サイチカさんのベレー帽&ハンドウォーマー


使用糸:元廣 毛混並太 (501)、パピークイーンアニー(986)、パピープリンセスアニー(532)、パピーシェットランド(43)
編み図:NHKすてきにハンドメイド 2020年 11 月号 サイチカ ベレー帽&ハンドウォーマー
使用針:4号棒針、5号棒針 80g~100g

黒猫と語らう四人のイリュージョニスト


 一月前に大学に長期の休暇願を出してから、黒猫は一切の連絡を絶った。
学部長の唐草教授から、探してほしいと頼まれた付き人は、失踪前に研究室を訪ねてきた4人に、話を聞くことにした。
黒猫はなぜ姿を消し、ずっと連絡が取れないのか。
なぜその4人と会っていたのか。
付き人もこの先を考えなければいけない時が来ていた。

 久しぶりの黒猫シリーズでわくわくしていたが、なにやら不穏な気配。
黒猫は相変わらず美学を語るが、なぜか探偵のように4人の人物の影を明らかにしてしまう。
こんな風に追い詰める人ではなかった気がしていた。
いつもと違う雰囲気だったのに、結末は全く予感も予想もしなかったから衝撃が大きかった。
これで終わり?ちょっと辛すぎる。

誘拐屋のエチケット


 炎上やスキャンダル、またはほとぼりを覚ますためにや危険から身を守るため、誘拐屋と呼ばれる闇の職業の者が対象を誘拐し、運びます。
一人で仕事をこなしていた腕利きの誘拐屋・田村は、新人を育てるよう組織から指示される。
やってきた新人はおしゃべりで人懐っこく、涙もろくてすぐに同情しておせっかいを焼く困った奴だった。
契約外の仕事までやってしまう新人に、田村はいやいやながらもつい付き合ってしまう。
ところが二人は過去に意外なつながりがあった。

 誘拐という物騒な仕事だが、クールなはずの田村もいつのまにか新人に巻き込まれ、対象の事情を知ってしまう。
それぞれは関係のない人たちだったはずだが、最後の依頼で田村とつながってきて驚いた。
それでも軽い文章で暗さを出さず、ハードボイルドなはずの仕事も気軽に依頼できるような気がしてしまう。
雰囲気が似ていると思ったら「ルパンの娘」シリーズの人だった。

週末探偵


 大学時代からの友人である湯野原海と瀧川一紀は、平日は社会人として働き、週末だけの限定で探偵をすることにした。
料金は無料。だけど週末だけとなるので急ぐ依頼はうけない。そしてなにより、二人が楽しめるような、日常のちょっとした謎を求む。
空き地に見つけた不思議な車掌車を事務所として、二人はのんびり依頼を待つ。

 ぽつんと置かれた車掌車を見つけ、それがなぜそんなところにあるのかという謎から始まった探偵。
だけど、犯罪にかかわらない、日常の謎を解くというコンセプトのはずが、刑事事件となるものが多すぎる。
殺しや誘拐にまで発展してしまい、のんびりでも楽しい謎でもない。
しかも謎を解くというわりには、思いついた推理が都合よく正解で、こじつけ感がすごい。
納得できる謎解きではなかった。

北緯43度のコールドケース


 博士号を持ち、30歳で北海道警察の警察官となった沢村。
未解決となっていた5年前の少女誘拐事件の被害者・島崎陽菜の遺体が発見される。
犯人と思われていた男は既に死亡していたのだが、共犯者がいたのかと再び捜査本部が設置される。
しかし今回も解決には至らなかった。
しばらくして、5年前の捜査資料が漏洩し、沢村が疑われる。

第67回江戸川乱歩賞受賞作
 研究者の身分を捨て警察官となった沢村が、ここでも自分の居場所を見つけられずもがく。
5年前の事件では捜査から外された沢村が、今度は秘密漏洩の建議までかけられてどうするか。
沢村の迷いがずっと付きまとい、事件の薄暗いイメージと並行して事件解決の困難さを強調している。
ちょっと読みずらいと感じるところもあったが、一つ一つ解明していく事実が心地よくて一気に読めた。

