ラットマン


2009年08月18日 読了
 動物の絵と並んでいたらネズミに見える絵でも、人間の顔と並んでいたらお爺さんの顔に見える。ラットマン。
 前後の並びから推測して先入観を持ってしまったり、思惑が認識を様々に変えてしまう。

 それらのラットマンによっていろんな角度で受け取られ、少しずつ誤解を生みながら進んでいく事件。

 人は勝手な推測でそれが真実だと思いこんでしまうが、それが一人じゃなく周囲の人間それぞれがそれぞれの思い込みで行動した結果、真実を混乱させる。

 登場人物の思いを巧みに絡ませているのはすごいと思うが、ラストのあたりでどうにでも転がせるほど執拗にどんでん返しを狙うのはやりすぎてしつこかった。

 緻密に練られたシナリオというより、最後でつじつまを合わせるためにどうとでも取れるようにしておいたという感じがしてしまう。

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茗荷谷の猫


2009年08月12日 読了
 一つ一つのわずかなつながりが次の時代へと続く。
静かで、夢の中で小さな呼吸を繰り返しているような感覚になる短編集。

 それぞれの主人公がささやかだけど頑なにこだわりを持った人たちで、その強い思いはしっかりと伝わってくる。

 ただ、インパクトに弱く、引き込まれるほどではなかった。

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ロンド・カプリチオーソ


2009年08月09日 読了
 「しばらくのあいだ、新宿西口には近寄らないで」。。。

 バーでピアノを弾いている主人公、タクトは、不思議な力を持つ彼女に忠告された危険をあえて呼び込んだ。

 サントリーミステリー大賞受賞作『セカンド・サイト』の主人公がまた走り回る。
 前作ではキャバクラのボーイだったから、始めは主人公が同じ人物だと気づかなかった。でも相変わらずの行動力、そして触れたものの未来の「ビジョン」を感じる彼女、花梨。
 
 今回もアブナイ人たちを相手に大立ち回り。
前回同様の行動力と、特別な存在である彼女に少し困惑している様が生々しくていい。
 そしてなにより存在感のある友人アキラの力添えも大きかった。
 個人的にはアキラが一番魅力的。躍動感のあるストーリーになっているのは彼の存在のおかげだと思う。
 
 彼女の存在がちょっと曖昧で無意味に思えてしまったことと、最後がなんだか尻切れトンボではあったけれど、それは次回を待てということか?
 
 待ってやろうじゃないの。

シューカツ!


2009年08月04日 読了
 婚活やら就活やら、なにかにつけ準備運動を求められる今、それを戦い抜く主人公たちの一部始終をのぞき見たという感触。

 割と有名な大学の3年生。仲良しの7人で作ったシューカツプロジェクトチーム。
彼らの1年を、素直な心の動きで綴ったこの本は、力強い後味を残してくれた。
 私自信は、これほどまでの戦いをしてきてはいないから、就職活動の中身についてどのくらいリアルなのか評価できないけれど、今度は試験官の人たちの話を読んでみたいなぁ。

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シャドウ


2009年07月30日 読了
 母が癌でこの世を去った。父と二人の生活が始まって数日後、幼馴染の母親が自殺する。そして幼馴染も事故に遭い、父までもが精神を病んでしまった。

 どこまでも続くかのような不幸のなかに見え隠れする狂気。登場人物それぞれの目線で語られる出来事は、リアルだが時間が錯綜してわかりにくい場面もあった。
 それでもとめどなく流れ出てくる抑えきれない感情に巻き込まれ、読む手を止められない。途中で休憩でも入れたら時間と事実の流れがわからなくなりそうだった。
 最後はいろんな事実が繋がってきて、いくつもの想像が裏切られたが、とても読み応えがあった。

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被取締役新入社員


2009年07月26日 読了
 TBS・講談社 第1回ドラマ原作大賞受賞作
月給20万円で年俸が3千万。筋金入りのダメ社員で入社1年目の超特別待遇の会社役員。
 
 設定が面白い。仕事内容は”ひとりいじめられっこ政策”の推進。
総じて会社員の軽蔑と嘲笑を得ること、小さな失敗を積み重ねること、誉められないこと、必ず週に3回は遅刻すること。。。

 オエライサンたちの描く社内変革のために雇われたダメ人間が、1年の間にする仕事を綴ったこの作品には、情けなくて悲しいのになぜか力が湧く。
 ドラマ原作大賞というからにはドラマになったはず。
見てみたい。

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クロス・ゲーム


2009年07月26日 読了
 名古屋と東京で遠距離恋愛中の航太と優衣。
通り魔に襲われ、仕事での不正が発覚し、アパートが火事になるという不幸な出来事が相次ぎ、仕事を辞めた航太は、愛する優衣のいる東京へと向かっていた。
 ネットゲームのなかで広がる人間関係。
のめりこむほどに溝ができていた二人の間にあった愛憎とは。

 オンラインゲームについて現状と違っていたりと多少違和感はあったけど、小説だからそれはそれで設定といえるのか。
 全体としては非常に面白かった。
この人の本は以前にも読んだけれど、同じように引き込まれた。
これからもきっと手に取るだろう。

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沈底魚


2009年07月25日 読了
 江戸川乱歩賞受賞作
はっきり言ってよくわからなかった。
政治経済のことにあまり興味がないためにわからなかったのかもしれないけれど、話が二転三転するたびに混乱し、結局どれが本当でどれがウソなのかをつかむのに時間がかかった。

 事件で、スパイで、大事で。。。
おもしろそうな話題なんだけど、思いのほか淡々と話しが進み、
何もつかめないまま終局に入ったという感じ。

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マリリン・モンローという女


2009年07月20日 読了
 世界中知らない人はいないであろうこの人。
だけど、どんな生き方をしたのかは知らなかったので、この本を読んでから少し調べてみた。

 親や周囲の愛に飢え、一生をそれを取り戻すために費やしたと言ってもいいほどの情熱をもって生きたた女性。
 それにしても、出てくる男性はなぜにここまでと思うほど自分勝手で、世界に失望するほどモンローをカモにする。魅力的な男性を書かせたら天下一品だった作者だけど、最低な男性を書かせても天下一品かもしれない。
 途中でやめられず、空腹も睡魔も我慢してまで読んでしまった一冊。

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異本とりかへばや物語


2009年07月19日 読了
 内大臣を父にもつ異母兄妹。兄は男としての生き方に悩み、妹は男として行きたいと願う。
そんな兄妹が選んだ道とは。。。

 誰もが知る「とりかえばや物語」。
結末が破損し、知ることの出来なくなった古典を読み解き、綴る。
いろんな解釈がなされているため、どれを読んでも想像が膨らむ物語として、私は気に入っている。

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異本とりかへばや物語 [ 新原澄江 ]
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