蝶結び かわら版売り事件帖


2017年02月03日 読了
 父とふたり暮らしのおみつは、最近父の様子がおかしいと思っていた。
おとなしくて真面目で、口数も少ないいつもの父が、ある時ふと違う顔をするのだ。

 瓦版のよみ売りをしている才助は、このところ瓦版に書かれたことと似た事が起こっていることに奇妙なものを感じていた。
その瓦版を描いている元武士の青山に相談し、探りはじめたところ、おみつの父の甚助が捕らえられる。

 幼いおみつの心を細かく描写してあり、心が痛む。
いたたまれない結末だが、決して暗くはないため、希望も見えた。
所々で端折ってある設定は、前作があったためだろうか。

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うき世櫛


2017年02月02日 読了
 15で親に死なれ、奉公先でいじめられた主人公の結は、長屋で首をくくろうとしたところを元芸者で今は髪結いをしているお夕に助けられる。
それから結は自分の不器用さを恨みつつも髪結いの修行に励んでいた。

 まだ世間知らずな結に、お夕は髪結いの技だけでなく人生を教える。
始めはすぐに謝ってばかりいた結も、次第に自分の考えを言えるようになり、生きる意味を見出していく様が微笑ましい。
お夕の強さにも惹かれる。

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我が家の問題


2017年01月31日 読了
 我が家の、ささやかな問題。
『夫は仕事ができないらしい』と気づいた妻が、会社で嘲笑される夫をなんとか元気づけようとする。
新婚なのに家に帰りたくない夫や、急にUFOが見えると言い始めた夫など。
 大事ではないけど、家族にとっては大問題な出来事を、深刻にならずになんとか解決しようとする家族の話。

 みんなすごく前向きで、そんな方法もあるのかと思わず唸る。
大げんかになったり、離婚にまで発展するんじゃないかというような事にも、ちゃんと向き合う主人公たち。
それがとても面白い解決法で、嘘くさくならずに明るく行動する人たちばかりで、根本的な解決じゃなくても、いい方向へ向かって行けるんじゃないかと思わせる。
気分が明るくなる。

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ストレンジャー・イン・パラダイス


2017年01月27日 読了
 限界集落となりつつある阿形県賀条郡晴太多(はれただ)。
観光名所も温泉もない、ただの田舎を再生するために若者たちが立ち上がる。
 かつてここで育った幼馴染たちが、故郷のために様々な知恵を出しながら住民を増やそうとする物語。

 2時間足らずで読めてしまう。
色んな問題を抱えた人たちが集まるわりに、軽めで薄い内容。
身内にばかりひたすら善人の、うすら寒い話が増えた作者。

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ジェリーフィッシュは凍らない


2017年01月26日 読了
 第26回鮎川哲也賞受賞作
航空機の歴史を変えた小型飛行船“ジェリーフィッシュ”のテスト飛行中、乗組員全員が死亡するという事故が起こった。
開発者も技術者も死亡したため、軍事秘密である“ジェリーフィッシュ”には謎が多く、事故機は軍があっという間に回収していったため証拠も少ない。
 
 王道のミステリー。
いくつもの死体があり、つじつまが合わない事象が多く、秘密も多い。
解り易いミステリーだけど、面白くて一気に読んだ。
“ジェリーフィッシュ”の神秘性がまた魅力的。
最後がちょっと納得いかない。

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町長選挙


2017年01月21日 読了
 伊良部一郎、第3弾。
特に何もしていないのになぜか問題が解決している不思議な神経科の医師。

 だけど今回はなんだか消化不良。
なんだこれからもこのままなのか、というような終わりがいくつかあり、まるで途中で飽きてしまったかのような終わり方。
タイトルの「町長選挙」も、不愉快な場面ばかりで結局そのまま。
伊良部の天啓の様なセリフはいくつか出てくるし、今回はマユミも核心をつくが、それよりも曖昧さが大きかったためか満足感は少なかった。

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スローバラード Slow ballad


2017年01月21日 読了
 北千住で喫茶店〈弓島珈琲〉を営むダイは現在53歳。
仲間と共に静かな日々を送っていたが、ある日、友人の息子・智一が家出したと連絡が入る。
仲間たちと探し始めるが、智一と同じ学校で不登校がちの村藤瑠璃が、家族に怪我をさせて行方不明になっているという情報が入る。

 仲間に対してはどこまでも信頼し、何をおいても助け、集まればいつでも昔の様な関係に戻れるダイたち。
それはとても仲間思いで強い絆を表しているけど、どうしても嫌悪感が湧いてきた。
仲間以外はどうでもいいというような、仲間を傷つけた者には障害が残る傷をおわせても良いという考え。
穏やかに語られるため凄惨な雰囲気はないが、よく考えたら犯罪であるようなひどいこともしている。
 とても狭い世界でのみ心地よい仲間意識。

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上流階級 富久丸百貨店外商部II


2017年01月18日 読了
 上流階級第二弾!
富久丸百貨店の外商員として仕事が面白くなってきた主人公の鮫島静緒。
ゲイの桝家とのシェアは続いているが、そろそろ期限の1年が迫ってきていた。
 そんな時、桝家の実の母だという女性が訪ねてくる。

 今度もてんやわんや。
桝家の家の揉め事に巻き込まれそうになり、また仕事で提案した企画が通ってしまったりと、今度も息をつくのも忘れて読み切った。

 よくあるお仕事モノとはちょっと違う雰囲気を纏っているので、「またか」というガッカリ感がない。
途中、考えさせられるところが多いので何度も読み返した。

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上流階級 富久丸百貨店外商部2 [ 高殿円 ]
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空中ブランコ


2017年01月16日 読了
 変人伊良部医師再び。
ベテランの空中ブランコ乗りが、突然飛べなくなった。
「きっと新しくやってきた奴が嫌がらせしてタイミングをずらしているんだ。」
そんなことを訴えたら病院へ行けと言われてしまう。

 今度もぶっ飛んだ伊良部に苦笑いが漏れる。
個人的には夜な夜な「点」をうちに街をうろつく話が楽しかった。
完全に犯罪だけど、どこか子供の悪戯感があるのは伊良部だから。
前作より注射への変質的な執着の描写は少なかったからか、伊良部がもっと子供に見えた。

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五弁の秋花: みとや・お瑛仕入帖


2017年01月12日 読了
 なんでもかんでも三十八文の「みとや」を営む兄・長太郎と妹・お瑛。
ある日、店じまいする絵双紙屋から引き取ってきた本に挟んであった錦絵に、お瑛は既視感を覚えた。
忘れていた幼い頃の記憶がよみがえるような感覚に、お瑛は心細くなる。

 極楽とんぼの兄だが、仕入れてくる物は良い物で、周りで起こる困ったことにもするりと入り込んでいつしか解決している。
そんな兄に振り回されているようで励まされているお瑛も、ちゃんと自分の足で立とうとする力強さが頼もしい。
錦絵の疑問もちゃんと解けるが、そんな絵がお瑛のところにやって来たのはただの偶然なのか縁なのか、できすぎのような気もして気になる。

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五弁の秋花 みとや・お瑛仕入帖 [ 梶 よう子 ]
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