
そこからいくつかの災いが巻き起こり、ロールスロイスの運転手・佐々木に胡散臭いものを感じ始める。

 いつものお草さんは、周りの誰かのためにその災いを拭おうとするのだが、今回は自分のため。しかも胸の悪くなるような災いばかりでこちらも苦しくなる。
いくつもの背景を見つけ出せば少しづつ溶けてゆく災いがほとんどだが、佐々木に関してだけはぬぐえなかった。

 いつものことながら、お草さんの考えや決断は、私にも考える時間を求めているような気がする。

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ナイト&シャドウ


2014年10月08日 読了
 内閣総理大臣のSPであるエリートの首藤は、合衆国シークレットサービスで研修を受けることになった。
初日に巻き込まれたデモで、首藤はクスリを摂取し暴れて刃物を振り回した男をあっという間に制圧する。
 その現場で押収された証拠品のなかで、大統領の暗殺をほのめかす写真が見つかる。

 暗殺計画の裏で渦巻いていたそれぞれの思惑が少しづつ混ざり、それらが最後にどっと出てきて目をそらせない。
首藤の人格はちょっと極端だが、さらりと読めて充分楽しめた。

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西の善き魔女 (6) 金の糸紡げば


2014年09月23日 読了
 セラフィールドで生まれ、8歳になるフィリエル。
たった4人しかいないこの場所での暮らしは、豊かではなくとも幸せだった。
ホーリーのだんなさんがあの少年を連れてくるまでは。

 ルーンが天文台に住むようになってから、フィリエルは、今まで感じたことのない感情をたくさん知ることになる。
 たった一人住人が増えただけでフィリエルの暮らしや感情は大きく変わっていき、突拍子もない行動を起こすフィリエル。彼女らしい。

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オリンピックの身代金


2014年08月05日 読了
 アジア初のオリンピック開催に向けて、国民は浮かれ、東京はどこもかしこも工事中だった。
そんな中、一人の若者が爆発事件を起こす。
しかしその事件は、報道されることはなかった。

 秋田から出てきた大学院生の国男は、出稼ぎで肉体労働をしていた兄の死の連絡を聞いて現場に向かう。そこから国男の運命は大きく波打ち、とうていたどり着くはずのないところへと向かう。

 国男のそれまでの人格から犯人とはとても思えなかったはずなのに、そこへの気持ちの動きがすんなり納得できるほど生々しかった。
いくつか切り替わる視点の中で犯人に一番感情移入してしまい、達成感まで感じてしまう。

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上流階級 富久丸(ふくまる)百貨店外商部


2014年07月31日 読了
 百貨店の外商として働く鮫島静緒。
洋菓子を売るバイトから正社員になった静緒が、上流階級の方々相手に様々なものを売る。
仕事に向かう姿勢と意気込みは『トッカン』と通じるところがあった。

 自分を見つけて導いてくれた葉鳥に対する気持ちや、同僚で同居することになった枡家など、主人公よりもその周りの人が魅力的。
特に枡家のセリフは印象的で心に響いた。

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ことり屋おけい探鳥双紙


2014年07月27日 読了
 胸が青く光るという幻の鷺を追って旅に出たまま戻らぬ夫を待ちながら、ことり屋を守ってきたおけい。
小鳥を買いに来た客や、たびたび訪れる鳥好きのご隠居と語らううち、おけいは夫の消息を知る。

 連絡もないままただ待つのは辛い。
その寂しさを夫の店を守ることでなんとか抑えていたおけいの毎日や、日々起こる出来事がズキズキと心を傷つける。
最後はいたたまれない結果になりそれがとてもリアルでまた辛くなるが、簡単な解決じゃない分納得できた。

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シルバー・オクトパシー


2014年07月19日 読了
 表だって動けない秘密の仕事をするビジネス集団「シルバー・オクトパシー」。
そこへ、北朝鮮から脱出してきた女性を安全な国へ行かせてほしいという依頼が入る。
簡単な仕事と思われたそれには、様々な思惑を含んだ者たちが手を出してきては邪魔をし、全く関係ないはずだった仕事とも複雑に絡み合う厄介事となる。

 癖が強く、決して情では動かない者たちの集団は、荒っぽいことをしている割にはアクション要素は少なく、知的な駆け引きが多い。
8人いるという彼らの中で登場して印象を残したものは少ないため、次作があるのではと期待する。

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千両花嫁―とびきり屋見立て帖


2014年07月02日 読了
 道具屋の真之介とゆずは、駆け落ちして店を構えたばかり。
ふた親にはまだ許しをもらっていないけれど、二人はとびきり幸せで、とびきりの品を店に出す。
 とてもかなわないゆずの見立てに機嫌を損ねることもある真之介だが、ゆずの明るさと度胸に助けられながら、人や品を見立てることに精を出す。

 始まりは剣呑だったが、二人のやりとりは時に威勢がよく、胸のすく思いがする。
見立てを武器にする二人の生き様は、誰に邪魔されても負けないような気がする。

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千両花嫁 とびきり屋見立て帖 [ 山本 兼一 ]
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