うさぎ玉ほろほろ


 武士から菓子職人へと転身した「南星屋」の主・治兵衛。
娘と孫、そして最近店に入った職人の雲平で切り盛りする小さな店だが、店主の治兵衛が全国を歩いて集めた珍しい菓子を出すため人気の店だった。
店に顔を出すようになった中間の鹿蔵が、ある日文を託したまま姿を消してしまい、皆で心配する。
鹿蔵が大きな事件に関係しているのではないかと気を揉むが、孫のお君がうっかり買った恨みによることだとわかり怖い思いをしたり、小さな子供が思い詰めて店に直談判にやってきたり、店はいつも人であふれている。

 可愛い客にほっこりしたり、おいしそうな菓子を想像したり、知らない地域の菓子を調べたりと、とても楽しい時間だった。
剣呑な事件に巻き込まれそうになってヒヤリとしたが、「南星屋」のみんなが軽口をたたきながらも次の菓子の話をする場面が好きで、どんなふうになるかと想像してうれしくなる。
甘いもので幸せになる気持ちがあふれていた。

インビジブル


 昭和29年、政治家の秘書が、麻袋を頭にかぶせられた刺殺体として発見される。
初めての札事件捜査で意気込む大阪市警視庁の新城は、国警から派遣された警察官僚の守屋と組み捜査に当たる。
守屋はエリートなのに捜査の仕方も知らず、イライラする新城。
すると同じような刺殺体が発見され、事件は連続殺人となる。
戦争を挟んだ日本の混沌とした時代を描く。

 儲かると聞いて開拓団として満州へ渡った者たちが、その後戦争によってどんな人生を送ったのか。
暗くて苦しい時代を生きた者たちの事件だったが、時代と政治、大阪弁がなじまず、最後まで息苦しい感じが抜けなかった。
この手の作りは私には合わないようだ。

数学の女王


 博士号を取得後に警察官となった沢村依理子は、突然本部の警務部に異動となる。
そんな中、新札幌に新設されたばかりの北日本科学大学で爆破事件が発生。
そしてまた急に捜査一課へ行けと命じられ、沢村は困惑していた。
爆破事件の犯人は一向に絞られず、捜査の方向も曖昧になっていくなか、沢村は一人の男のことが気になっていた。

 爆破で狙われたのは学長で、沢村は真という名前と学長という立場から勝手に男だと思い込んでいた。
自分が女であることを理由にした人事異動に憤りを覚えていたくせに、自分もジェンダーバイアスがかかったものの見方をしていたことに気づいて愕然とする沢村の様子が生々しい。
能力はあるのに女であるために報われないと信じ込んだ者、それでも運をつかんで転機を迎える者など、なにがきっかけになるか紙一重で怖くなる。

とりどりみどり


 万両店の廻船問屋『飛鷹屋』の末弟・鷺之介。
『飛鷹屋』の子供は5人いて、全員母が違うけど仲はいい。
毎日3人の姉に付き合わされてうんざりしていた鷺之介は、ある日芝居小屋で出会った同じ年くらいの少年と友達になる。
往来で騙りに出くわしたり、姉が突然戯作者に弟子入りしたいと言い出したり、境内で買った手ぬぐいが物騒な証拠品だったりと、全く飽きない毎日だ。
そして母の月命日に墓参りに行った鷺之介が知る、出生の秘密。

 遠慮も気遣いも全くない姉たちに一向に太刀打ちできない鷺之介が気の毒になるが、次第に姉たちの頭の良さと行動力に関心させられる。
口も悪いのであちこちで厄介を起こすが、それでもちゃんと弟を大事にしているし、女だからと我慢もしない。
見方につければ頼もしい限りだ。
こんな風に強く生きられればいいなぁと羨ましくなる。

探花―隠蔽捜査9―


 横須賀基地の近くで他殺体が発見された。
刃物を持った白人の人物が目撃されたため、アメリカ人が関係している可能性を考え、米軍犯罪捜査局へ協力を要請した竜崎。
周りからは様々な反発があったが、しがらみや体面よりも事件解決を優先する竜崎のやり方が、次第に受け入れられていく。
さらに、息子が留学先で行方不明になったと知らされ、心配事を抱えての捜査となった。

 何を言われようと淡々と正しいと思ったことをやる竜崎。
近頃は度のシリーズでも同じテイストになってきて、区別がつかない上に同じパターンばかり。
事件そのものよりも、主人公の人間性をメインにしているためだが、それにしても似すぎている。